松谷みよ子さん追悼記事より


 
朝日新聞320()夕刊
モモちゃん ばあ ずっと友達

「いないいないばあ」「モモちゃんとアカネちゃん」「ふたりのイーダ」。2月になくなった松谷みよ子さん(89)の絵本は、赤ちゃんのときからそばにいる友達でした。いつも笑顔と勇気をくれました。これからも、ずっと友達です。…
 
河合真美江記者の著名記事で、「いないいないばあ」が子育ての現場で広く親しまれていることを紹介している。また「いらない言葉のない文章」「戦争への思いを根元においておられた」という、児童文学作家あまんきみこのコメントも。
また、同じ面には作家・綿矢りさのインタビュー記事を「つらい現実描く比喩のすごさ」として掲載。
『モモちゃんとアカネちゃん』
を例に、松谷作品に特徴的な「ありきたりの比喩から飛び出すようにかかれている」「比喩の力」に言及している。
 
たとえば「夫の心が離れたことに悩み、心労がたたった」と言わずに「死神にとりつかれた」と書く。子どもの頃は、死神が心象風景を表しているなんて、思いもしない。けれど底知れぬ不吉さを感じ、怖かった。…(森の)おばあさんは、モモちゃんのお父さんとおかあさんを二本の木にたとえて、「あるく木とそだつ木が、ちいさなうえ木ばちの中で、根っこがからまりあって、どっちもかれそうになるところへきているんだよ」と言うのです。
どちらか一方が悪いわけじゃない、ただ、木の種類が違うのだと言う言葉はとても説得力があります。現実を書いているのだけれど、現実の枠を超えて好きに書いていいんだ、本ってそういうものなんだと教えられました。



 
週刊朝日 2015.3.27
追悼・松谷みよ子さん 愛の名作たちを生んだ気炎の集中力

子どもたちに愛され続ける名作の数々は、波乱の人生のなかで生まれた。
 
中津海麻子の著名記事で2ページを割いて掲載。同誌は20069月から半年間にわたり松谷の自叙伝『自伝 じょうちゃん』を連載した。
この記事は当時の担当編集者だった宇佐美孝子さんの回想と、熱烈な松田にファンで絵本作家の武田美穂さん、『ふたりのイーダ』『まちんと』などの挿絵を描いた司修さんへのインタビューで構成されている。
 
おそらく宇佐美さんからの聞き取りだろうと思うが、ここでも
「児童文学ではタブーとされた親の離婚を、こどもにもわかるたとえで表現した」
ことに言及。
また、一度だけ締め切りを忘れ、喫茶店で3時間集中して執筆する光景に、息を呑んだことが回想されている。
 
原稿用紙に向き合う姿は、私の知っている穏やかな人ではなかった。集中力が気炎のように立ち上がり、正直、怖いとすら感じられました。
 
司修の回想も興味深い。
『まちんと』の絵を頼まれたもののどう表現すべきか迷う司氏は、松谷の民話探訪の旅に同行する。
 


過去の辛い話をしたくないと拒む地域のお年寄りに、松谷さんは何も言わず、一緒にお茶を啜り、四方山話をしながらただそばにいた。時を重ねるうちにお年寄りが訥々と語りだした。司さんが振り返る。
「言葉はなくても寄り添う気持ちがあれば通じ合える。そのことを言葉を使わずに教えてくれました…松谷さんは、僕の中にない種を植えた。僕一人では咲くはずのない花を咲かせてくれたんです」



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Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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