「町人貴族」が素敵だ。

DECCA《ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団エディション》をきく⑮
 
CD56
R・シュトラウス:交響詩「ドン・キホーテ」
          交響的幻想曲「 イタリアより」
ピエール・フルニエ(Vc) クレメンス・クラウス(指揮[録音:1953年]
 



「ドン・キホーテ」はチェロ協奏曲ではない、と各種解説には書かれているが、物語の描写に関心のない私はチェロ協奏曲として聞く。
他のR・シュトラウスの交響詩と比べて、ずっと楽しく聴けるのは、そういう聴き方のできる曲のせいだと思う。風車の場面やウィンド・マシンの活躍など、オーディオファイル的な見せ場はなるべくスルーして、チェロの独奏を楽しんでいる。

この盤でソロをとるフルニエは、セル盤やカラヤン盤にも参加しているが、そちらはオーケストラに埋没した感じの録音のせいか、あまり印象に残っていない。しかし、このクラウス盤は素晴らしい。各楽器が鮮明に捉えられた録音のせいで、チェロが他の楽器に邪魔されず、しっかり聞き取れるからだ。ロストロポーヴィチヤニグロのように、主役ドン・キホーテを演ずるのではなく、純粋にチェロの曲として丁寧に歌い上げているのがいかにも彼らしい。

「イタリアより」はR・シュトラウスの若書き。
組曲風の構成は、切れ目なく続く交響詩よりも私にとっては聴きやすい。
前半はとりとめのない情景描写が続くが、後半になるとソロ楽器の活躍が加わり、精彩を増してくる。「フニクリ・フニクラ」のテーマを生かして、変化に富んだ盛り上がりを作り出すフィナーレも面白い曲だ。
クラウスの演奏は50年代のウィーン・フィルの自発性を最大限に発揮させたもの。R・シュトラウスの良さがよく理解できない私だが、このディスクは二回続けて聴いていてしまった。
 
CD57
R・シュトラウス:
家庭交響曲
管弦楽組曲「町人貴族」
クレメンス・クラウス(指揮)[録音:1951&1952年]



 
「町人貴族」が素敵だ。
R・シュトラウスの管弦楽曲を聴くなら「薔薇の騎士」組曲か、これが一番いいかもしれない。
これはオペラ「「ナクソス島のアリアドネ」に使われた曲を、R・シュトラウスが組曲としたもの。ピアノ、ハープを加えた30人の室内オーケストラ編成で、ヴァイオリンの旋律線に打楽器,ピアノ,ハープが絡み、古典と近代をミックスしたような独特の響きを生み出している。

1曲はピアノの響きの上に弦楽合奏が古典的な生き生きと弾む旋律を演奏していく。
第2曲はロココ風のメヌエットで、室内楽的な弦楽合奏の伴奏の上にフルートが主旋律を奏でる。第3曲 はトロンボーンが豪快に主旋律を演奏した後,トランペットやピアノも加わって、賑やかな音楽が繰り広げられる…といった具合。リヒャルト・シュトラウスの好んだヴァイオリン・ソロも随所で名人芸を見せる。
フランス・バロック時代の作曲家リュリの曲を編曲して組み込んでいる部分もあり、それが違和感なく溶け込んでいるところが面白い。

クラウスも、ウィーンフィルも渾然一体となって、50年代のウィーンの色香にみちた、自在そのものの演奏を繰り広げている。この舞踏感覚は、彼らがワルツやオペレッタの演奏で聴かせるものと共通のセンスを感じる。同じ質のもの。



 
「家庭交響曲」は、「英雄の生涯」とは対照的に、家庭の細々とした情景を描写した音楽とされる。「英雄…」が作曲者の外向けの姿なら「家庭」は内向きのそれ、ということか。
どこが何の描写なのか、と考えなから聞く姿勢は、怠惰なネコパパはない。一つの主題を核に変転する音楽が、クライマックス目指して次第に盛り上がっていく、変奏曲の一種として聞いている。すると…どちらも基本的にほとんど同じような曲に聞こえるのだが。
豪華絢爛たるショーピースで、ライヴなら楽しめそうだが私には「町人貴族」ほどのおもしろさは感じられなかった。生演奏で聞くとどうなのだろか。
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コメント

コメント(6)
No title
「町人貴族」の組曲は軽妙洒脱で面白い音楽ですね。編成も鍵盤楽器の多用と1管ずつ管楽器と少ないプルトの弦楽器というもので、室内オケといったところ。「ナクソス島のアドリアドネ」の原型にもなったものですが、一度舞台を観てみたいものだと思っています。作曲者自身がVPOを振った録音も残っています。戦時中のものでした。

SL-Mania

2015/02/22 URL 編集返信

No title
SL-Maniaさん、これを聞いて「ナクソス島のアドリアドネ」にも興味がわいてきました。以前放送されて、テレビ録画も確かあるのですが、なかなかオペラを見るのはしんどく、うっちゃってあるものが多いのです。「薔薇の騎士」も1時間くらい見ると、集中できなくなります。オペラでも、モーツァルトなら何時間でも平気なのに…やはり、「切れ目なく続く」というのが私にはきついみたいです。

yositaka

2015/02/22 URL 編集返信

No title
R.シュトラウスはお気に入りの作曲家の一人ではあるのですが、クレメンス・クラウスのものはモノラルというだけの理由で聞いたことがありませんでしたから、少し先の楽しみになっています。

興行的には失敗したオリジナルの「ナクソス島のアリアドネ」の舞台は、少し前にNHKが放映してくれたハーディングくんのザルツブルクの舞台映像を見て「町人貴族」組曲の元の姿をようやく確認することができました。
演出も違和感がなく、オペラ指揮者ハーディングの力量の高さも感じられる好演であったように思います。

gustav_xxx_2003

2015/02/22 URL 編集返信

No title
グスタフさん、録画してあるのはきっとそのハーディングです。今度探してみることにします。私がR.シュトラウスで素晴らしいと思うのは歌曲で、彼は本来は歌の人ではないかと思います。また、ホルン協奏曲やメタモルフォーゼンといった、素直に聞ける作品もあります。けれど交響詩はちょっと辛い…
それはきっと私自身が内側に持っていない類の音楽だからなのでしょう。

yositaka

2015/02/23 URL 編集返信

No title
このクレメンス・クラウス・・・私も持っていますが、しばらく聴いていません。どんな演奏だったか記憶がありません。

クレメンスクラウス・・・1942年のモノラルですが「薔薇の騎士」の全曲も持っています。SPですがオペラなので・・・何とか聴けます。
その他にも何かあったような・・・ヨハン・シュトラウスなどのウインナ・ワルツやポルカ集はクラウスでたくさん持っているのですが、未整理で・・・

HIROちゃん

2015/02/23 URL 編集返信

No title
HIROちゃんさん、「SPですがオペラなので・・・何とか聴けます」…それは「声」を中心とした録音のせいかもしれません。クレメンス・クラウスは強い個性を持つ指揮者ではないのかもしれませんが、ウィーン・フィルの音色を生かすことに長けた人でした。オペラでの実績はわかりませんが「こうもり」全曲などを聴くと、まさに劇場の人、アンサンブルの人という感を強く持ちます。

yositaka

2015/02/24 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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