抜けのよい、高く伸びる音

あなたや私がそうだったように
世界中が詩を紡いだ頃、
たしか「春」ってあったよね。
 
小さなテーブルで差し向かい
二人で春の甘いお酒を飲めば、
男も女も若者は皆高らかに歌ったよね。
 
4月、5月、6月・・・時が経つにつれ、
寂しい調子に変わる。
人生が、幸せの風船に針をつき刺した…
 
ロレンツ・ハート作詞「Spring is here」より…
 
524日、ネコパパは名古屋のチャランさん宅を訪問。先日67日はsige君も同行して再度訪問。
ご自慢のゴトウホーン&アルテックの装置を駆使、名盤の数々を堪能させていただいた。
 
この春、チャランさんのリスニングルームはイメージを一新。
それまで金属製のメタリックなラックに収納されていたスピーカー、マルチシステムを構成する真空管アンプ群が、岡崎の名職工のkonken君の手になる木製ラックにすっきりと収められたのである。ごつい金属性ラックから開放されたスピーカーは、以前よりも抜けのよい、高く伸びる音に変化している。まさに「春がここに」来たような音響空間である。
sige君も鳥肌を立てて感激する音に仕上がっていた。
 
その音で聞く。
クリス・コナーの米BETHLEHEM盤、「バードランドの子守唄
チャランさんがつい最近入手されたという、10吋盤で聞かせてもらった。



 
All the lads and girls would sing
when we set a little tables
and drank May wine.
 
Spring is here」のヴァースが始まってすぐのところ、小さなテーブルで差し向かい
二人で春の甘いお酒を飲めば、男も女も若者は皆高らかに歌ったよ…のくだりの「活舌」のところで、ネコパパ、背筋に震えが走ってしまった。
クリスの声がそこで立ち上がって、耳元でささやくような思いにとらわれたのである。
「これは一体何事?
帰宅したあと、手持ち音源(12LPから復刻したデータ音源)で同じ曲を聴いてみたが、音の傾向はまったく違う。どうもこれ、12吋盤にする際にマスタリングにより残響が付加されたようだ。
10吋盤は、そんな余計な手を加えていないだけ、声も楽器も音が締まり、リアルだったのだ。
バート・ゴールドブラッドの素敵なジャケット写真を見ながら、こんな音を聴いていると、初期盤収集に走る人の気持ちも…よくわかる。

 
ヴォルフガング・シュナイダーハンのヴァイオリンによるベートーヴェン「ヴァイオリン協奏曲ニ長調」(独DGG)。



ウィーン・フィルのコンサートマスターだったシュナイダーハンは、技巧をひけらかすところは微塵もない。
テンポは遅く、なよやかな細身の音で、ゆったりと弾いていく。
叙情的な部分はここぞとばかりにテンポを落とし、切々と歌いこむ。

 
日にお邪魔したときは、同じ曲の、蘭Philipsのヘルマン・クレバースの盤を、ネコパパが持参。



シュナイダーハンの音を聴いて、
この人のヴァイオリンも、きっとチャランさんのシステムと相性がいいのでは…と予想したからだが、はたして、そのとおりだった。
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団のコンサートマスターであるクレバース、彼はシュナイダーハンと比べると、背筋をピンと伸ばしたような精悍さがあり、インテンポできっぱりと進めていくのだが、一筋の白い光のような透明感や、スリムな鳴りは、どこかシュナイダーハンと共通する。
居場所を得たな…と言うわけで、この一枚はチャランさんに進呈っ。

 
前にこの部屋で耳にして感嘆していたアル・ヘイグ・トリオの、米PERIOD原盤の国内盤(DIW)も持参。



これはチャランさん所蔵の米ESOTERIC10吋盤「JAZZ WILL -O-THE-WISP」と同日のもの。
人の良いヘイグは、狡猾なディレクターの口車に乗って、1枚分のギャラで2枚分録音させられたのだ。そのおかげで、名盤が2枚残されたのだが…
1954年録音と古いこともあってヘイグの早いパッセージを駆使するピアノのタッチが捉えきれず、音が飽和気味になる。
しかし高音の伸びがいいチャランさんのシステムでは、これが気にならず、青い火花を撒き散らすような音楽の凄さが耳を直撃してくる。

 
チャランさんのお宝音源のひとつ「スタン・ゲッツ・アット・ストーリーヴィルⅠ、Ⅱ
Roost10吋盤も、よかった。




これは1951年、ボストンのジャズ・クラブでのライヴで、
会場全体をひとつのカーボン・マイクで拾ったような、隔靴掻痒の音。
この演奏のすごさが、手に取るようにわかった。
一見気楽に流すようで、実は楽想の泉のようなゲッツのアドリブが、曲が進むにつれて凄みを帯びてくるのが聞こえる。
サイドメンがまたいいのだ。
アル・ヘイグ(P)ジミー・レイニー(g) はもちろん、
時に猛然とした演奏を聞かせるテディ・コティック(b,タイニー・カーン(dsのリズム陣の灼熱ぶりも、改めて気づかされた。

 
そして…真っ赤なジャケットが印象的な「ラス・フリーマン、チェット・ベイカー・カルテット」米Pacific12吋盤。




冒頭の一音から、いつものリリカルな音色とは違う緊迫感がチェットのトランペットからほとばしる。
ベースのルロイ・ヴィネガーも、強靭なウォーキングそのものがすばらしきジャズになっている。
でも、この音盤はネコパパ未架蔵のものだっ
探索の楽しみがまたひとつ増えてしまった…

そのほか、ジョニ・ジェイムズ、ジュリー・ロンドン、シャーリー・バッシーと、女性歌手の聴き比べも面白かったし、



sige君持参のカペー四重奏団、アルバン・ベルク四重奏団の「カルテット聴き比べ」も興味深いものだった。

このシステム、さらなる「伸びしろ」が期待出るはず。
チャランさん、次回も楽しみにしていますよ。
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コメント

コメント(4)
No title
奮発されたフランス盤の「お返し」ありがとうございました。
konkenさんに「強引」にお願いした鴨居の上のアンプ棚とSPラックのおかげでマルチスピーカが、自由に設置でき想定した以上の結果になりました。
ネコババさんとsigeさんがお帰りなった後、konkenさんに「お礼」と用意したロック盤をサブ・ウーハ(ステラ・ノボス)のレスポンを調整して聴いたところ彼が「ロック」に熱くなる理由が分かりました。
7月には、エージングが進みより進化した音楽を聴いていただけるとおもっています。
あと、ピアソラのピアノ三重奏「ブエノスアイレスの四季」のフランスかアルゼンチン盤を入手しようと思っています。

チャラン

2015/06/11 URL 編集返信

No title
こういう記事を拝読しますと大型装置への羨望が再燃しそうになります。
しかし、そのためには今の便利さを捨てて、都心から遠く離れた地に引っ越さないとご近所から水を掛けられそうです…

gustav_xxx_2003

2015/06/11 URL 編集返信

No title
>ピアソラのピアノ三重奏「ブエノスアイレスの四季」のフランスかアルゼンチン盤
いかにもチャランさんらしい選曲ですね。
あの装置で聴くタンゴの味わいもまた格別ですので、大いに楽しみにしております。

yositaka

2015/06/11 URL 編集返信

No title
グスタフさん、大型装置できくのもすばらしいですが、ローエンド機器にもそれなりの音の楽しみがありますよ。私は無理のない範囲で、ちょっとした工夫をこらしながら楽しんでいて、それなりの満足感を楽しんでいます。録音やメディアによる音の違いも相当に大きいと思います。
「音のよさ」というのは一筋縄ではいきません。

yositaka

2015/06/11 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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