熱き奔流の音


Bird & Diz
Charlie Parker/Dizzy Gillespie
チャーリー・パーカー/バード・アンド・ディズ

1.ブルームディド
2.メランコリー・ベイビー
3.リラクシング・ウィズ・リー
4.パスポート
5.リープ・フロッグ
6.アン・オスカー・フォー・トレッドウェル
7.モホーク
8.ヴィザ 

■Original Release: 1950
■チャーリー・パーカー(AS) ディジー・ガレスピー,ケニー・ドーハム(TP) セロニアス・モンク,アル・ヘイグ(P) カーリー・ラッセル,トミー・ポッター(B) バディ・リッチ,マックス・ローチ(DS)
■ Verve

伝説的なアルト・サックスの名手、チャーリー・パーカーの作品。
いまのところ、私にとって、彼の演奏がもっともストレートに伝わってくるアルバムだ。

先日、自宅で友人たちとともに三人で楽しんだ鑑賞会で、特に印象的だったひとこまがある。
これまた伝説的なチェリスト、ジャクリーヌ・デュ・プレの弾くドヴォルザークのチェロ協奏曲(1967年、ストックホルムでのライブ盤)を聴いたときのこと。
オーケストラだけの長い序奏部に続いて、デュ・プレが弾き始めたソロを聞いて、
みな口々に「これはパーカーだ!」と感嘆の言葉を漏らしたのである。

音を整えるとか、正確な音程とか、楽譜とかを超越してしまったかのように、ひたむきに大きな音で、情熱のおもむくまま、奔流のようにあふれ出るその響き。
二人の演奏には、楽器やジャンルを超えた、共通のものが確かにあるのだ。

パーカーの克明で強靭な音の輪郭、前のめりに疾走し、さらにスピード感をましていくような高揚感、
そしてバラード演奏に見られるあふれんばかりの歌心。
本盤『バード・アンド・ディズ』では、それをかなり鮮明に聞き取ることができる。

熱く豊かな歌心をふんだんに聴かせる『メランコリー・ベイビー』、
ガレスピーと激しい掛け合いを繰り返しながら、疾走の頂点に達する『リープ・フロッグ』。
これを聴くと、パーカーが、自分ひとりではなく、ディジー・ガレスピーと一丸となって、真摯な努力を重ねることによって
前人未到の“ピバップ”と呼ばれるスタイルを確立していったことが、音の姿として納得できる。
単に即興のひらめきが生み出した業ではない。
それは、この曲だけで11回ものテイクを重ね、まさにその最後のものが『マスターテイク』となっていることからもわかる。

若きセロニアス・モンクのピアノも聴きもの。
バッキングは意外にオーソドックスで、音数も多めなのに、ソロに入ると瞬時に少ない音で勝負する独自のスタイルに変化する。『リラクシング・ウィズ・リー』のソロは、自作の『ウェル・ユー・ニードント』そのものではないか。

このCDのよさは、別テイクを一曲も収録していないこと。
同曲別演奏が続けて収録されるのは、パーカーの多くのディスクの特色で、「それぞれ違ったよさ」は当然あるのだろう。しかし、私にはマニアックに感じられる。『愛聴』より『研究』向けのアルバム作りだと思う。その点本盤は潔い。
かわりに、49年録音のケニー・ドーハムとの二曲『パスポート』『ヴィザ』が収録されている。迫力に満ちた演奏だが、音のとり方は違う。
音塊のごとく押し寄せる荒々しい響きの49年録音に対し、50年録音は各楽器がよくピックアップされ、鮮明である。だが、モンクのピアノは、バックのときはごく小さく、ソロのときは大きくなる。その変化の極端さには創成期のハイファイを作り出そうとするエンジニアの苦闘すら想像させる。

熱き男たちの、熱き奔流の音楽。
 

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コメント

コメント(5)
No title
今日は。先回の会は期せずして(いや、期してだったかも知れないが)デュオの深みを味わうことができ、とてもよかったと思います。
バーブ録音は、やはり音がよいので安心して聞けますよね。さて、掲載されているジャケットを見ておやっと思ったのですが、僕が持っている「bird and diz」MV-1104、30センチ盤は、鯨幕の前でパーカーとがレスピーが寄り添って写っているやつです。で、油井正一氏解説に「私が持っているクレフの25センチLP……余白にドーハム…などとやったセッション2曲《カードボード》、《ヴィザ》を収録…」と書いてありますが、手持ち盤にはこのドーハムセッションが入ってません。YOSHITAKA氏所蔵盤は、オリジナルに近くなったものなのですね。学生時代に聞いた音を思い出しながら書いていますが、生き生きとしたモンクの演奏が印象的な盤でした。

sige

2008/10/28 URL 編集返信

No title
続きです パーカーは、「自分が気持ちよくなると、アレを人前でわざと割っちゃったり」と、悪魔の権化みたいな人でしたが、YOSHITAKA氏が述べた「真摯な努力を重ねることによって前人未到の“ピバップ”と呼ばれるスタイルを確立し…単に即興のひらめきが生み出した業ではない。それは、この曲だけで11回ものテイクを重ね、」という面にこそ、命を賭けたジャズへのこだわりに生きた人の真骨頂が見えるのです。

sige

2008/10/28 URL 編集返信

No title
そう!モンクの参加が気になりながら別テイクが多いため入手を敬遠していたのです。ところが何年か前に「デビット・ストーン・マーチン10インチコレクションという紙ジャケットのシリーズで出ていたのを偶然発見。
聴くとたった25分の収録で何だこれは、と思ったのですが、その後10インチ盤というものの重要性を知り、納得できました。
先日聞かせていただいた4曲入り7インチ盤を聴いたときも思ったのですが、一つ一つを大切に聴く、という意味では過去のこうしたフォーマットには大きな利点があったと思います。80分のCDを真剣に聴けといっても、無理ですよね。

yositaka

2008/10/29 URL 編集返信

No title
やあ、こんばんわ。お2人のトークを読み、こちらも参入(笑)
yosiさんが言うように、80分のCDを集中聴きするのは難しいでしょうね。その点、片面20分の12インチ(30cm)LP、15分の10インチLP、そして、7分のEP・・・僕など古い盤が集まるにつれて、だんだんとそういう昔のフォーマットが妙に性に合ってきてしまって(笑)もう少しこの傾向が進むと・・・3分間芸術のSP盤にまで行ってしまいそうで怖いです(笑)それはともかくパーカーの10インチ盤も、その大本の音源はSP盤だろうから、その頃の時代だと、とにもかくにも1曲の演奏を3分間に詰め込もうとしたはずなので、その分、中身が濃いわけですよね。その一端が、yosiさん、sigeさんの感じ入るところの「リープフロッグ:11テイク」なんでしょう。
ああ、僕の方も久しぶりに「パーカー/モンク共演盤」聴いてみよう!

bassclef

2008/10/29 URL 編集返信

No title
いいコメントをありがとう。
3分は決して短い時間ではないと思います。中身しだいですね。でも、3分越えと3分以下ではずいぶん違うと感じます。『サヴォイ・マスターテイクス』に含まれている『ナウズ・ザ・タイム』は3分15秒で堂々たる完成度。しかし、他は2分台が多くて、かなりじれったい気がします。ぎりぎりいっぱいの収録時間で勝負してほしかったなあ。
クラシックなら、12インチの組み物が多く、枚数かさむ大曲もかなり録音されていました。ジャズだってライヴなら長い演奏が行われていたはずで、それを思うとかなり残念ですね。

yositaka

2008/10/31 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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