人間の血が湧き上がるブルックナー

名古屋ブルックナー管弦楽団の演奏会を聴きました。ほぼ毎年出かけていますが、
今回も充実していました。



ブルックナーの交響曲第9番の前に、ブラームスの大作、ピアノ協奏曲第2番を置くという野心的なプログラム。
プロのオーケストラでもなかなかしないことと思います。
朝比奈隆やブルーノ・ワルターは、ブルックナーの9番を取り上げるときは、これ1曲でプログラムを組んだほどですから。

しかし当夜のオーケストラは好調でした。
2曲とも一貫してしっかりと音を出し、ぴしりと引き締まった、緊張感のある音を維持していました。縦の線を合わせ、テンポも手堅いイン・テンポを貫くスタイル。
それでいて、楽員全員が情熱を込めて演奏しているので、音楽が単調になることがありません。

指揮者、森口真司が、音楽のすみずみまで掌握して、手綱を緩めずリードしていく姿も凛々しい。
先日のフィルハーモニカー・ウィーン・名古屋の演奏とは、はっきりと対照的な演奏と言えるでしょう。
短期間にこのようにスタイルの違う、それぞれに魅力的なブルックナーがライヴで聞けるとは、名古屋の音楽界も充実してきましたね。

さて、1曲目のブラームス。冒頭のホルンがしっかりと安定したソロを取るところからオーケストラの快調は明らかでしたが、ソロの田村響の演奏ぶりには、違和感もありました。
手堅いインテンポで着実にすすめるオーケストラに対し、彼のピアノは天衣無縫といいましょうか、歌いまわしがひとつひとつ粘っています。
ソロの出番になると、待ちきれないとばかりに駆け出していくのも、ちょっと落ち着きがなく、
渋くて、ちょっと「老いの繰り言」みたいなところのあるこの音楽に合っていない気がしました。
いや、ひょっとしたらピアニストは、この音楽のそういうところがあんまり好きじゃなくて、
若く生気に富んだ活力を注ぎ込もうとしたのかもしれません。
結果としては、正統派のオーケストラとの差異が目立つことになってしまった気がします。
もっとも、主席チェリストの甘い音色のソロと共演する第3楽章では、そんな田村の暴れっぷりも抑えられて、味わい深い演奏になっていましたし、
ネコパパの苦手な「諧謔のフィナーレ」も、明るく華やかな色合いが加味されて、華麗な盛り上がりを見せていたのは、祝着でした。


さて、後半のブルックナーの第9です。
第1楽章冒頭から強めの音、速めのテンポでぐんぐん進めていきます。
間を詰め、各フレーズの頭は、音をぴったりと揃えて、決然と弾き出されます。
ポイントとなるホルン、ワークナーチューバ、トロンボーンの音もまろやかというよりは鋼の強さを秘めています。
とても意志的な演奏。
テンポはほぼ不動ですが、盛り上がるところではさりげなく速めているように聞こえました。音に隙がない。
第2楽章は、スケルツォとトリオでの曲想の対比が鮮やか。
特に後者でのたっぷりと豊かな弦の歌は、そこまでがストイックな進め方だっただけに聴き手の気持ちをほっとさせるものがあります。
そして第3楽章は、冒頭から見事な感情移入。
アダージョとはいえ、ここでもテンポは速め。
どこまでも高みに登っていこうとしては、逡巡し、立ち止まり、ちょっと降りて、また上を目指す…という、まるでブルックナーの人生そのものの回顧のような曲想を、最大の共感で描き出していました。
自然や神の峻厳ではなく、まさにひとりの「人間」としてのブルックナー像が打ち出された、
見事なブルックナー演奏だったと思います。

いやあ、本当に良かった。それにしても、名古屋ブルックナー管弦楽団の技量は素晴らしい。
音の揃い方といい、弦の厚みといい、金管の音程と力強さといい、ほんとうにアマチュア??と言いたくなります。
これからも応援します。




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コメント

コメント(4)
No title
こんばんは。名古屋にこんなオーケストラがあるとは、初めて知りました~。
こんなに質の高い演奏を、近いところで、安いお値段で聴けるなんて。
後援が「名古屋大学交響楽団」なんですね。今はどれくらい、団員がいるのかなあ。

SC

2014/07/06 URL 編集返信

No title
CORAさん、コメントありがとうございます。名古屋大学交響楽団は、70年代後半から80年代にかけて、精力的にブルックナーを演奏していました。はじまりは、おそらく1976年の朝比奈隆指揮での第8交響曲。私もこの演奏会を聴きました。当時の団員たちはそのときの感激を忘れず、卒業後もオーケストラ活動を継続。
そんなブルックナー・ファンの学生たちの息の長い繋がりがこのオーケストラを生み出したのだと私は想像しています。とにかく名古屋は学生オーケストラ活動が盛んで、多くの人が卒業後も活動を続けるので、アマチュア・オーケストラの数はかなりのものです。格安のチケットで、思わぬ熱演が聞けることも少なくありません。

yositaka

2014/07/07 URL 編集返信

No title
こんにちは。亡父の蔵書?名大オケ「20年の歩み」によると昭和49年度第28回定期演奏会において 交響曲No,9(ブルックナー)指揮:山岡重信で演奏されたとあり、「金管」の人達が主体になって選曲されたようです。
熱気のあるアマチュアは、上手い下手にかかわらず良いですね。

チャラン

2014/07/08 URL 編集返信

No title
チャランさん、49年というと1974年ですね。友人sige君の情報でもそのようでしたので、起源は1974年ということになりそうですね。朝比奈さんの8番に続いて、山岡さんの5番、佐藤功太郎さんの6番…と続きました。大変意欲的なプログラムだったと思います。

yositaka

2014/07/08 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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