北村肇講演会
「原発という犯罪~メディアはなにを伝えたか~」
4月某日、名古屋にて。
『週刊金曜日』の代表をされている北村さんの講演を聞くのは二度目。
前回以上に具体的で、鋭い指摘がなされました。事故後の現状から始まり、戦後政治の裏舞台に至る90分。小さな会場はほぼ満席でした。平日の夜ということもあり、年配の方々が中心だったのは惜しいことでしたが…
以下、ネコパパのメモから。
なお後半の「裏事情」の個所では、概略のみ紹介にとどめました。
ネコパパの知識及ばぬ部分が多いため「受け売り」は避けます。まずは勉強しなけりゃ。
放射能汚染の現状について
今日は福岡から飛んできました。
福岡では公園で人々が雑草を刈り取っているのをみて、反射的に鼻や口を押えてしまう。
東京では、危険行為なのです。
もう3.11以前の体験はできなくなったな、とつくづく思います。
東京電力と政府は、最近は関係ないような顔をしています。終わったことのような顔をしています。でも、何も終わってはいません。
配電盤にネズミが入り込み、原発への注水が停止した事件。
ネズミが入り込むのも当然です。配電盤が、まだ仮設なんですよ。
汚染水の大量漏れも起こりました。報道ではよくわかりません。セシウムはすでに除去できているというが、本当なのか。タンクにはすでに2万2千トン、プールの容量は2万7千トンの汚染水。もう行き場がありません。どうするのか。
結局、海に流してしまうつもりではないのか。
アメリカからIAEAのレンティホフが廃炉視察に来ました。メディアへのコメントは「今最大の課題は汚染水」です。
私には、疑わしい。
衆目を汚染水に惹きつけたいのでは、なにか「別のこと」があるのでは、という気がします。
根拠なしの直観ですが。でも、私の直観はよく当たります。特に悪いほうのは…
甲状腺がん、10人発見というニュース。
3万8千人中です。
原発事故が原因ではないとのことです。そうでしょうか。
がん発生の確率は100万人にひとりとされているのですから、異常と考えるのが普通でしょう。
しかしこの国の人は、普通じゃないのでしょうか。
メディアも「これは大変」と騒ぐかと思ったら、大きく報道されることはありませんでした。
毎日新聞の報道で、検査の問題点を指摘していました。
一般に甲状腺がんの検査項目は12。ところが今回はそのうち8項目しか実施していなかった。北海道がんセンター教授のコメントによれば「ごく簡易的にみる検査にすぎない」とのこと。
それで10人です。
北海道大学の調査によれば、福島周辺では、アブラムシが葉に作る「ムシコブ」と呼ばれる痕跡に、大きな異常が見つかっているとのこと。川魚にも100ベクレル以上の汚染が各地で見つかっています。
今年捕獲のイノシシ50頭では、平均55ベクレルの汚染。最高値は200で今年捕獲のもの。
放射能汚染はこれからが怖いのです。
文科省が今年3月1日に発表したデータがあります。
福島原発半径80キロ圏内の空間線量です。
2011年11月に比べて40%減少、というのですが、よく見ると福島市内で1.9から2マイクロシーベルトの地区が点在しているとわかります。圏外でも、茨城で1マイクロシーベルト超えの地区がありました。群馬でも2マイクロシーベルトのところがある。
国の立入禁止基準は、0.6マイクロシーベルトですよ。
北関東ではまだそういう危険地域が点在しています。
そこに人々は、今も普通に暮らしています。子どもたちも!
このデータは、東京新聞だけが報じていました。
おそらく文科省は正式な記者会見も行わず、ペーパーだけで出したのでしょう。
「発表はほんとうのことは言わない。でも、完璧な嘘も言わない」
そんな官僚の狡猾さが感じられます。
同日の東京新聞では、二本松市の小動物のセシウム量も報じられています。
カエル2397~6732ベクレル。サワガニ2800ベクレル。
安全基準は、これでも高すぎますが…100ベクレルです。
政府は風評被害を慮って、食品検査も減らしていく方針を出しています。
でも風評被害より、汚染被害がもっと心配じゃないでしょうか。
福島では、学校の先生方が悩んでいます。
子どもたちの周囲の汚染が心配です。そのことも教えたい。剥がされた土が積み上げられた運動場で活動している子どもたちも心配です。
しかしそれを口にすれば、校長からも、いや保護者からも叱られる。
地域全体がそのことを口にしない。
住民に「安全と思い込みたい」空気が広がっている。でも、責めることはできません。
そうした空気の存在もふくめて、全員が被害者と考えたいのです。
原子力規制委員会による原発再稼働審査、活断層問題も明かになりつつあります。
委員の多くは、推進派でしたが、
でも、よくない動きもあります。いいかげんな検証を言い募り、稼働を正当化する専門家を起用して、反論してくる心配も…
浜岡原発、六ヶ所再処理施設は、危険な個所であることが明らかになってきました。安倍政権はそれでも否定の方向に持っていこうとしていますが…
大飯原発の再稼働も、原子力規制委員会の田中委員長は「ギリギリ譲った」と言っています。
これは「圧力によって自民党に譲った」と読み取るべきでしょう。
福島原発事故の原因について
原因は、地震の可能性も高い。
地震直後に配管破裂。
福島原発の原子炉設計にも携わった田中光彦氏は、津波到達前、地震直後に原子炉から水が出たと検証しています。
また、政府の発表した津波到達時刻と、田中氏の解析したそれは、2分のずれがあります。
解析が正しいとしたら…
国は、どうやら実際よりも早く津波が到達したことにしたいのかもしれません。
もしも地震が事故原因ということになれば、日本にある原発はすべてアウトですから。
原発とカネと政府の思惑について
復興特別税。
5年で19兆円かかるうちの10兆円を政府は税金で賄うことに決めました。2013年1月から、所得税に2.1%上乗せです。必要なことなら、と思いますが、現実はどうでしょう。
がれき広域処理に1兆円。「検討します」といっただけで自治体に176億円渡しています。そのお金で税務署を新築した自治体も。これでは、火事場泥棒のようなものです。
もともと、原発とは「そういう人たち」にとって、金のなる木でした。
私たちメディアや新聞社も、実は、儲かった側だった。
世間で一番力を持つ人々にとっての金のなる木…それが原発という事業でした。
安倍政権、何と支持率70%です。
ここには支持者、いませんよね。
私の知人にもひとりもいません。なぜ?反原発運動への圧力が高まりつつあるのが心配です。逮捕者も出ている。これについては、東京(中日)新聞、毎日新聞は書き、朝日新聞は書いていません。
新聞はある種のセクトの動向は全く報道しないという暗黙の了解があります。もしも反原発運動や経済産業省のテント村がそうした政治活動がらみと判断されれば、メディアからは無視の対象です。まっとうな市民運動への圧力をすべての新聞が報道するなら、官僚は何もできないはずなのですが。
アメリカとの関係
ロシアは今、日本に天然ガスを売りたい。首脳会談でも、ロシアは日本の顔色を窺っています。アメリカのシェールガス開発の影響です。アメリカの天然ガス需要が国内で賄われることになれば、ロシアは買い手を失うことになりますから。
外交とは、エネルギー問題です。
かつて日本が濃縮ウランを大量に購入し、原発推進の引き金となったのも、外交関係によるものでした。
当時日本は日中国交回復を目論むために、アメリカの顔色を見、利用のめども立っていない濃縮ウランの購入に走ったのです。
アメリカは日本に核を持ち込みたい。その一方、傘下に収めたいため、核武装はさせたくない…日本政府の水面下で進行していた核武装への動きと、アメリカの疑惑の交差…今も謎が多い部分です。日米関係と核の問題はメディアが今後追及すべき課題です。
東京新聞は、この問題でも取材を進めている様子です。
ことしの3.11の新聞記事
新聞によって、記事の扱いは、大きく違っていました。原発を大きく扱う新聞もあれば、まったく書かない新聞もある、という具合です。
日本のメディア、そこで働く有能な記者は、やりにくくなっています。
3.11当日、現場からは日本の記者がいなくなり、外国人記者ばかりが残った。
被害者の住民は、そこにいたのです。これでジャーナリズムといえますか。でも記者も、取材を続けたくても、本社の指示ならば従わざるを得ない。
このときの反省は、残念ながら今のメディアから読み取ることができません。
自民党の憲法草案。憲法が権力を縛るものから国民を縛るものに変わっている。
とんでもないことです。安倍さんは実際、憲法を読んでいないのではないかと感じられます。
自民党が政権を取ったのち、首相となった安倍さんが、その立場で憲法改正をとなえる。これは憲法違反ではないでしょうか。
憲法を守ることは、さしあたっては、原発をやめることです。
そのためには、ひとりひとりが考え、動くしかない。
我々の世代は、戦後民主主義の変遷を生き、貴重な体験ができました。ともかくも発言し、権利を獲得してきた、ある意味で恵まれていた世代とと思います。
だからこそ、それを知らない若い世代には、お返しをしなければならない。
そんな気持ちで誌面を作り、今日もこうしてお話をしているわけなのです。
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