ジブリとディズニー~研究大会報告④

《公開シンポジウム》
テーマ:ディズニーやジブリはどのように児童文学をアニメ化してきたか
        アニメに描かれた少女キャラクターを中心に
登壇者:須川亜紀子(横浜国立大学准教授)
西原 麻里(京都女子大学他非常勤講師)
目黒 強(神戸大学准教授)
司会者:横川寿美子(帝塚山学院大学教授)
 
これは研究大会の目玉と言える企画で、別棟講堂に移動しての開催。
京都女子大の学生も多数参加して、賑やかな会になりました。
児童文学専門の横川、目黒両氏はレジュメを用意しての提案、アニメーション領域の須川、西村両氏は映像を使っての提案と、発表の仕方も好対照。
予想通り、4人の提案が長くなりすぎて、質疑の時間がほとんどなくなってしまったのは残念でしたが…



 
①フェアリーテールからディズニー・アニメーションへ~少女主人公はどのように描かれてきたか 
横川寿美子(帝塚山学院大学)

ディズニー初期三部作「白雪姫」「シンデレラ」「眠れる森の美女」についての考察。
初期作品は「リトル・マーメイド」以降原作の改変が多くなったことに比べると、比較的原作通りのストーリーを踏襲している。しかし、全体の骨格は、戦中から戦後まもない時期のアメリカ一般の価値観を色濃く反映したもので、以下のような共通点が見られる。

・善悪二元論に立ち、敵対者をはっきり設定
・ロマンティックラブを展開の中心に置く
・男性ヒーローの英雄化(悪との戦闘シーン)
・ヒロイン紅一点主義
・小動物など多数の援助者を登場させる。

また、重要な役はすべて男性で、いわば「男性によって支えられる女性の構図」をよみとることができる。

 
②お姫様の「自分探し」と「自立」~現在のディズニー・プリンセス
西原 麻里(京都女子大学他非常勤講師)
 
「ラプンツェル」「アナと雪の女王」を中心に考察。
初期三部作に続く第二期は「リトルマーメイド」から「ムーラン」に至る作品である。この時期は初期作品に見られた恋愛規範―の反発が描かれるようになり、それは「プリンセスと魔法のキス」から最新作「アナと雪の女王」では一層顕著に。異性愛の重視は急速に後退し、それにかわって「女性同士の絆と自分探し」が物語の中核を占めるようになる。

・キャラクターデザインは古典的だが、キャラクター自体は古典を否定
・規範的異性関係が変容し、女性が男性パートナーを圧倒→男性キャラの矮小化
・女性の自立とアイデンティティ確立をテーマに据える

分岐点になったのは2010年『ラプンツェル』で、原作の逆のストーリー展開や役割の逆転が至るところで見られる。塔に閉じ込められた王女が女性を象徴し、自分は何者かを追求し、魔法の力の宿る髪を切り(男性に切らせる)茶髪になって、自由への扉を開いていく。



アナと雪の女王』では、こうした要素に加えて、ディズニー作品ではほとんど見られなかった「女性同士の連帯」が描かれると同時に、これまで悪の象徴だった女王が肯定的に描かれることで、現代の視聴者の共感を得られるような表現がなされているのである。
 
③ジブリアニメの作家性
須川亜紀子(横浜国立大学准教授)

ジブリアニメの特色は「作家たち」の存在である。高畑勲、宮崎駿、いずれも強い作家性を持って、日本のアニメの創世記から作品を積み上げてきた。
彼らの作家性の原点はポール・グリモー『やぶにらみの暴君(王と鳥)であり、キーワードは「脱ディズニー」である。

・リミテッドアニメの手法
・動物キャラクターの多用
・社会主義思想
・少女性(男性作家にとっての他者としての少女像)
・労働することの価値

『アルプスの少女ハイジ』の冒頭部分、ハイジが衣服を脱ぎ捨てて山に向かう、そこに動物たちが続き、すぐに「働く」シーンが続くという流れを見るだけでも明らかである。



労働の重視は『赤毛のアン』冒頭や『魔女の宅急便』全体に色濃く現れている。
 
④ジブリ映画におけるヒロイン像の両義性―児童文学を原作とした作品を事例して―
目黒 強(神戸大学准教授)
 
児童文学作品を原作にした四作を取り上げ、原作との違いを詳細に検討した報告である。

・魔女の宅急便(1989)
・ハウルの動く城(2004)
・借りぐらしのアリエッティ(2010)
・思い出のマーニー(2014)

比較の観点は、家族関係、旅立つ理由、ヒロインの資質で、それぞれの観点に「影響を及ぼしている変更点」が引用・指摘された。例によって膨大な資料を駆け足で論じられたので、全体の傾向をまとめることは難しいが、おおよその結論は、次の2点にあると感じられた。

・ロマンティックラブへの傾斜が原作よりも強調されていることが全ての作品に見られる。
・当初は強かった自由への憧れの強さや想像力が、最近の作品になるほど弱まってきている。それは、日本の子供たちの現実を反映してきている。

 
<感想>
児童文学の原作を持っているというだけで、ディズニー作品とジブリ作品を合わせて検討する、それも多くの作品をひとまとめに考えるというのは困難な課題だと思いました。しかし両者の性格はやはり対照的で、エンターテイメント作品の枠組みの中でも、ジブリ作品の「作家性」はやはり大きいものと感じます。「脱ディズニー」を目指したジブリが、意外にロマンティックラブの価値観を維持しているという指摘も面白い。
これを取り上げて「ジブリの価値観は性役割においてはディズニーに遅れをとっているのではないか」とみる意見も会場から出されました。
しかし私は、ディズニー作品が古典的価値観を脱して、女性の自立を描き出しているという「進歩的」見解には、いささか疑問も感じます。映像の引用はわずかでしたが『ラプンツェル』の一部を見るだけでも、それは視聴者のニーズに対応したファッションとしての表現で、表現の本質はあまり変わっていないのではないか、と感じたためです。もっともそれは「食わず嫌い」の偏見かもしれないのですが…
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yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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