DECCA《ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団エディション》をきく⑱
【CD2~3】
ハイドン:神なる聖ヨハネのミサ・ブレヴィス(小オルガン・ミサ)~
カール・ミュンヒンガー(指揮) [録音:1974年],
ハイドン:オラトリオ「天地創造」~
エリー・アーメリンク(Sp) トム・クラウセ(Br) ヴェルナー・クレン(T)
カール・ミュンヒンガー(指揮) [録音:1967年]/
「ミサ・プレヴィス」は、オルガンが活躍することから「小オルガン・ミサ」とも、呼ばれる。後半の「ベネディクトゥス」はオルガンを伴う可憐なソプラノのアリアで、この曲の中核部分はここではないかと思われる。
ネコパパは、昔からオランダのソプラノ歌手エリー・アーメリングのすっきりとした歌声が好き。この曲でも抜けるように爽やかな歌を聞かせてくれる。
このミサ曲は、「戴冠ミサ」や「レクイエム」など、モーツァルトの宗教曲を思わせる部分が多く、聴いているとハイドンの曲であることを忘れさせる。
宗教的内容を離れても、魅力的な音楽だと思う。
一方の「天地創造」はオペラ的だ。
ちょっと「魔笛」のような、ジングシュピールの雰囲気がある。
混沌を描写した音楽にはじまり、天使役のバスがナレーションの役割を果たしながら、天地創造の七日間の過程が、独唱、合唱を交えて語り、歌われていく。聖書の物語を荘重に描くというよりは、書割的な田舎の舞台で展開されているようなユーモラスな感じが、ハイドンらしい。
彼はオペラはあまり書かなかったけれど、この曲のようなドラマティックな音楽作りにも長けていたようだ。これが最高傑作と呼ばれることもあるそうだけれど、うーん。
この曲はモーツァルトの晩年までの数少ない、熱烈な支援者だったゴッドフリート・ヴァン・スヴィーデン男爵の依頼で作曲されたものだという。この時代を超越した音楽マニア、いったいどんな人物だったのだろうか。
初めて聴く曲なので演奏云々はコメントできないが、カール・ミュンヒンガーの質実剛健な指揮、ウィーンの面々のオーケストラと合唱は、音楽の魅力を過不足なく引き出していると信じる。
昨今はおそらく少人数のピリオド派の演奏が主流かもしれないが…
【CD6】
モーツァルト:
クラリネット協奏曲, フルートとハープのための協奏曲~
アルフレート・プリンツ(Cl) ヴェルナー・トリップ(Fl) フーベルト・イェリネク(Hp)
カール・ミュンヒンガー(指揮) [録音:1962年]
交響曲第40番ト短調
ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮) [録音:1959年]
クラリネット協奏曲は、VPOの名手プリンツのソロデビュー・レコーディングだった。
彼はのちにカール・ベームとも同じ協奏曲を録音している(DG)けれど、ほの暗く沈潜した味わいが美しいベーム盤とは対照的に、こちらはウィーンの楽器の音色をいっぱいに生かした、溌剌とした明るさに満ちている。
ベームのときとは、楽器自体も違うのだろう。プリンツは、この曲の明と暗、二つの局面を、結果的に両盤で描き分けて見せたのだ。
この件では、気になることがある。
名盤ガイドなどで、この二つの録音を取り上げて批評している記事は、気をつけて見ているのだが、これまでネコパパが読んだものすべて、このクラリネットの音色の違いにまるで言及せず、「基本的には変わらないが、ベームとの新盤のほうがより円熟している云々」といった決まり文句で済ませていることだ。
これほど違う二つの演奏に、簡単に優劣を付けられるはずがない。
明らかに聞かずにコメントしていると思う。
プロって、そんなことでいいの?
フルートとハープのための協奏曲は、イエリネクの、ピアノのような骨太のハープが、一音一音エッジを立てるように演奏していくのが個性的。
対するトリップのフルートは、意識的に色を押さえ、虚飾なしのストレートさで吹ききっている。
ミュンヒンガーのテンポはとても遅く、地味だ。
とくに「華麗な」フィナーレでは速めの演奏が多いだけに、この遅さは際立つ。
でも、ネコパパは、質実剛健、いやある意味「異形」にすら聴こえるかもしれないこの演奏が、好きだ。
フランスに因んだこの「ギャラント」な曲を、いかにもそれらしい、フランス風な華麗さで演奏したランパル、ラスキーヌ、パイヤール盤(ERATO)も確かにいい。
けれど、本当にこの曲が「凄い音楽だ」と感じさせられたのは、このミュンヒンガー盤のほう。今聞いても、その手ごたえは少しも変わらない。
最近では、目を見張るばかりに素晴らしい音盤が多くて、「これが唯一」なんてことは全くないし、第一にお薦めする気持ちも、ないけれど…
なぜか今回は、カラヤン指揮のモーツァルト、それもト短調交響曲が組み合わされている。ミュンヒンガーとは対照的に「すぱっと」速く、音はどこまでも厚みをもって溶け合っている。フィナーレに向かって盛り上がっていく堅牢なスタイルの演奏だ。
【CD64】
コダーイ:ハンガリー民謡「孔雀」による変奏曲,
ボリス・ブラッハー:パガニーニの主題による変奏曲,
エルガー:エニグマ変奏曲
ゲオルク・ショルティ(指揮) [録音:1966年]
こういう曲は、ウィーン・フィル、ちょっと苦手なのかな。
コダーイとエルガーの曲は、曲としてとても魅力的に思うけれど、ショルティの指揮だとなんとなく長く聴こえる。
フォルテで盛り上がるところは、例によって切れがよく、素晴らしいけれど、なだらかな、どちらかというと歌わせ方のセンスや味わいで聴く部分になると、淡々としすぎる気がする。そしてこのような音楽は、細部の味わいや、ローカルな感じや、いたずらっぽい遊びを演奏者が楽しんでこそ、いい演奏が生まれるのでは…
ウィーンフィルのメンバーは、やはりこの指揮者とは、ちと馬が合わないのだろうか。指示には従うけれど、気は許さない…という空気が伝わってくる気がする。
やはり先入観?
コメント
HIROちゃん
2015/03/23 URL 編集返信というか、このBOXにエルガーが収録されていることに気付いておりませんでした(汗)
どう考えてもVPOにわざわざエルガーの録音をさせることもないですよね…
gustav_xxx_2003
2015/03/23 URL 編集返信yositaka
2015/03/24 URL 編集返信yositaka
2015/03/24 URL 編集返信今、棚をみたらミュンヒンガーのべートーヴェンの交響曲ですが、第2番と第7番のCDも持っていました。近いうちに久しぶりに、また聴いてみたいと思います。
HIROちゃん
2015/03/24 URL 編集返信yositaka
2015/03/24 URL 編集返信