ついに出現、中古レコード店漫画

ショパンの事件譜①




原作:北原雅紀、作画:あおきてつお
ビッグコミック2014617日増刊号~ 連載中
小学館 2015.9 


ダウンロードでいとも簡単に音楽が聴ける時代。奏初範(かなではつのり)が経営する奏音楽堂はアナログレコードの魅力に取り憑かれた者たちにとって夢のような場所である。
今日も温もりのある音楽を求めて、奏の店を客が訪れる。
寺町・谷中を舞台に音楽と人の織りなす謎を解き明かす新感覚音楽ミステリー。

 
古書店をテーマとしたライトノベルや漫画作品がちょっとしたブームになっている。
それなら、中古レコード店の話があってもいいじゃないか…でもマイナーな趣味だからムリかなあ、と常々思っていたのですが、
出ました。
やっぱりこういうのを思いつく作者、編集者がいるんだ。

「ビブリア古書堂」等と違って、レコードをめぐってのミステリーではなく、レコードがらみの犯罪事件を扱っているので、いささか血なまぐさいのが惜しいところですが
レコードの細かい薀蓄がたくさん出てきて、アナログレコード・ファンとしては、やっぱり見逃すわけにはいかんでしょう。

1話では3ページ目からいきなりまさかの「シュ-リヒトのハフナー」「Decca稀少テストプレス」と、
あっと驚くマニアックな固有名詞が飛び出してきます。
データ的には「あれれ、そりゃ変だぞ?」というものもあるのですが、そこはフィクションということで…
原作者は特別なアナログレコード・ファンはなさそうで、取材の成果と思うのですが、流石にプロの仕事ですね。

内容をざっと紹介しましょう。
 
主人公は中古レコード店の偏屈な店主で、
初範という名前から「ショパン」と呼ばれています。
レギュラーメンバーを作曲家名で呼ぶのが、ひとつのポイントらしい。
ある事件をきっかけに押しかけ店員になる弁護士の卵、小川恵で「バッハ」。
初老の温厚な名曲喫茶マスター、土橋は「ドビュッシー」。

ショパン氏は、かつては将来を嘱望されていた指揮者で、
何らかの過去の事情のため妻子と別れ、音楽活動を封印したらしい。
そんな彼が「音楽の缶詰」であるアナログレコードの仕事をしているのも、なんだか象徴的ですね。

レコードの薀蓄の豊富さを除けば、正直に言うと、ストーリーは今のところちょっと物足りない。一話完結で、少ない頁数で話を広げすぎているせいでしょうか。
でも、事件の度に右往左往するバッハちゃんが可愛いらしいのを愉しめば、まあいいのかな。
掲載誌ではカラー頁をもらったりして好評らしいので、今後深みを増してくることを期待したいですね。
ただし掲載誌は季刊なので、第2巻までは結構待たなきゃいけません。




そんなわけで、物語の紹介ではなく、取り上げられているレコードを紹介しておきましょう。

モーツァルト 交響曲第35番「ハフナー」
カール・シューリヒト指揮 
ウィーン・フィル




エルヴィス・ブレスリー
ザッツ・オールライト(デビュー・シングル)




ボブ・ディラン
初期コロムビア6eyes盤




滝廉太郎
最後のピアノ曲 憾





田端典子
夕やけ小やけ
ビクターSP ピクチャーレコード



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コメント

コメント(4)
No title
色んなところにまで目配りをされているのには感心してしまいます(笑)
マニアックな世界を描くと、真正マニアからは突っ込みどころ満載になりますから、本当のマニアでないと描く方も大変だろうと思います。

gustav_xxx_2003

2015/09/10 URL 編集返信

No title
本屋さんに入ると、私は児童書→ハードカバー新刊→音楽雑誌→人文→コミックと回るのが基本ルートです。
新書はちらり。文庫はほとんど見なくなりました。コミックは新刊棚をざっと見渡します。
コミックはシュリンクされていて中身が見えないので、気になる作家のものや、継続購読中のもの以外の知らない作品を買うことは、めったにないのですが、この作品は表紙と帯でピンときました。この作者たちの作品は、小児科の女性医師を主人公とした「真夜中のこじか」がなかなか良かった、ということもあります。
マニアックな部分は、細部をみると多少怪しいところもありますが、なかなか健闘していると思います。最後に紹介している「夕焼け小焼け」には、5万円の値付けをしているのですが、これはちと高すぎるかも…

yositaka

2015/09/10 URL 編集返信

No title
この第1巻の第6楽章はまだ今年の6月増刊号に掲載されたばかりのストーリーですね。舞台が谷中というのもローカル色があっていいですね。この作品好評のようで、第7楽章はブルースを扱ったストーリーで巻頭カラーを飾っていました。このコミックもシリーズで単行本化されるのが楽しみな作品です。

geezenstac

2015/09/11 URL 編集返信

No title
geezenstacさん、連載1年で巻頭カラーをもらえるのは、人気が継続しているわけですね。漫画というのは、人気が出て連載が続くほど内容がレベルアップするものです。期待したいですね。
アナログレコードは古書よりもマニアックに見えて、意外に一般性のあるメディアの気もします。
もっとも28歳の登場人物が「レコードを初めて見ました」と言っているシーンを見ると、さすがに時間の流れを感じさせますが。

yositaka

2015/09/12 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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