演奏も録音もデッドな田園

BEETHOVEN Symphony No. 6  "Pastoral" 



交響曲第6番ヘ長調 op.68『田園』
ベルナルト・ハイティンク指揮
ロンドン交響楽団


録音:20051116-27

ロンドン、バービカン・センター[ライヴ、DSD録音]
プロデューサー:ジェイムズ・マリンソン
エンジニア:ニール・ハッチンソン&ジョナサン・ストークス

LSO LIVE  CD
 
モダンスタイルだが、楽譜は最新のベーレンライター版を使用しているとのこと。
 
ハイティンクとしては、三度目の「田園」。
一回目のロンドン・フィルを指揮した盤は残念ながら未聴だ。
二回目のアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団と、1985年に録音した全集(フィリップス)に含まれる盤は、この指揮者のイメージ通り、穏健な模範演奏の趣があったと記憶しているのだが、この新盤は、どうだろう。
 
第1楽章は速めのテンポで開始され、弾みのあるリズムで押し進む。
低弦、金管も音が強い、というかきつい。フレーズの切れ目は無音になり、次のフレーズに映るとさっと音色を変わる。切り替えの呼吸が鮮やかだ。切れ目も長めに取ったり、瞬時に切り替えたり、と芸が細かく、変化に富む。
展開部では、強靭な押し出しがさらに強くなる。あのハイティンクの指揮で、これほど野趣に富んだ演奏が展開されるとは…
 
第2楽章も速めで、情緒に傾かない表現である。ヴァイオリンは抑え目、伴奏部と木管に強めのバランスを持たせ、リズミカルな明晰さを基本として進められていく。音の溜めや沈み込みのない、一直線で淡々とした演奏である。コーダの小鳥の歌もさっぱりとして、都会の公園の情景を思わせる。
 
第3楽章も速く、強く、鋭く跳ねるリズムが打ち込まれる中で、木管の応報が続く。のどかというより、蹴飛ばされそう。トリオではさらに加速し、力んだ弦の摩擦音がぎしぎしと軋むように鳴り響く。
 
第4楽章は、前楽章の勢いが維持される中で、ティンパニの叩きつけるような激しい強打が猛々しく襲い来る。その、拍を乗り越えて前のめりに叩き込んでくる迫力は、ちょっと戦慄的とさえ思える。
 
フィナーレに入っても、テンポは落とさない。
「攻め」の演奏姿勢はここでも変わらず、多少の音の荒れなどはものともせず、強めの音で突き進んでいく。
その一方で、時折ふっと思い出したように、優しげな弱音を効かせるところもあって、決して勢いに任せただけの演奏ではないのだが…
 
全曲を通して、何かに憑かれたような熱情を感じさせる演奏。
ハイティンクとロンドン響は「田園」の牧歌的な要素には背を向け、あたかも「第5」のような、アグレッシブで凝縮された迫力を、曲に求めているようだ。

響きの少ない、直接音中心の録音が、それを助長する。
細部まで明瞭なのはいいが、ちょっとデッドに過ぎると思うのは、会場の特質だろうか。LSO LIVEレーベルの録音はほとんど同じバービカン・センターで行われているが、どの音盤でもこんな音がするわけではない。

ユニークだけれども、好みが分かれる演奏かもしれない。

ネコパパの感想は、意欲は買うけれどちょっと、いや相当、疲れる演奏と感じてしまった…
指揮者も、オーケストラも、聞き手に新しいものを提示しなければ、としゃかりきになっているような、痛々しさを感じさせるのだ。それは過去の指揮者たちが聴かせた、乾坤一擲の「共感音圧」とは、ちょっと質の違う強音のように思うのである。
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コメント

コメント(4)
No title
最近は評価が急激に高くなっているハイティンクではありますが、どうも私とは相性がよろしくなくて…
近年のブルックナーやマーラーの、テレビで放映された映像とかを見た時期もあったのですが、いまひとつ面白く感じるところがありません(汗)
そういえばハイティンクのベートーヴェンはまじめに聞いたことがなくて、想像することすら難しいのですが、ご感想を読んでおりますと、なんとなく近頃のピリオド演奏の影響を受けた演奏スタイルなのかなとも思えます。
ベーレンライター版による演奏はマッケラスによる全集が最初でありましたが、全体的に軽やかで快速演奏であったように記憶しています。

gustav_xxx_2003

2015/02/20 URL 編集返信

No title
グスタフさん、実は私もハイティンクは疎遠な指揮者のひとりです。ブルックナーやマーラーなどのテレビ放映でも、最初はきっちりした良さを感じていても、最後まで集中が持たなくなってしまうことが度々ありました。このベートーヴェンも同じで、丁寧なのですが、最初から最後まで同じ調子、という意味では、やはりいつものハイティンクなのです。真面目なら真面目で、燃えたら燃えたで、それぞれ単調になってしまう…というのは言いすぎでしょうか。

yositaka

2015/02/20 URL 編集返信

No title
このハイティング/ロンドンSOのベートーヴェンは全曲持っていますが、6番の田園は、さらりと聴いた程度です。
あらためて、近いうちに聴いてみます。

HIROちゃん

2015/02/20 URL 編集返信

No title
HIROちゃんさん、この録音は音量の増減は少ないので、大音量だとうるさめに聞こえ、小音量で聞くとさらりと流れてしまう可能性があります。
ハイティンクのスタイルとしては異色ですが、彼らしく懸命に勉強した成果と言えるかも知れません。

yositaka

2015/02/20 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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