ベートーヴェン
コリオラン序曲 交響曲 第5番 第6番《田園》
リッカルド・シャイー指揮
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
録音:2007年6月4, 6-9日(コリオラン)2009年9月10-12日(第5)11月23-29日(第6)
ライプツィヒ、ゲヴァントハウス
Decca CD
2011年11月に発表されたベートーヴェン交響曲全集の一枚で、モダン・スタイルを基本としている。でもこのテンポはちょっとピリオド系?
リッカルド・シャイー。
この指揮者は、こんなに個性的な音楽をやる人だったのか。
コンセルトヘボウの音楽監督時代の印象とはずいぶん違う。何かに急き立てられるような、勢いに乗って疾駆するベートーヴェンなのだ。
第1楽章、快速で始まるテーマは、勢いに乗って大きくクレシェンドし、風を切って走る駿馬のように、どこまでも疾走する。
フレーズは切れ目なく繋がり、音色はつややかに明るい。
途中わずかにテンポを緩めたり、クラリネット、ファゴットのリズムで一瞬のディミヌエンドがかかったり…細部にハッとするような表情はあるが、基本は「疾駆」。俊敏な音の勢いに身を任せる快感がある。
第2楽章も速い。
小川というより急流だ。その流れは単調ではなく、同じ音型が繰り返されるような部分には細かな強弱が付けられ、変化する水しぶきや、水面にきらめく陽光のまたたきを描き出す。
時折掛かる大きなクレシェンドは、この「疾駆する田園」を象徴するもの。
基調となるのは弦の響きで、この楽章を特徴付ける木管群の音色は、どういうわけかちょっと細身で、地味すぎる気もする。
第3楽章はほっと一息、という気分で、テンポも特別速くしない。管楽器も特別な「芸」を見せず、譜面通りやっているという感じ。トリオも勢いはあるが、クレシェンドはなくストレートに進み、第4楽章に差し掛かるあたりで一気に加速する。
第4楽章は低弦とティンパニの強奏、強打が凄まじい迫力だ。稲妻を表すピッコロが思い切り音を引くと嵐は頂点に達し、次第に収束していく。
それでもコントラバスだけは、ずっと唸り続けているのが恐ろしい。
フィナーレに入っても、前楽章の沸騰感はなかなか収まらず、テーマも余熱を持って叫ぶように奏でられるのが面白い。
テンポは、この楽章としては最速に近いかも。
フォルテではトランペットやトロンボーンの突出も目立ち、ようやく「牧歌」的な落ち着きが出てくる頃にはもうコーダになっている…
「田園」でこれなのだから、同時収録の「コリオラン序曲」と「第5」がさらにカロリーの高い熱血演奏になっているのは、容易に想像がつくだろう。
コメント
この2曲もかなり快速テンポの演奏で、モダン楽器を使いながらも、かなりピリオド演奏の影響を受けたスタイルのように感じました。
それでも、それなりの重厚さを感じさせるあたり、LGO固有の響きもあって、第8番などはなかなか面白く聞けたところもあります。
第6番も、同じようなスタイルの演奏みたいですね。
gustav_xxx_2003
2015/03/08 URL 編集返信最近の演奏を続けて聞いてきますと、快速調が多いように感じます。
「演奏の伝統」よりも、ベートーヴェンの記したメトロノーム数字を尊重する流れかも。演奏者にとっては、速さを保ちつつ細やかな表現を行うのは大変でしょうし、聴き手の方は案外スピードの速さには慣れてしまいます。最初は新鮮でも、だんだんと単調さが気になってくる。「田園」のように、フィナーレが落ち着いた曲調の音楽では、特にそうです。難しいものだと思います。
yositaka
2015/03/08 URL 編集返信