いまだ枯れぬ生命の水


LEE KONITZ/RED MICTHELL  I Concentrate On You
リー・コニッツ&レッド・ミッチェル/アイ・コンセントレイト・オン・ユー[+3]
■Lee Konitz ( Sax (Alto) ) Red Mitchell ( Bass  Piano )
■Ivar Rosenberg ( Engineer ) Nils Winther ( Producer )
■Original Release: 1974
■STEEPLECHASE

1. Just One Of Those Things
2. Just One Of Those Things(take7)
3. Easy To Love
4. It's Allright With Me
5. Everytime We Say Goodbye(take1)
6. Everytime We Say Goodbye
7. You'd Be So Nice To Come Home To
8. Love For Sale
9. In The Still Of The Night
10. Night And Day(take1)
11. Night And Day
12. I Love You
13. I Love Paris
14. I Concentrate On You

Bassclef氏のブログ「夢見るレコード」では、チャーリー・パーカーの演奏の本質に迫るレビューが掲載されていて、
http://bassclef.air-nifty.com/monk/2008/10/26-8c3f.html?cid=33637726#comment-33637726
大きな感銘を受けている。モダンジャズにおけるアルト・サックスの第一人者といえば、まさにこのパーカーだろう。

しかし、私が長く聴き親しんでいるのは、アート・ペッパーと、このリー・コニッツ。

最初の出会いは友人宅で聞かせてもらった『サブコンシャス・リー』で、古い録音にもかかわらず、異様に新鮮な音楽で、ジャズというより先鋭な現代音楽を思わせるものがあった。
中でもコニッツのアルトは澄んだ透明感と鋭い瞬発力を秘め、極地の洞窟に生成する氷柱のような冷たき狂暴性を感じさせた。
ジャズ用語で言う『クール』とは、決して熱情を抑え、取り澄ましたものではなく、触れれば電撃の走るようなクールさと知らされたものだ。
そのコニッツが、べーシストのレッド・ミッチェルと競演したアルバムがこれである。『サブコンシャス・リー』から二十数年、彼のアルトは大きな変貌を遂げていた。
1953年にヴォーグに録音された『You'd Be So Nice To Come Home To』が手元にある。『サブコンシャス・リー』から4年後の演奏で、氷柱のようなクールな響きは健在だ。歌うよりは直進する音楽の魅力が際立つ。
しかし、それから20年たった本盤では、音色のクールさは維持しながらも、語り口は変わっている。
ところどころに感じられる音の掠れ、息遣いの音、強まったヴィヴラートが、ある苦味となって聞き手に伝わってくる。
豊かに歌うスタイルではなく、音の跳躍や変化で語る奏者であるだけに、
こうした変化を衰え、と見ることも可能かもしれない。
しかし、年輪を重ね、辛苦の跡が刻まれた「語る音楽」は、鋭い氷柱の音楽にはない味わいと魅力を持ち、聴き手の心を、静かな場所に誘うのだ。そこはくつろぎの場でもあり、いまだ枯れぬ生命の水を味わう場でもある。

この曲で、ミッチェルはスキャットで歌いながら楽しげに、大いに乗って、ベースを奏でる。彼はヴォーカルアルバムも出すほどの人だから、その声もとても魅力的だ。
つねに共演者を前面に出して、自分は脇に回ることが多いミッチェルだが、本盤は違う。どの曲でもコニッツにまったく遠慮せず、強靭で多彩な演奏を聴かせる。

『Everytime We Say Goodbye』ではギターの爪弾きのように優しく。
『Love For Sale』では打楽器のように軽やかにリズミカルに。
そしてアルバムのクライマックスである『I Concentrate On You』では、Bassclef氏のいう『歌の呼吸』が最高に発揮された、長大なソロを聴くことができる。

ジャケット裏面には、二人のツーショット写真が載せられている。
コニッツは長身でひげ面のミッチェルに、もたれ掛るような姿勢で、笑顔を浮かべて寄り添っている。ミッチェルは得意満面の表情だ。
そう、ここにあるのはまさに、こんな音楽。この写真を表紙にすればよかったのに。

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コメント

コメント(2)
No title
yositakaさん、こんばんわ。残念ながら、このレコードは未聴です。
>音の掠れ、息遣いの音、強まったヴィヴラートが、ある苦味となって聞き手に伝わってくる~
なるほど・・・僕の方、後期コニッツの「サウンド」に今ひとつ馴染めないこともあってか、yositakaさんのこの「苦味」という表現がよく判ります。でもこの記事を読むと、ベースのレッド・ミッチェルを聴いてみたい・・・と思わされます。ミッチェルの「歌」も聴けるとのこと、ベースの人って、(そのセッションに)ひとたび乗ると、止まらないからね(笑)

bassclef

2008/10/22 URL 編集返信

No title
bassclef君、コメントありがとう。
いやあ今日はsige君と三人で音楽三昧、大いに楽しみましたね。
このCDも聴いてもらい、魅力を存分に感じ取ってもらえ、とてもうれしいです。
期せずして「デュオ」がキーワードとなった鑑賞とおしゃべりのひと時でした。ジャズの世界では傍流と見られがちなデュオ演奏ですが、こうして聴いてみると、奏者にとっては一度は挑戦してみたい、あるいは満を持して挑戦する、そんな演奏機会なのではと感じた次第です。
今日聴かせていただいたレコードは、いずれもすばらしいもので、中でもジミー・ブラントンとエリントンとのデュオは最高の聞き物でした。
半世紀の時間を軽々と飛び越えてしまうこの新鮮さは、いったい何なのでしょうか。

yositaka

2008/10/25 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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