中村暢宏氏、八面六臂の演奏会

毎回楽しみにしている演奏会に、またもsige君と行ってきました。



 
名古屋アマデウス室内管弦楽団 第7回演奏会
 
●日時:2015年4月5日(日)午後2時開演(1時半開場)
●会場:三井住友海上しらかわホール(名古屋市中区栄2-9-15
●演目:モーツァルト/歌劇「皇帝ティートの慈悲」序曲
     モーツァルト/ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲K.364
     モーツァルト/6つのドイツ舞曲K.509
     ハイドン/交響曲第101番「時計」
●指揮&ヴィオラ独奏:中村暢宏
●ヴァイオリン独奏:山田理穂(当楽団員)

 
中村暢宏氏が八面六臂の活躍。
楽員が入場する前から、ステージに出て今回のプログラムの時代背景を解説。
協奏曲ではヴィオラのソロと指揮を兼任し、
後半前のトークでは、当時の資料に従ったというハイドンの楽器配置について説明。
もちろん今回も、溌剌とした指揮から生まれ出る音楽は魅力的で、楽しめる演奏会になっていました。
 
最初の「ティト」から、オーケストラは好調。
フォルテの四つの和音で始まる序奏。一小節ごとに大きな間を空けて、次第に音を高くしていく冒頭から「新しい音楽」を鳴らそうとする意欲が伝わります。
主部に入ると、活気のあるリズムに粗野な菅楽器、硬い音のティンパニが加わり、ピリオドスタイルによる演奏が展開していきます。

このスタイルは、後半1曲目の「6つのドイツ舞曲」も同様でした。
この舞曲、「6つの」とタイトルがついていますが、実際は複数の舞曲が巧みに構成され、続けて演奏される、10分程度の「ひとつの曲」です。
楽器編成も曲の規模も「ティト」よりも一層大きく、
単純そうな構成の中に、思いがけない陰影が隠されているのですが、演奏はそんな複雑な音楽の味わいをよく伝えるものでした。
 
一方、「協奏交響曲K.364」の表現は、がらりと違っていました。
ソロも伴奏も弦はヴィヴラートをかけ、テンポは遅めに設定した、ロマンティックなスタイルで演奏されたのです。
ソロ・パートは、よく似たフレーズを掛け合いで奏でていく場面が多いのですが、
レガート気味に滑らかなソロを弾く山田理穂さんのヴァイオリンに対して、
フレーズの頭に強いアクセントを付け、刻むように弾かれる指揮者のヴィオラは対照的で、面白い効果を出していました。

曲想によって、演奏スタイルも臨機応変に変えていく…
中村氏の音楽作りは柔軟です。

但し、この曲で指揮とソロを兼ねるのは、さすがに難しいのかな…と感じた部分も無くはありません。
ヴァンオリン・ソロに比べて、ヴィオラ・ソロの出が一瞬遅れる…のは、もしかしたらオーケストラへのキューを優先しているせいかも。
また、3つの楽章のテンポの差があまりないのも、少しばかり「長さ」を感じさせる一因になっていました。
特にフィナーレは、前のめりの速いテンポの演奏を聴きなれているせいなのか、どうしても「遅すぎる」気がしてしまいました。
 
クライマックスのハイドン「時計」は、
当時の資料にしたがって、シンメトリーに楽器を配置しての演奏。
ヴァイオリンはもとより、ヴィオラやコントラバスまでが左右に配置されるという、見慣れない演奏風景でした。
パートが分かれるのは、演奏するほうは大変だったかもしれません。けれども聴き手の違和感はほとんどありません。両側にコントラバスがあるせいか、低音部が増強された「ハイファイサウンド」が楽しめました。

演奏は、一部の隙もない正統派。
陰影豊かな第1楽章はハイドンの練達の音楽作りが浮き彫りにされ、
有名な第2楽章の時計のフレーズは、短く切り上げるように奏されるのがかっこよく、
第3楽章メヌエットは、トリオのフルート・ソロも愉悦の限り。
フィナーレではティンパニの女性が笑顔でリズムを取りながら、絶妙の打音を叩き出していきます。
 
鳴り止まぬ喝采に応えてのアンコール曲は、
モーツァルトの「ディヴェルティメントK344」から、有名な第3楽章、メヌエット。
演奏スタイルは協奏交響曲と同様に、ヴィヴラートを効かせたモダンスタイル寄りのもの。
どの曲も音盤では馴染みのものながら、実演を聴く機会はめったにありません。
 
それにしても名古屋アマデウス室内管弦楽団、
年々着実に力量を増しているのが実感されるのは、嬉しい限りです。
今後もモーツァルトとハイドンに特化した、特色のあるプログラムで活動を続け「名古屋の音楽名物」になってほしいものです。
 
 
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コメント

コメント(6)
No title
名古屋アマデウス室内管弦楽団、実力派集団なのですね。
名古屋にいるクラシック好きの友人に教えてあげようと思います。

Kapell

2015/04/06 URL 編集返信

No title
Kapellさん、彼らは、年一度コンサートを行うアマチュア団体ですので、プロ的な観点でのアンサンブルや音程は決して十分ではありません。けれど、それをカバーするだけの「音楽しようとする意志」が感じられるのです。応援していきたいと思います。

yositaka

2015/04/06 URL 編集返信

No title
名古屋の音楽事情は全くわかっておりませんが、アマチュア団体の活動が盛んみたいですね。
こうした中規模ホールがあるというのも活動の一助になっている気がします。
それにしても、企業が音楽ホールを建設し運営するというのも、ガバナンスとやらがうるさくなったいまでは難しいでしょうね。

アマチュア団体の演奏は、プロとはまた違った感動があるのは、私も何度か経験しました。

gustav_xxx_2003

2015/04/06 URL 編集返信

No title
グスタフさん、名古屋は戦後間もない時期から名大、名工大を中心に大学オーケストラの活動が盛んで、彼らが卒業後も活動を止めず、新しいアマオケを次々に誕生させました。そんなわけで年間を通して多くのアマオケ・コンサートが開かれているわけです。

yositaka

2015/04/07 URL 編集返信

No title
今晩は。SIGEです。僕の高校一年生時代の友人が仕事の合間を上手に使い、アマチュアオーケストラのトラとして各種団体で演奏活動しています。それを聞きたい応援したいという思いから拝聴するようになりました。ですが、その指揮をなさる方々の中で中村氏濱(この字と少し異なる)津氏といった優れたコンダクターの演奏を拝聴する機会を得ました。中村氏は意欲的にこのアマデウス室内管弦楽団を率いて音楽の冒険をなさり(それは過去の記録を紐解きながら新しい瑞々しさを獲得しようとする、まさに温故知新の創造です)、毎回感動を与えてくださいます。こうした演奏を聞くことで、手持ち音源の中に隠れる聞き逃し創造部を発見するのも楽しいことの一つです。今回の演奏も、問題点を見つけたけれど新しい発見もできました。最大の発見は、モーツァルトは構造的構築性を指揮者がしっかりと創造できても、ワンフレーズごとの音だし、歌いが魅力的なものでないと生きてこない。ハイドンの時計、一楽章はすでにメンデルスゾーンを予兆させ、規模は大きい。一直線に進んでも魅力を出せる。両者とも簡単なドミソが、こうも発音することが恐ろしいと改めて思わされたのでした。

toy**ero

2015/04/08 URL 編集返信

No title
SIGE君、今回も楽しめる演奏会でしたね。どんな形であろうと「音楽の冒険」をしていれば、それは必ず聴き手には伝わるものと思います。モーツァルトとハイドンの作曲姿勢の違いを示して見せるのも「冒険」の一つだったのでしょう。
そして、ハイドンもまた、一曲ごとに「冒険」をする人だったのでした。晩年の「ロンドン交響曲」群は、エステルハージ管弦楽団では成しえなかった「大編成音楽」に立ち向かう冒険と言えるのかも。
ただ、ロンドンのオーケストラは個々の技量ではエステルハージ楽団に及ばず、そのために細部のデリケートな遊びやソロの活躍は我慢せざるをえなかった…という話もあります。ハイドンの音楽を「ロンドン・セット」だけで判断すべきではないな、と思うこのごろです。

yositaka

2015/04/09 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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