8月10日、bassclef君、sige君、ネコパパ3人で恒例の聴き会です。
1年ぶりにお邪魔したbassclef君の部屋は、あいかわらずレコードがいっぱい。
ですが、心なしか前回よりすっきりした印象が…
その理由は、レコード棚からCDが完全撤去されたんですね。といっても、売り払ったわけじゃなくて、コンパクトな収納ケースに収めて、まとめて積み上げてあるのです。ますますLPに特化しつつあるなあ…
さて聴き会が始まりました。。
初めはsige君の持ち込んだLPから話題が出て、渡辺貞夫。
彼のデビュー盤となった1960年のKING盤や、1967年厚生年金会館での「ボサノバ・コンサート」(コロムビア)を聴きました。
60年代のボサノバは、リズムがきつくて、音もとがっていて、いかにも洗練されていません。大学時代に耳にした「カリフォルニア・シャワー」や「モーニング・アイランド」のスマートさとは一味違うんです。でもそこがまた、若さの魅力というか。
つづいて、アル・コーン。
地味なテナーサックス奏者ですが、最近ネコパパがヴォーグの復刻盤を何枚か手に入れて、その歌心のある演奏に心惹かれていたところでした。
Dawn盤の「コーン・オン・ザ・サクソフォーン」
Savoy盤の「プログレッシヴ・アル・コーン」
いずれも50年代の録音ですが、古さを感じません。アル・コーンは、同じテナーサックスのスート・シムズとのダブル・テナーの相方として有名で、デュオでは低音が得意なズートに対して涼やかな高音担当というイメージ。でも、彼がリーダーの時はもう少し音域も自由さも広げて、楽々と歌っているのが魅力です。
続くは、おなじみセロニアス・モンクの「ソロ・オン・ヴォーグ」
以前オリジナルの7インチEP盤をやはりここで聴かせてもらって、芯のある音に驚嘆したものですが、
今回はヴォーグ初期の12インチ盤。デザインはEPと同じなんですが、これまたすごい。まるで昨日録音したみたいに、ピアノの振動が伝わるくらいの音です。
「ラウンド・ミッドナイト」「煙が目にしみる」…sige君も「鳥肌ものだ」と呻いていました。
やはりこれは、ジャズに留まらない、人類の音楽遺産ですね。
マイルス・デイヴィス。
「マイルス・イン・セントルイス」という1963年のライヴです。
レーベルはVGM。ブートです。音質は、まあまあかな。
「やっぱり・サックスのジョージ・コールマンが普通すぎるね…」なんて勝手なことを言い合っていました。でもこのころのマイルス、サックスの個性が不足する分は自分でカバーしようとしているのか、長いフレーズをどんどん繰り出してくるエネルギーに圧倒されます。トニー・ウィリアムズのドラムスが炸裂。名盤「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」とも聴き比べました。
曲はsige君、bassclef君の演奏レパートリーでもある「オール・ブルース」です。
マイルスの次はスタン・ゲッツ。
bassclef君熱愛のジャズの巨人たちが、次々に出てきます。
ノーグランの10インチ盤「インタープリテーション」
同じく「アット・ザ・シュライン」
bassclef君架蔵のものは、7インチ盤のボックス・セットという渋いもので、ジャケット・デザインも素晴らしい。
これについては、大学時代sige君に薦められてCDを買ったものの、あんまりわからなかった…という思い出があります。
でもこうして「ポルカ・ドッツ・アット・ムーンビームス」を聴いていると、バルブ・トロンボーンのボブ・ブルックマイヤーとゲッツのブレンドした響きが何とも味わい深いのです。学生時代のネコパパは、この「濁った感じ」にはあまり親しめなかったのですね。
年を取るとわかってくるものがある…
ネコパパ贔屓のベーシスト、レッド・ミッチェルも聴きました。
ネコパパが見つけてきた「レッド・ミッチェル・ウィズ・カーリン・クローグ」は、メロディーを崩した独特の語りのようなヴォーカルは、かなり好みを分かつものの、ミッチェルのベースは流石…
ハービー・ハーパーら地味なメンバーを起用した「ファイブ・ブラザース」という、これまた地味なTANPAレーベルの1枚も、ミッチェルが入っているだけで抜群の弾み感を生み出しているのがわかります。
名盤にミッチェルあり…
つづくはアート・ペッパー。
1956年を境に、天衣無縫な音色が内面的な暗さを湛えるようになったペッパー。
その境目あたりの作品を聞きました。「ザ・ウェイ・イット・ウォズ」から「枯葉」「恋の溜息」…味のある、でも56年までの、モーツァルトのような天衣無縫の音色とは違う響きでした。
この変化は本人にコントロールできるものではなく、まさに天が彼に与えた、一瞬の輝きだったのでは…という気がしてきます。
リー・コニッツも。
「サブコンシャス・リー」と呼ばれるように、後にはなった音源。これがオリジナルのプレスティッジ10インチ盤です。
コニッツ、マーシュ、トリスターノ、
一度きりの絶品「火傷する冷たさ」のアンサンブル。
ジャケットもクール。黄色地に文字だけのデザインは、ドイツの音楽史研究レーベルだったアルヒーフの初期の盤を思い出させます。
しめくくりはフリップ・フィリップス「コレイツNo2」
この地味なテナーサックス奏者にbassclef君は思い入れを持っていて、同じ音源を7インチ、10インチ、12インチで所有するという入れ込みようなのです。
またそのジャケットが、味わい深くて美しいものが多いのですね。音楽が伝わってくるといいますか。
これはネコパパがあれこれ言うより、名ブログ「夢見るレコード」から、引用したい。
bassclef君の思いのあふれ出るフレーズです。
フィリップスの「唄い」には・・・実に独特な味わいがある。全く力まない感じの自然な息の吹き込み、ストレスのない自然な音の出方、そして柔らかなフレージング。
フィリップスが吹くと・・・まるで、さわやかな風がすう~っと吹いてきたような・・・そんな感じなのだ。
この感じは・・・そうだ、あの「屋上写真の心地よさ」と、同じような雰囲気じゃないか(笑)
…曲の持つ「ちょっと寂しげで、儚(はかな)いような・・・そして、ふっと自分を嘲笑するような」感じ・・・そんな情感みたいなものが、フィリップスのテナーから、ぼろぼろとこぼれ落ちてくるようだった。
ちなみに「屋上写真の心地よさ」とは、このジャケットです。
コメント
さて、拙宅での真夏の3人集まり。ほぼ毎年の恒例となってきました(笑)いつも企んだわけではないのに、何かしら「テーマ」に沿った流れ・・・みたいなものが生まれてきて、3人自画自賛ながら、なかなかいい聴き会になったなあ・・・と思い返しております(笑)
今回も素敵なドキュメント記事にまとめてくれて、many many thanksです!
≪名盤にミッチェルあり≫はホントにそうですね!これは何も比ゆ的な表現ではなく・・・ミッチェルのベースはその音量豊かさ、ビート感のしなやかさをもってバンド全体を乗せてしまうのでしょうね。だから結果としてその演奏(レコード)は名盤になる・・・ということかもしれません。
bassclef
2013/08/21 URL 編集返信またyositakaくん宅、拙宅と、時々、集まりましょう!
追伸~フリップ・フィリップスのこと、拙ブログの紹介、抜粋・・・感謝です。
bassclef
2013/08/21 URL 編集返信yositaka
2013/08/22 URL 編集返信