東京アマデウス管弦楽団のブルックナー第5

えー、名古屋だけでなく、東京にも『アマデウス管弦楽団」があったんだ。
こちらは、東京大学音楽部管弦楽団のOBが中心になって結成されたオーケストラとのこと。
とはいえ…プログラムにはモーツァルトの曲は一曲もない。
古典派に特化し、モーツァルトの曲は必ず演奏する『名古屋アマデウス室内管弦楽団』とは、ちょっと趣旨が違うようだ。

「ネコパパ、なんでまた東京?」
という声が聞こえてきそうですが…
9月26日(土)に東京国際子ども図書館で行われた児童文学講演会(内容は別途紹介予定)に参加した折、せっかく東京へ行くのならコンサートも…とネット検索して見つけたのがこれだったわけです。

場所はすみだトリフォニーホール。
いいな。いちど、ここで聴いてみたかったんだ。




プログラム
ワーグナー 「ローエングリン」前奏曲
ブラームス ハイドンの主題による変奏曲
ブルックナー 交響曲第5番(ハース版)

東京アマデウス管弦楽団
指揮 石川星太郎

オーケストラの平均年齢は30代後半というあたり。
アマチュアとはいえ、パンフレットによると年に三回も演奏会を行う意欲的な団体。服装は黒一色、男性はノーネクタイの黒シャツ姿で決めていて、かっこいい。

ワーグナー「ローエングリン」がゆっくりとしたテンポで始まる。
この曲の特徴である漣のような弦の細かな動きも、くっきりと奏でている。ヴァイオリン群は腕達者だ。チェロとコントラバスも腰の強い、良い音を出す。
管楽もバランスがいい。弦楽器主体の、アマチュアを意識させないアンサンブルで、これは…と思わせる。

若い指揮者の石川星太郎は、ハンス・マルティン・シュナイト、ゲルハルト・ボッセに師事し、ドイツのデュッセルドルフ在住というドイツ仕込み。独奥で固めた今回のプログラムは、彼の自信の表れだろう。
両手を大きく広げて振る、量感重視の音楽作りだ。

ブラームス「ハイドン変奏曲」は、何度も言っているけれど、ネコパパ苦手の曲。
今回も予想通り、終わりまで持ちこたえられなくて、だいぶ、うとうとしてしまった。
演奏も肩の力を抜いた、淡々としたもの。
この、苦虫叔父さんブラームスの典型のような渋曲を、名曲として聞かせるにはよほどの「練達の技」が必要と思った。
ブルックナーの大曲の前に演奏するには、ちょっと手ごわすぎる選曲かもしれない。

会場のすみだトリフォニー・ホールは、建物全体がアート、というコンセプトで建設されている。
ロビーからカフェテラス「北斎カフェ」、ホールの照明にいたるまで、洗練された意匠が盛り込まれている。
ホールは、観客の視線が中央一点に集中する設計になっている。抽象絵画の中にいるような不可思議な気分にさせられた。



ネコパパの席は、大体こんな眺め。
響きはとても豊かで、残響は2秒を超えるだろう。客席中央付近ではよくブレンドされた心地よいサウンドが楽しめる。個々の楽器の粒立ちを聴くなら、バルコニー席がいいかもしれない。でもこのバルコニー、ご覧のように眩暈が起こりそうな斜面だ。観客が足を踏み外したりしないかちょっと心配になる。

さて…いよいよメインプログラム。ブルックナー交響曲第5番。
75分に及ぶ演奏になった。
第1楽章、速すぎず、遅すぎずのテンポで始まり、起伏をあまり強調せずに進む。でも、曲想が盛り上がり、躍動を始めると、自然とテンポも速くなる。若々しい、気持ちの良い音楽だ。
第2楽章のアダージョは見通しの良い音作りを意図して、弦を抑え目に、リズムをしっかりと立て、情に流されまいと気を遣っている様子。でも、ちょっとポキポキした感じの音楽になってしまった。
第3楽章。何気なく始まったスケルツォのテーマが、後半になるとアッチェレランドで火がついたように疾走し、トリオでは明るい音色がほとばしる。
指揮者の棒が、水を得た魚のように冴える。
ドイツ仕込みといっても、30才の若さなのだ。アダージョよりもスケルツォがフィットするのも、当然かもしれない。
そして長大なフィナーレ。第3楽章に続いて、やや速めのテンポをとり、盛り上がる部分はさらに速めて力感を漸増させるスタイルで通す。
トロンボーン、チューバは好調だが、ホルンはやや不安定。でも、しばしばソロを取るクラリネットは絶妙の響きだ。
コーダの盛り上がりは、ブルックナーの交響曲としては異例なほどの音響大伽藍となるが、オーケストラは余裕を持って鳴らしていく。最後の決めは音を溜めず、あっさりだ。
でも、よかった。ブルックナーを聴く手ごたえが十分に伝わってくる演奏だった。

2時間30分を超える演奏会。会場は満席。
客層は幅広いが、着飾った高齢者がかなり多い。しみちょろにリュックサックのネコパパは、ちょっと場違いか。
東京の音楽ファンなら、こんな一大プログラムも聞き慣れているんだろう…と思ったが、
ブルックナーでは終盤になって退席する方もあり、客席にいても「いささか我慢の限界」という空気がちょっと伝わってきた。
やはりここは、曲数を減らしてブルックナーで勝負、というのががよかったのでは…
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コメント

コメント(4)
No title
こういう団体があるのは初めて知りました。
どうしてもプロ・オーケストラ公演に目が行って、アマチュア団体はチラシが配布されることも少なく、気づくことが少ないからでしょう。

確かに盛り沢山なプログラムで、よほどの演奏でないと最後まで聞き通すのは辛いでしょうね。

すみだトリフォニー・ホールは、我が家からの地理的関係もあって、まだ行ったことがありません。
バルコニー席の傾斜は、写真で拝見してもかなり急ですね。
新国立劇場の天井桟敷席も急傾斜で、足を踏み外したらストール席まで落ちるのではないかと、高所恐怖症の私はいつもビクビクしていますから、こういう席は私には無理です(笑)

gustav_xxx_2003

2015/09/30 URL 編集返信

No title
東京へ行く機会があると、一応コンサート予定を見るのですが、プロオケを聞きたいのは山々でも日にちがあいません。いつぞやは東京都交響楽団が聞けそうだ、とねらったのですが、レコーディングも予定されたインバル指揮のマーラーで、チケット完売。名古屋ではよほどのことがない限り、当日券の出ないコンサートはなく、開演ぎりぎりでもまず聞けるのですが、東京は流石にそうは行きません。
このオケも、82回目の演奏会と言うのですから大したものです。どっと渡されたチラシを見ても、アマオケに高名ソリストがどんどん招かれたりしていて、壮観でした。それでもチケットは1000円とか、どうなっているのでしょう。
中には「このチラシ持参の方は4名まで無料入場できます」とか、とんでもないものもありました。これでどうやって会場費を…

yositaka

2015/09/30 URL 編集返信

No title
東京大のOBオケですか。東京大の現役オケは以前からうまいと定評がありました。

SL-Mania

2015/09/30 URL 編集返信

No title
SL-Maniaさん、私も東大のオーケストラは二回聞いて、なかなかの演奏だと思った記憶があります。ただ、そのあいだは相当に時間が隔たっていて、はじめの時は随分とパワフルな男性的演奏、二度目の時は細身のすっきりとした室内楽的な演奏でした。

yositaka

2015/09/30 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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