石井桃子の二冊



石井桃子『プーと私』(河出書房新社 2014.1.30

石井桃子が初めて日本に紹介したA.A.ミルン「クマのプーさん」やビアトリクス・ポター「ピーター・ラビットのおはなし」をめぐるエピソードをはじめ、海外の子ども図書館事情など、単行本未収録の随筆38篇を収録。
流れるように心に入り込み、のびのびとした日本語訳が生まれた「プーさん」に対して、作者の人生に迫り、寄り添うことで、長い時間をかけて訳を完成した「ピーター・ラビット」…とくに共感を持って語られるビアトリクス・ポターの堂々たる人生には、深い感動を与えられました。
日本の子どもの本の創世記といえる戦中から戦後にかけて、石井桃子の存在がいかに重要だったかを改めて感じさせる一冊です。

 
石井桃子『新しい大人』(河出書房新社 2014.3.30

海外の子ども図書館の視察を通して生まれた「子どもたちにふさわしい図書館を」という問題意識から始まった石井桃子の活動の軌跡をたどるエッセイ集。
文庫活動で会員に配布した通信に掲載したものや、時々の求めに応じて執筆した、理想的な子どもと本のあり方、大人としてなすべきことを伝えようとした文章が集約されています。「新しい大人」とは、子どもの感性や判断力を信じ、ともに生きる姿勢を持った、石井にとって将来あるべき大人のあり方を示す言葉です。
翻訳、創作、編集、読書活動と多岐にわたった業績の大きさは計り知れないものと思いつつ、いまとなっては、石井の言う「良い本」「悪い本」の区別は、歴史的な基準といえるかもしれません。漫画や世俗的メディアへの反発心(嫌悪)をはっきり表明した文章などを読むと「ちょっと…」と思わせるところはあります。
しかし「新しい大人」のあり方が定着したとは言いがたい現状をみると、やはり石井桃子の目は鋭かった。
『プーと私』も含め、これらの文章のほとんどが今回初めて単行本となったことを喜ぶとともに、もう少し早く出されるべき本だったな…と思わざるをえませんでした。
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コメント

コメント(2)
No title
こんばんは。石井桃子さんの翻訳絵本には、子供の頃いろいろお世話になりました。
クマのプーさん、翻訳文もほんわかしてますね。ラビット「ウサギ」ピグレット「コブタ」ティガー「トラー」日本語訳名にしてたり。

ディック・ブルーナは、石井さんの訳で「うさこちゃん」と覚えたので、最近の新しい翻訳「ミッフィー」にちょっぴり違和感が出てしまうほどです。

SC

2014/10/14 URL 編集返信

No title
coraさん、ようこそ。
石井さんの翻訳のすばらしさは、時間がたてば立つほど際立ってきますね。ブルーナも「うさこちゃん」を承認していますし、ちょっぴりどころか、私は絶対「ミッフィー」なんて呼びたくありませんね。「トラー」もすばらしい訳ですよ。本書ではなかなか頑固なおばさんの一面も見せていますが、やはり石井さんなくして日本の児童文学は成り立たなかったという思いを強くしました。

yositaka

2014/10/15 URL 編集返信

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yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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