指揮者の弾けるような身振りが見えるよう

交響曲第2番、第6番『田園』 



パーヴォ・ヤルヴィ指揮
ドイツ・カンマーフィルハーモニー ブレーメン
RCA  SACDハイブリッド
録音:2007年12月、ベルリン、フンクハウス・ケーペニック 


モダン楽器によるピリオド・スタイル演奏。

第1楽章冒頭は速いテンポで開始。でもちょっと進むとテンポが緩む。フレーズの終わりは音を強め、ぐっと伸ばして味を出す。そのあとも、突き上げるように押しし進むかと思えば、すっと音を和らげたり、オーボエが思わぬところで突出したり…と多彩な表現を繰り広げていく。繰り返しを含め11分を超えるのに速めと感じるのは、こうした伸縮の大きさのせいだろう。フレーズの切り上げがきっぱりと意志的なところから胸を叩くようなリズム感が生まれ、生き生きとして気分を印象づける。

第2楽章は力まず自然に流していく感じだ。フレーズの自然減衰奏法が目立つことや、木管のソロは意外にデリケートで沈んだ音に聞こえる。ファゴットのロングトーンを強めの音でずーんと響かせるところは面白い。しかし強い音は出さないし、ちょっとおとなしすぎる感も。

第3楽章は遅めのテンポで開始、しかし主題提示の後半でにわかに火が付き、オーボエやホルンの音もぐっと強くなる。トリオは猛然とダッシュして、鋭いリズムを刻む。ヤルヴィが、全身、弾けるような身振りで振っている様子が目に浮かぶようだ。

第4楽章も前楽章と同じく、最初は弱めに始まり、ティンパニの一撃ではじける。
小型ティンパニの硬いバチでガンガン盛り上げる、ピリオド奏法独特のノリは、きっと好悪を分けそう。嵐が静まると一瞬で音が静まり、自然減衰しながらフィナーレへ。

フィナーレ冒頭は非常に沈んだ音。主題提示の跫音も抑えられていて暗い。しばらく音楽が進んでも、なかなか視界が開けず、コーダも近いあたりでやっと音量が増してくるが、祈りの部分はあっさりと通り過ぎ、寂しげなホルンの響きとともにさらりと終わる。

全体の印象は、ピリオドスタイルを意識させない、機敏さと躍動感が魅力の演奏。その分、緩やかな楽章は抑制が効きずぎて沈みがち。
その結果、第3、第4楽章が演奏の頂点で、フィナーレは余韻…という構成に聴こえるのだが、
これは曲の持つ豊かな空間性を狭めている気がする。ヤルヴィの演奏スタイルは「第7」のような曲でこそ最高に発揮されるのではないか。
 
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コメント

コメント(3)
No title
パーヴォ指揮のドイツ・カンマーフィルハーモニー・ドレスデンによるベートーヴェンは、NHKが放送してくれた映像で第6番と第7番を聞いております。
どちらかと言うとピリオド・スタイルの演奏は、あまり好みではなかったのですが、パーヴォですとさほどの抵抗も感じず聞けたような気がします。
ご指摘のように、第7番の演奏の躍動感には引き込まれる魅力を強く感じました。
ああいう音楽が、一番似合っているでしょうね。

gustav_xxx_2003

2015/02/08 URL 編集返信

No title
グスタフさん、さすがに期待の指揮者だけあって鮮やかです。彼には大編成モダンスタイルでの演奏も期待したいものです。最近はピリオドスタイルが多いのですが、これも流行に乗って、表現の可能性を狭めているのではないかという危惧も感じます。この演奏にしても、緩やかな楽章が物足りないというのは、曲の性格から言っても相当にまずい気がします。

yositaka

2015/02/08 URL 編集返信

No title
先日同オーケストラの来日公演が放送されました。演目はブラームスだったのですが、ヤルヴィがピアニストと面白い会話を交わす場面がありました。ブラームスのピアノ協奏曲第1番、ヤルヴィは冒頭を「マエストーソ」と捉えていたけれどあまり共感を感じていなかった。ところがあるとき、これはブラームスがシューマンの死を知った頃の作品と知り、第1楽章はそのときの崩壊するような衝撃を表し、第2楽章からはその傷からの回復を表していると解釈して、ようやく腑に落ちた…
ヤルヴィという人は、音楽を物語として捉える人なのです。この田園にも彼の感じたストーリーがあるのでしょう。きっと。

yositaka

2015/02/22 URL 編集返信

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yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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