アイヴァー・ボルトンのモーツァルト

現代楽器によるピリオド・アプローチ




 
モーツァルト:交響曲第38番ニ長調「プラハ」&40番ト短調

ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団
指揮: アイヴァー・ボルトン
録音:2004年3月24,25日 ザルツブルク、モーツァルテウム 大ホール
CD (2004/8/25) OEHMS CLASSICS
 
 
ネコパパはモーツァルトの『プラハ』交響曲を偏愛している。
ブルーノ・ワルター、カール・シューリヒトの音盤で、その魅力を教えられて以来、ずっと。40年聞いても鮮度を失わない音楽だ。
しかし、この曲は、大指揮者の演奏でなければ愉しめない曲なのかと言えば、それは違うと思う。
多様なアプローチに耐えうる、器の広い音楽だ。
対位法を生かした立体的な曲の構成、ちりばめられた各楽器の複雑な動きの面白さと音色の多彩、そして全体を彩るそこはかとない哀愁…モーツァルトの天才をもってしても、人生ただ一度の出来ではないか。
 
さて、当盤の指揮者、アイヴァー・ボルトン。
彼は、バロック・オペラ演奏の経験を生かし、現代楽器のオーケストラにピリオド・アプローチを採用している。
確かに、昔ながらのモーツァルテウム管弦楽団の音を予想すると、ずっとスリムで切れの良い響きにおどろかされる。ところが、意外に抵抗がないのだ。
テンポは中庸で、ゆったりと自然に変動する。歌のある流れには、19世紀的なロマンテイシズムさえ漂う。
最近流行の、展開部以降も含めたしつこい繰り返しも、避けている。
古いタイプの演奏が好きな人でも、これなら抵抗なく受け入れられそうだ。

研ぎ澄まされた澄んだ響きは、人数を絞った弦と、ヴィヴラートの抑制によるものだろう。
よほどうまくコントロールされているのか、古楽器系演奏ににありがちな、フラットに減衰する、ガラスを擦るような癖音が出ないので、安心して聴くことができる。
面白いのはボルトン独特の節回しと思われる、突然のピアニッシモから一気にクレシェンドする濃い表情が、あちこちで聴かれること。
聴いていてハッとさせられる箇所が多い。

「プラハ」では木管楽器やティンパニを要所で突出させる、華やかな演奏を生み出している。各楽器の絡みの鮮明さも快感だ。
ただ、この曲の特色である立体的な構築感を示すには、オーケストラの厚みがちょっと足りなくも思う。第1楽章の展開部から再現部にかけての「曲の心臓」では、巨匠たちの表現をつい思い出す。
「第40番」は、さらに感情表現に重きを置いた仕上がりだ。例の「突然のクレシェンド」を随所に入れて、内面のときめきを表出している。
やはりこの曲は、淡々とした表現は似合わない…フィナーレは、あと少しだけ加速して、切迫感を高めてほしいと感じたけれど。

 
「ボルトンが首席指揮者に就任する直前に録音された、モーツァルトの交響曲シリーズ第2弾…」とアマゾンでは紹介されている。
これはオーケストラが主役のシリーズで、第1弾は音楽監督のユベール・スダーンの指揮。購入の際は要注意…
ちなみに第3弾は、同じくボルトン指揮、ペーター・シュミードルのソロによるクラリネット協奏曲も加えた、第36番『リンツ』と第41番『ジュピター』の組み合わせ、2枚組。
こちらもすばらしい演奏だ。
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yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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