一枚のSPレコードから始まる物語

『星空ロック』
那須田 淳
あすなろ書房


 
本書は、2014年度の課題図書に選ばれた作品です。
那須田淳は、ネコパパが注目している作家。
今回の作品も、
 
手渡された一枚のSPレコード
幻の純正調パイプオルガン
ギターに熱中する少年
グレン・グールドのゴールトベルク変奏曲
リリー・マルレーン
菩提樹
ベルリンの町並みと歴史
少年と少女たちの出会いと別れ
そして大空に湧き上がるロック・カノン…
 
と…「猫心」をそそる題材に事欠かず、一気に読み通してしまいました。
ネコパパにとっては「同時代」のこれらの題材、現代の子ども読者にはどのように伝わるのでしょうか。アンティークか、それとも一種の「魔法の言葉」として、でしょうか。
 
枠組みは、エーリヒ・ケストナーを思わせる「謎解き」と「子どもたちの身の丈にあった冒険」を柱とした、古典的な少年少女小説です。
そして、語り口は、ライトノベルを読みなれた世代を意識してか、てきぱきと無駄なく進められるもの。
登場人物のきっちりとした性格の描きわけや、生き生き弾んだ会話のやり取りも、読ませます。
主人公レオは、4日間のベルリン滞在で、さまざまな事件に出会い、人に出会い、戦争の時代に起きた悲劇や現代の家族の問題、移民に対する偏見などの社会の抱える重い課題にも出会うことになります。

いつも思うことですが、この作家は「語りたいこと」をほんとうにたくさん持っていますね。
そのために、展開がいささか走りすぎの感じがするのが、ちょっと惜しい気がしました。4日間ではなく、一週間くらいの話にしたらよかったのに…
 
サイトを検索してみたところ、本書は新聞記事にも大きく取り上げられたようです。
以下、記事からの引用です。


 
使命をドイツに向かう少年の物語 那須田淳さん『星空ロック』
産経ニュース「聞きたい」2014.2.16 15:00

 
 
明治期、森鴎外とともにドイツに渡り、ベルリン大学に留学、当時のドイツ皇帝ヴィルヘルム2世の依頼を受けて世界初の純正調パイプオルガンを製作し、演奏した日本の物理学者がいた。田中正平(1862~1945年)という。普通のオルガンやピアノは1オクターブ(ドから1つ高いドまで)の間を12の音に分けているが、純正調のほうは46の音が連なっていて、現在の平均律の和音に比べると濁りがなく、明るく透明な音が出るという。しかし、作るのはおそろしく高度な技術が要求される。
 
 「どういう人なんだろうと思い、調べ始めるとともに、ノンフィクションではなく小説で現代の少年少女たちに、何かもう一つ別のメッセージを伝えることができたなら」と思ったのが執筆のきっかけだった。
 
 主人公は中学2年で14歳の少年、立花玲音(以下レオ)。夏休みに、家族3人でドイツを旅することになっていたが、先に出発していた父親が旅先で急病を患い、看護のために母親が出発を早めてしまった。レオは生まれて初めての一人旅でベルリンに向かうことになる。音楽好きで、ロックのギターを独学してきたレオには、日本で親しくなった年齢の差が70以上もあって、いまはもうこの世にいない友人「ケチル」に託されたひそかな使命があった…。
 
ドイツに家族を置き、1年のうちの半々を日本とドイツで暮らしている著者ならではの、ベルリンを舞台にした青春小説だが、両国民の大きな違いは「伝統を大事にするドイツ人に対して、常に新しいものを追いかける日本人でしょうか」と即答する。もともと「作家として国際的な感覚をもって、海外から日本を見たい」という意識から出発したドイツ生活だったが、本作品にはその成果が十分に表れている。両国とも若者の活字離れは顕著な傾向のようだ。「ゆっくり本を読む時間を作ってほしい。自分の周りの世界がきっと見えてきます」
(あすなろ書房・1470円)宝田茂樹



 
【プロフィル】那須田淳
 
 なすだ・じゅん 昭和34年、静岡県生まれ。早稲田大卒業。平成7(1995)年から独ベルリン在住。『ペーターという名のオオカミ』で産経児童出版文化賞、坪田譲治文学賞。著書はほかに『一億百万光年先に住むウサギ』『願かけネコの目』、M・ゾーヴァとのコンビで画文集『少年のころ』、翻訳書に『新訳飛ぶ教室』など多数。現在、青山学院女子短大非常勤講師を務めている。
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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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