三つの展覧会にワクワク!!

5月から6月にかけて、三つの展覧会に出かけてきました。
いずれも子どもの本にかかわりのある、興味深い内容でした。
 
天野喜孝 想像を超えた世界

期 間:平成27年4月11日(土)~5月24日(日)
場 所:高浜市やきものの里かわら美術館

画家、デザイナー、イラストレーターとして国際的に活躍する天野喜孝の
これまでの活動の軌跡、初期から最新作までを体系的にまとめた展覧会です。
絵画やデザイン画、オリジナルアニメ映像に加え、自身が絵付けを施した
陶器など200点以上をご紹介します。




 
天野氏は15歳でタツノコプロに入社。『科学忍者隊ガッチャマン』や『タイムボカンシリーズ』のドロンジョなどのシャープなキャラクター造形は彼の手になるもの…といえば、ネコパパ年代の晩期中年には、思い当たるかもしれません。例の筋骨隆々の、骨ばったアメリカンスタイルのヒーローの存在感は凄いものでした。

その後、彼はデザイナー、イラストレーターとして広範な活動ぶり。『グイン・サーガ』などのゴシック調ファンタジーのカバー絵も、彼の作品でした。
どんな作風もこなす、プロの描き手ですが、根本は彼の内面に締める「ここではないどこか」の別世界です。
これを物凄い力技で強引にこちらの世界に出現させてしまう激しさが、天野作品の魅力だと思いました。

ネコパパにはちょっと「暑苦しい」ファンタジーにも思えるのですが…

 
トーベ・ヤンソン生誕100年記念 MOOMIN!ムーミン展
 
会場 松坂屋美術館 名古屋店 南館7
会期 2015425日(土)〜517日(日)<会期中無休>
開館時間 午前10時〜午後730
 
ムーミン童話の原作者であるトーベ・ヤンソンの生誕100周年を記念する同展では、フィンランドのタンペレ市立美術館・ムーミン谷博物館所蔵のオリジナル原画や習作、スケッチなど、日本初公開作品約150点を含む約200点を紹介。展示は「ムーミン谷の四季」「ムーミン谷の風景」「ふしぎな生きものたち」「ムーミン谷に起こる自然現象」という4つのテーマに沿って構成され、愛らしいだけではない奥深いムーミンの魅力に触れることができる内容です。



9冊のムーミン・シリーズの挿絵が中心なので、既にお馴染みのモノクロ作品が見られるのだな…というつもりで出かけたのですが、初公開作品の多くはその挿絵の「習作スケッチ」だっのでした。

一枚の挿絵を完成するために、何度も何度も描きなおして行く。スケッチといっても、今回出品されているのはほとんど完成作品の息にまで仕上げられたものばかりです。

背景の山の稜線の形がほんの少し違っている。
ムーミンママの建っている庭の薪割り場の、積まれた薪の位置がほんの少し違う。
ムーミンとロールと並んで釣りをしているスナフキンが、いつもの麦藁帽子をかぶっている。(完成作品は珍しくも無帽)

ネコパパの目には、「習作の方がいいな」と思える作品もあり、現にグッズのデザインにはそちらが採用されていたりします。

ヤンソンは、続編を待望されながらも、わずか9冊でムーミンシリーズを終了させています。人生の持ち時間はまだ長かったのに…でも、この9冊を作り上げるのにどれだけ精魂を込めていたのか…膨大なスケッチを見て思いました。
作者にとって「これにて完成」という思いは、きっと強かったのでしょう。

もうひとつ、驚いたのは原画のサイズでした。
通常、挿絵の原画は印刷物より大きめに描くものと思っていたのですが、ヤンソンの原画はぴったり掲載サイズ。あの小ささで、幻想世界の細部を、徹底的に描きこんでいたのです。そういえば、ヤンソンの最初に発想したムーミン谷の住人たちは、人間よりもずっと小さいものでした。

小さな住人たちの持っている、大きすぎるような自意識、プライド、劣等感。そしてこれを圧倒する自然の力との対比…ヤンソンの一点の妥協もない描線は、たった一人で世界と向き合う、孤独で深い人生の姿勢を表しているように思えます。


 
宮西達也ワンダーランド展 ヘンテコリンな絵本の仲間たち

会期 2015425日(土曜)~67日(日曜)
会場 刈谷市美術館 全館
開館時間 午前9時~午後5
     (入館は午後430分まで)
休館日 月曜日(54日は開館)、57日(木曜) 

カラフルな絵と心温まるストーリーで、子どもから大人まで多くの人々を魅了し続ける絵本作家、宮西達也(1959年~)。
大ヒット作「ティラノサウルスシリーズ」や「ウルトラマンシリーズ」など代表作のほか、初期作品や秘蔵のラフスケッチなどを展示します。



おまえうまそうだな』に始まる「ティラノサウルスシリーズ」
おとうさんはウルトラマン』に始まる「ウルトラマンシリーズ」

それぞれ一作目は知っていて、胴長短足のとぼけた主人公は既成の「マッチョヒーロー」観を覆し、切り絵風の描線は斬新で、
新世代の絵本作家の登場を実感させました。
そんな宮西氏の展覧会というので、勇んで出かけてみました。

すると…ティラノもウルトラマンも、予想を超えてシリーズが膨れ上がり、絵本のヒット作となっていたことを知りました。
作画法も、切り絵のタッチを生かしたシルクスクリーン風の分割四色四枚重ね、という手の込んだ方法から、PCで同様の効果を表現するやり方に変わっています。
とにかく出版された作品が多いのにびっくりします。

子どもたちも、おなじみの主人公が活躍する新作が次々に出されるので、わくわくして新作を待っていることでしょう。いや、期待しているのは親の方かな?

ネコパパの感想は、こういう作品がどんどん読まれるのはいいこと。個性的な画風も子どもたちの目を肥やすことはまちがいなし。
ただ、それならもっと「絵」そのものに語らせてもいいかな…という気もします。

宮西氏のオリジナル作品は、文章が多い。
大勢の子どもたちへの読み聞かせにはちょっと向いていない…という実用的な言い方もできますが、もっと「行間」を読む愉しみが欲しいようにも思うのです。

戦後絵本の歴史は、「文字で語る」か「絵で語る」かの葛藤によって可能性を開いてきました。
そこへいくと宮西作品、やや「道徳的」すぎるストーリーも含めて「守り」に入っているところもあるのかな…と感じないではありません。

一方、『サカサかぞくの、だんながなんだ』の回文や『シニガミさん』の象徴性の深い作品世界は、絵本の新世界に向かう作者の冒険心を感じさせて、ワクワクさせられました。

で、購入したのは…



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コメント

コメント(2)
No title
このところ、子供がお世話になった本の作者が次々と鬼籍に入られたことがきっかけで、家の近くの本屋さんで絵本の棚を見るようになりました。昔からの売れ筋の絵本はいまだに並んでいるのは嬉しいものです。その一方で、なんだか暗い絵で、救いのない不気味な絵本が並んでいると、これは本当に子供向け絵本かなと思うことがあります。と言いつつ、宇野亜喜良の絵本を子供に与えていたのではありますが。

gustav_xxx_2003

2015/06/09 URL 編集返信

No title
戦後の子どもの本の世界を築いてこられた方々の次々の訃報…そういう時節に入るとはいえ、知らせのひとつひとつに心が痛みます。どの人も「戦後民主主義」の理想を支えとして、とうてい採算の取れぬ仕事に身を擦り減らしてきた人ばかりです。
幸い子どもの本には、一般書にない「命の長さ」があります。
自分を育てた作品を、自分の子どもたちに手渡す…そうした行いの中に、命脈を保ち続ける多くの作品は、日本文化の宝でもあります。
>暗い絵で、救いのない不気味な絵本
「あの本かな」とイメージが浮かぶ絵本もありますが、外見とは裏腹に、それが読み手の魂を救済する場合もあります。子どもも大人と同じく闇の世界を内包していて、その世界に形を与える作品を求める場合もあります。
ここに例示した宮西達也さんの「シニガミさん」もそんな一冊かもしれません。

yositaka

2015/06/09 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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