ターリヒの歴史的ライヴ『わが祖国』

スメタナ:『わが祖国』全曲
ドヴォルザーク:スラヴ舞曲第2集 



ヴァーツラフ・ターリヒ指揮
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
ラジオジャーナル管弦楽団 193965日ライヴ(2CD)
SU4065 チェコ・スプラフォン

 
これは、ネコパパのプラハ旅行みやげの音盤。
1968年の「プラハの春」ソ連侵攻事件で戦車隊が乗り入れた、あのヴァーツラフ広場に面したレコード店で購入しました。
ターリヒとチェコ・フィルは、同曲を3回レコーディングしているそうですが、これはそれらとは別のライヴ盤。
193965日、前年のナチス・ドイツの強圧外交によるチェコスロヴァキア共和国崩壊、315日のドイツのチェコ併合直後という情勢下で行われた演奏会です。会場はチェコ国民統合の象徴、プラハ国民劇場。中継放送がノルウェー放送協会によって記録されていたとのことです。

日本でも購入できますよ。http://tower.jp/item/2996675/
 
このような歴史的背景抜きには語れない演奏です。
ですが、音楽それ自体として聴いても、やはり「渾身の演奏」。
この曲は、オーケストラにとっても体力勝負なのでしょう。多くの演奏は前半は抑制し、後半を盛り上げる。
だから聴きものの「ヴルタヴァ(モルダウ)」が、意外に速くあっさりと演奏されていることが多い。
でもこれは違います。冒頭の「ヴィシェフラド」前半こそ、様子を見ながら進めている感じもありますが、後半はもう全員が思いのたけをぶつけるように弾いている。「ヴルタヴァ」も、大きく歌い上げるというよりも、一音一音噛んで含めるような血の通った語りかけ。「シャルカ」以降は、鋭いリズムとアクセントの聴いたフレーズが新鮮そのものです。
普通は、テンポを速めて盛り上がる「ターボル」「ブラニーク」も、苦渋をこらえるように遅く進めていくところが多い。その一方で、大きな緩急をつけ、音のドラマを強調したりする。
まるで起伏にとんだ深山に分け入っていくような趣の演奏です。

チェコ・フィルの音というと、ソリッドな弦の響きを核とした、引き締まった響きを連想しますが、ここでは分厚く、気迫のみなぎる高カロリーの音を出しているように聞こえます。
これが録音のせいなのか、当時のターリヒとチェコ・フィルのスタイルなのか、セッション録音を聴いたことがないネコパパには、ちょっとわからないのですが…一度限りの特別な演奏会、という歴史的背景が成した響きなのかもしれません。

一曲終わるたびに、怒涛のように湧き起こる拍手。
全曲終了後、聴衆から自然発生的に湧き上がるチェコ国歌。
まさにこれは、音楽に留まらない、歴史の断面が収められたドキュメントです。
 
録音には「フィリップス・ミラー・オーディオレコーディングシステム」という、光学録音機が使われたそうです。
もしかしたらそれは、30年代のメンゲルベルク指揮コンセルトヘボウ・ライヴで鮮度の高い録音を残した、あのシステムでしょうか。
これは、中継された音を録音したという間接的な録り方なので、驚異的な音質とはいきません。が、当時のライヴ録音としてはかなり良好です。
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yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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