GAMBA ガンバと仲間たち

 
映画『GAMBA ガンバと仲間たち』を観て来ました。
原作は斎藤淳夫冒険者たち ガンバと15匹の仲間(1972 牧書店)
児童文学に関心のある人には、避けて通れない作品です。
また本作は、1975年に放送されたテレビアニメ『ガンバの冒険』の、40年ぶりのリメイク作品、という顔も持っています。
これも、熱心なファンから伝説的な傑作として語り継がれてきたもの。今回の新作は、そのどちらのファンが見ても楽しめる作品に仕上がっているのではないでしょうか。

子ども向きのアニメ映画に思えますが、大人の心にも迫るクオリティです。ポスターにはこんなデザインも使われました。原作へのオマージュになっていますね。



 
オフィシャルサイトより
今から約40年前の1972年に刊行された一冊の児童文学「冒険者たち ガンバと15ひきの仲間」。小さなネズミを主人公にしたその壮大な冒険物語は、子どもたちのみならず、大人をも魅了し、ミュージカルやTVアニメなどさまざまなメディアに翻案され、原作とともに幅広い年代に愛されてきました。そんな多くの人が親しんだストーリーが、構想から15年、10年の製作期間を経て3DCGアニメーション『GAMBA ガンバと仲間たち』として新たに誕生します。1975年放送のテレビアニメ版「ガンバの冒険」も人気を博した斎藤惇夫の名作児童小説「冒険者たち ガンバと15ひきの仲間」を、「STAND BY ME ドラえもん」の映像制作会社・白組が3DCGで新たにアニメ映画化。
都会の片隅で楽しい毎日を送っていた街ネズミのガンバとマンプクは、世界一広いのは海であることを知り、まだ見ぬ海を目指して旅に出る。
港にたどり着いた2匹が船乗りネズミの宴に参加していると、そこへ瀕死の島ネズミ・忠太が助けを求めにやって来る。敵が白イタチのノロイだと聞いた船乗りネズミたちは怖がって逃げ出してしまうが、ガンバは忠太を見捨てることができず立ち向かうことを決意。そんなガンバの姿に心を動かされた船乗りネズミ、ボーボ、ヨイショ、ガクシャ、イカサマ、マンプクも加わり、一行は船に乗って忠太の故郷を目指す。

CGアニメーションは苦手のネコパパ、実は…
見る前は、相当不安でした。
案の定、幕開けはピクサー系の派手な街描写や、ガンバのキャラデザインには抵抗感を感じました。また、原作冒頭では安穏とした暮らしを楽しんでいたはずのガンバが、本作ではいきなりハイテンションで登場するのも、ちょっとどうかな、と思いました。
けれど、船乗りねずみの宴会に乱入し、ガクシャイカサマと出会い、親分格のヨイショとの対決、船に乗り込んだガンバが海に目を見張る
「これも海か!」
の場面に入るころには、すっかり作品世界に浸りこんでいました。

仲間の数こそテレビアニメと同じく7匹ですが、
物語展開は原作にほぼ忠実。出航後の難破や漂流シーンも無く、上陸、馬車での移動、オオミズナギドリのツブリたちとの出会い…と地道にエピソードを重ねていきます。
そして、ヒロイン、潮路との出会いを経て、ガンバ一行は島ねずみの群れと合流し、ついに宿敵のイタチ、ノロイ一族との対決へ…

本作の最大のポイントはノロイ
デザインといい、野村萬斎の声の演技といい、他のキャラクターとは隔絶した存在感。最初のうちは「こんなものか」と思いますが、あとに行くほど凄みと妖艶さを増してくる。
原作者の斎藤淳夫は、映画製作にあたりノロイの造形だけはしっかりとやるようスタッフに要請したとのことですが、作者の意見はどうでしょうか。
また、絵柄はともかく、本作がピクサー系の作品と表現を分けるのは、
切り詰められた台詞に含まれる含蓄と、繰り返される死の描写を避けずに描いているところです。
たとえば、中盤の、ボーボのエピソードでのガクシャの言葉
「ああ、大丈夫だ」
…これには、唸りました。

ネタバレは避けますが、
原作者が旧約聖書にヒントを得たというクライマックスは、原作どおり、リアルに表現されています。けれども最後の部分だけは、原作とも、そしてテレビアニメとも異なるアレンジが、いくつかなされています。
ここに、原作の書かれた43年前とは異なる現代のクリエーターのセンスが生かされているといってもいいでしょう。
もしかしたら、反発する人もあるかもしれません。
ネコパパは、十分に納得できましたが。
 
原作の扱いですが、パンフレット等の紹介、予告映像、宣伝媒体すべてに
児童文学
というジャンル名が使われています。「童話」でも「物語」でも「小説」でも「ファンタジー」でもないところに、スタッフの見識が感じられます。
嬉しいですね。



 
そして、ここからはネコパパの独り言なのですが…

この映画、原作の持つ「ハイ・ファンタジー」ならではの世界観は十分に解釈されているのか…といわれれば、正直、物足りなさもあります。
斎藤淳夫が目指したのは、弱肉強食の凄惨なドラマでもなく、冒険賛歌でもなく、「もうひとつの世界」に展開する物語の楽しさでした。
ガンバの仲間たちはノロイ一族に対して「知恵」と「俊敏さ」だけで戦うのではありません。「踊り」や「詩」や「歌」の力でも戦い、そこではノロイたちさえも圧倒していきます。
「文学」「音楽」「舞台芸術」が「暴力」を圧倒する物語。
そこにあるのは鶴見俊輔のいう「神話的時間」の流れる世界、といってもいいかもしれません。
作者が描いたのは、物理的な暴力と芸術が拮抗し、ときに後者が前者を打ち破る世界でした。
その世界では、登場人物はネズミやイタチの「擬人化」では決してなく、
「ありえない、でもあるのかもしれない世界」の住人として存在しています。
だからこの映画で、ガンバたちが擬人の証である靴下の切れ端とかナットの腕輪をまとって登場することに、ネコパパは、いささか違和感も覚えたのです。

本作で一番期待したのはノロイの造形、
そして二番目は…イタチとの「踊り」や「詩」や「歌」の合戦の再現でした。
一番目はともかく、二番目がかなえられなかったのが、個人的には残念、です。


総監督小川洋一
監督 河村友宏 小森啓裕
原作 斎藤惇夫 薮内正幸
2015  日本
配給   東映  上映時間    92
 
キャスト
梶裕貴…ガンバ
神田沙也加…潮路
高木渉…マンプク
大塚明夫…ヨイショ
池田秀一…ガクシャ
高戸靖広…ボーボ
藤原啓治…イカサマ
矢島晶子…忠太
野沢雅子…ツブリ
野村萬斎…ノロイ
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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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