きのうの夜、おとうさんがおそく帰った、そのわけは…
発売日:2010年03月
著者 市川宣子 絵 はたこうしろう
出版社 ひさかたチャイルド
お父さんが大活躍する現代のおとぎばなし。
あっくんのお父さんは夜遅くなってもなかなか帰ってこない日があります。そんな日はどこで何をしているのでしょう…?
大なまずに子守歌を歌ってあげようとするお話や、迷子の雷の子を空まで送り届けるお話など4篇からなるオムニバスおはなし集。その語り口には、子どもへの優しいまなざしと愛情がぎゅっとつまっています。
小学館児童出版文化賞受賞作家、市川宣子の最新作です。
-出版社からの内容紹介
「言い訳こそ物語の始まり」
という宮川健郎さんの言に従うなら、出版社のいう「現代のおとぎばなし」というキャッチフレーズも、言い得て妙。
あっくんのお父さんはいつも帰りが遅いようです。
風貌からして、会社員。有能なビジネスマンなのでしょう。
遅くなった言い訳もまた、スケール雄大で、愉快痛快。
語り手としても有能そのもの。
お父さんは、負けずぎらい。
深夜に出会った、ふしぎな「連中」の頼みごとへの返答は、いつも自信満々です。
「おい。あなほりができないって?だれにむかっていっているのかな?」
「おい。ボートがこげるかだって?だれにむかっていっているんだ?」
「ホームランをうったことがあるかだって?だれにむかっていっているんだ?」
「木のぼりができないって?だれにむかっていっているのかな?」
…そんなこんなでつい仕事を引き受け、遅くなってしまう…わけです。
あなほり、
ボート遊び、
草野球でホームラン、
公園での木のぼり…
いや、いかにも昭和の時代の子どもたちを彷彿とさせますね。
お父さんがその技能を駆使して、どんな冒険に挑むのか…は、ぜひ本を読んでお確かめください。
物語の痛快さとともに、じんわりと感じられる感触が、またいいのです。
土とともにあり
水とともにあり
空とともにあり
星とともにある
そんな、周りの自然…いや、町の中のあたり前の風景と共にある感触。
それこそ「昭和の少年」がいつも身近に持っていたものでした。
お父さんは、携帯電話もパソコンもテレビも介さないで遊ぶ豊かさを、「言い訳」の形を借りて、あっくんに語っているようです。
ただ…
そんなお父さんの、プライド高く、負けず嫌いでパワフルなところが「遅く帰る」原因にもなっていたのでは…
そうつっぱらず、ゆるりと行きませんか。
と、つい声をかけたくなってしまうのは、木登りにも、ホームランにもまったく縁のなかった「昭和の少年」ネコパパの僻目でしょうか。
お父さんの読み聞かせ…いや「読み合い」にうってつけの一冊です。
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