愛知祝祭管弦楽団のブルックナー

Sige君と出かけてきました。
いろいろな意味で度肝を抜かれた演奏会でした。

 
愛知祝祭管弦楽団 福島章恭ブルックナープロジェクト
2014/10/26() 13:30
会場 愛知県芸術劇場コンサートホール



 
プログラム 
ワーグナー 楽劇「ニュルンベルグのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲
バッハ 2つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調 BWV1043*
ブルックナー 交響曲第8番(ハース版)


指揮:福島章恭
*ヴァイオリン 古井麻美子 清水里佳子

 
奔放な筆致が魅力の音楽評論家でもある、この指揮者の名前を見たときから
「何かある」
と思っていましたが、
やってくれました。一曲目のワーグナーから…

曲も終盤にさしかかり、遅いテンポを維持したまま凄みのあるクライマックスを迎えたそのとき、オルガンの前の二階席の観客がおもむろに立ち上がり、譜面を持って正面に並び始めました。そのオルガンにも、いつの間に覆いが取り外されたのか、既に奏者が位置についています。

「もしや…」と思ったそのとき、前奏曲を締めくくる和音が、切れ目なしに「マイスタージンガー」第1幕の大聖堂の合唱に繋がりました。壮麗な「開幕のコラール」。私服姿の二階席の観客は、実は合唱団員だったのです。
曲が終わると、拍手の中、団員たちは客席に戻り、何食わぬ顔で次の曲を聴き続ける…そんな楽しい演出でした。

 
次のバッハでは、楽員の人数を減らし、チェンバロも入れてのバロックスタイル。けれどヴィヴラートをしっかりかけ、ゆったりと流れる、強弱の幅も広い演奏ぶりは、60年代の室内管弦楽団のそれを思わせるものでした。第二楽章の、いつまでも終わらないような風情、第3楽章でのソリスト掛け合いの長いカデンツァの挿入(ヘルメスベルガー作曲)など、近頃流行のせかせかした演奏とは正反対。
こういうバッハ、大好きです。
 
メインプログラムのブルックナーの第8番は、まさしく指揮者の個性全開の演奏になりました。
演奏時間は90分を超え、
特に第1楽章の後半、第二楽章の中間部以降が遅い。
「とても遅い」
と思ってしまうということは、私の「聴く呼吸」とは合っていないわけで、正直、前半に関しては、だんだん居心地が悪くなってしまったのは確かです。

指揮者の本領が発揮されたのは後半でした。
第3楽章、美しい旋律の流れが滑らかに繋がり、とうとうと歌われていくさまは甘美で、夢心地ですらありました。弦楽器の音さばきの良さも際立ち、無理なく厚みのある音をキープしていくのも、ハープの音を消さないよう、バランスに気を配るセンスも自在にできる見事さ。
…そして、大きくテンポを変えながらコーダに向かって盛り上げていくフイナーレこそ、福島章恭の真骨頂。
隅々まで主張を通した演奏なのに、指揮ぶりはむしろ淡々と抑えたものでしたが、さすがにフィナーレでは大きな身振りでオーケストラを引っ張っている様子が伝わってきました。
締めくくりの三和音を極限的な遅さで叩き込み、思い切り引き伸ばしての終結は、まさにクナッパーツブッシュ+福島流。ネコパパの予感したとおりの終わり方でした。
 
ネコパパとsige君が陣取った席は、3階席右翼、オーケストラの真横です。
見晴らしはあまり良くないけれど、この会場では音の粒立ちや鮮度が最もよく伝わってくる席です。
ここで聴いたオーケストラの音の凝縮感や各パートの鮮明さは、アマチュアを忘れる高みにありました。
特に弦楽器群の、上マグロみたいな艶の乗った音色は、指揮者とオーケストラの野望の表れとでも言えばよいのでしょうか。

まあ、プログラムに繰り返し述べられている「天上の響き」と呼ぶには、ちょっと躊躇するところもあったのですが…圧倒的な印象の快演だったのは間違いありません。
指揮者、オーケストラともに、機会があれば喜んで聴きにいきたいと思います。
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コメント

コメント(6)
No title
いやあ、実に充実したコンサートでした。マイスタージンガーの終結を締める合唱の美しさ、アマチュアの演奏会とは思えぬ2つのヴァイオリン協奏曲のこく、ブルックナー8番の全員のゆとりと、艶やかな歌い、しっかりとしたリズムと構築性。そりゃ言えばここはこうして欲しいとかあっても、瑣末的なことで、すごくゆとりのある演奏にたいへん楽しめました。弦の鳴り管の鳴り打の鳴り、見事でした。団の方々のますますのご活躍をお祈りします。

toy**ero

2014/10/27 URL 編集返信

No title
sige君、お誘いいただきありがとう。13時30分開演、16時過ぎに終演という長いコンサートでしたが、演奏者たちは疲れを見せず、「まだまだやれるぞ」という雰囲気だったのは驚きました。昨年の「パルシファル」の長丁場もやりきったメンバーですから、鍛えられているのかもしれません。来年は「嘆きの歌」再来年からは「ニーベルングの指環」というのですから、名古屋の重要な音楽祭として定着するかもしれません。息長く続けて欲しいものです。

yositaka

2014/10/27 URL 編集返信

No title
福島章恭さんは執筆だけでなく指揮活動にも熱心ですね。ブルックナーのシンフォニーについて、「恐らくは一生振ることのない」と書いておられたのは15年前(1999年)のこと。
ところで、バッハの第3楽章のカデンツァ往年のVPOのコンマスだったロゼー父娘共演の録音(1929年)にもカデンツァが入っていて、ぼくは何の予備知識もなかったので非常にビックリしたのですが、ようやく謎が解けました。ありがとうございます

Loree

2014/11/08 URL 編集返信

No title
ロレーさん、ヨーゼフ・ヘルメスベルガーは1901年までウィーン・フィルのコンサートマスターを務めた人で、ロゼーが彼に敬意を評してカデンツァを演奏するのも不思議はありませんね。嬉しい情報ありがとうございます。それが当夜のコンサートで聞かれたカデンツァと同じものである可能性は高いと思います。1929年盤、私もぜひ聴いてみたいと思いました。

yositaka

2014/11/09 URL 編集返信

No title
youtubeで聞きました。これ、ロレーさんがアップロードされていたのですね。
素晴らしい音質で驚きました。間違いなく、このカデンツァでした!!
ライヴで聞いていた時は、いったいどうやって挿入したのかと思っていましたが…いやあ、これ、そうとう強引じゃないですか。福島さんくらいしかやろうという人はいないかもしれません。貴重な体験でしたね。

yositaka

2014/11/09 URL 編集返信

No title
いえ、あれはぼくがアップしたのではないのですが、今、見たら“Cadenza by Hellmesberger”って、ちゃんと書いてありますねまったく見落としていました(でもひょっとしたら、この音源をアップした人が後から書き加えたのかもしれませんが…)
やっぱりこのカデンツァだったのですね。調べてみたら諏訪内晶子さんもこれを採用しているそうで、ぜひ聴いてみたいです

Loree

2014/11/09 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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