BOZEで聴き会

月某日。

連休の晴れたある日、ネコパパ宅へ、二人の来客がありました。
どちらも重そうな手提げ袋を抱えて二階へ登っていく。袋の中身はすべてLPレコード。
階には、ネコパパが最近やっと聞けるようにしたサブシステムがあります。古いBOZEのレシーバーPLS-1310とフルレンジスピーカー121。それに3月に中古入手したYAMAHAのアナログプレーヤーYPD7



簡素そのものの再生機器ですが、鳴らすうちに不思議と聞きやすい音になってきました。8畳間でゆったりできるし…と思い立って、声をかけたというわけ。

その日は、風も吹かない、まっさらな晴天。にもかかわらず三人の中年男は、日がな部屋にこもって、音盤談義に明け暮れたのでした。
 
夜、その二人の友bassclef君とsige君からメールが。
おお、これは、一日たっぷりと聞いた音盤の記録じゃないですか。
ちょっと引用させてもらっていいかな…

 
まずは、bassclef君。

 
ドリス・デイ~プレヴィン「デュエット」(CBS国内盤)から始まって、リチャード(ディック)・ツアージック(Pacific)の怪しげなピアノ。



Vogue音源からの日本10インチ盤「アンリ・ルノー・オールスターズ」(BMGジャパン)あのフランス録音の10インチらしい、誇張のない、さっぱりした音は魅力的だったですね。
アル・コーンもいいですよ(笑)



アート・ぺッパーの キング盤「ダイレクトfrom SP」~素晴らしい存在感!
同じくペッパーの Tampa盤オリジナル「マーティー・ペイチ・カルテット」
 
クラシックでは 
シュタルケルのハイドン・・・あのステレオ録音・・・よかったね。
Angelだったか?



独盤の、あのピアノ大御所~「バックハウス最後の演奏会」(Decca)・・・よかった、素晴らしく、純度の高い音色・・・枯れた味わいの中に仄かな色気というか・・・チャーミングな何かを感じました。
 

マリガンの10インチ「ジェリー・マリガン」(prestige) から抜粋聴き。
スタン・ゲッツの「カルテット」(prestige)日本盤、12インチオリジナル、10インチオリジナル(2種)の聴き比べ。




クリフォード・ブラウンもいくつか。
with strings
Study in Brown
Roach & Brown
 
マイルスも~Relaxin' Prestige NYCラベル)
楽しい時間はあっという間ですなあ。何時間あっても足りない。


続いてsige君。

 
三人で聴き合うと、ふたりだけで聴いているときとは違う、音源からの発見あり感動ありで、これだからやめられないというものです。
ボーズ・システムもレコードの持つ個性と力を、よく違えて再現していました。
ツアージックのピアノとクリフォード・ブラウンのwith stringsが、一番残っています。あんなクリフォードの音、高校以来ただの一度も聴いたことがなかった。ゲッツの時期が少し違う2枚の10インチ盤の、少しにして大なる違いも体感できました。
ペッパー・ダイレクト・カッティングアルトの芯が聞えるようでした。



シュタルケル、民族の歌が聞える音でした。バックハウス、日本盤よりもだぶついてない音でした。「Relaxin'」マイルスの音に芯があり、また肌理の細かい音でした。
 
だからやめられない!!
 
あと、バルネ・ウィランやボビー・ジャスパーの10インチ、大森明、本田俊之の1980年代はじめのアルバム、、デューク・エリントン「極東組曲」、ウディ・ハーマン「フォーブラザーズ」アンセルメ指揮のビゼー交響曲1番(London)メジャーなどもあったね。
 

今回はいつにない勢いで聞きました。
bassclef君は貴重なオリジナル盤をたくさん持参されたので、この素朴な機械でどれだけ…と思っていましたが、これが結構素直にそれぞれの盤の持ち味を演じ分けるのですね。
スタン・ゲッツでは、国内盤・12インチオリジナル、10インチオリジナル二種を聴き比べたわけですが、
同時期の10インチ盤同士でさえ、音の違いがあるのに驚きます。
「初期のものほど音がいい」という単純な話ではなく、それぞれ個性がある。

今回の印象では、古いものほど、サックスやトランペットなど中心楽器を前に押し出していて血の通った音を出している。それに対して後年のものはドラムスやベースなど、リズムセクションにもスポットを当てて、バランスの良い響きを出そうと努めているように聞こえました。
 
驚いたのはクリフォード・ブラウンの三枚。
with stringsではストリングスの奥行きのある響きに、トランペット・ソロがくっきりと浮上し、広いステージでの臨場感が伝わります。



一方Study in Brownでは、メンバー一人一人の演奏がオンマイクでくっきりと捉えられていて、彼らがすぐ近くにいるようです。それがRoach & Brownでは音が少し遠目で、くぐもったようなサウンドに変わります。

ネコパパはこの三つをCDで聞いていました。
そのときは、これほど違う音とは思っていませんでした。そこでちょっとCDも掛けてみると、マスタリング段階でバランスを整え、聴きやすい(聞き流しやすい)音にまとめた感じに…なるほど、それでね…

 
現代の技術進歩というのは、それはすごいものでしょう。
音源に多少問題があろうと、巧みなデジタル編集できっちり整えてしまう。
それなのに、技術向上期と言える80年代の音盤の音は、耳をすんなり通過してしまうように、味気ないものでした。
今に比べれば原始的な機材で記録・製盤されたはずの50年代、60年代の音。でも、その理屈抜きの血の通いっぷりを聴くと、近頃のものは聴けないな、と感じることが少なくありません。

アート・ペッパー参加の「マーティ・ペイチ・カルテット」tanpaオリジナルプレス見本盤。
マイルス・デイヴィス「リラクシン」(Prestige NYCラベル)
bassclef君秘蔵の2枚の音の実在感には、ネコパパ、息を飲みました。もちろん音楽そのもの、演奏そのものに改めて圧倒されて、です。

演奏にも製作者にも「人の技」が最高に発揮された「旬の時代」があった…
かなりの無理をしても、初期盤を追い求める愛好者の気持ちも、わか…っちゃ、だめですよね。
でも。
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コメント

コメント(7)
No title
今晩は。昨日はありがとう。楽しかった!昨年暮、名古屋本山「DAYS」で「What's New」のイギリス盤を共に聞き、ややかっちりした音像のなかにもとろけてしまいそうな息遣いを聞きましたが、昨日の10インチ古い方は耽美的といっていい程の息遣いでありながら、モノなのにしっかりと眼前にゲッツがいるかの音像でした。あの演奏、100回繰り返し聴いても大丈夫と思っていましたが、10インチ盤1回で完全にうちのめされました。格別においしいものを食すと、それ以上食したくない気持ちでした。ですが、われわれは贅沢ですね。その次にシュタルケル、バックハウス最後コンサート、ブラウン・ストリングス、リラックシンと初期盤を次々と食したのですから。ごちそうさまでした。

toy**ero

2013/05/06 URL 編集返信

No title
yositakaくん、昨日は楽しい時間をありがとう。リラックスできる2階の空間で、どのLPも~モノラル録音もステレオ録音も楽しめました。
BOSEというスピーカー・・・クラシックのステレオ盤は自然な拡がりで感じられましたが、モノラル盤の場合は、2つのスピーカーの距離とか微妙な内振りの角度とか、かなり音像が変わってくる感じ、ありましたね。僕の好みでは、ちょい内振り強めにして距離を狭めにした時の、あのクリフォード・ブラウンのトランペット・・・良かったです。ホント、なにか中央やや上に浮かび上がり、真の名手の素晴らしい音色のトランペットが、そこで鳴っているような・・・そんな感じ。ただただ・・・気持ちのいいトランペット、ジャズ、音楽でした。

bassclef

2013/05/06 URL 編集返信

No title
(つづき)
ペッパーの「ダイレクトfrom オリジナルSP」・・・あれも良かった! パーカーの同じシリーズLP盤はsigeくんから譲り受けて聴いてはいたが、ペッパーの場合~録音年が1952年,1954年とちょいと進んでおり、そのdiscovery原盤SPからの起こしLP盤の音があれほど凄いとは! アルトへの吹き込み息のほんの強弱~それが音色の音圧感の強弱になっている・・・その様子(リアリティ)が感じられるような気がしました。
当時(1985年・・・でしたか?)のキングレコード技術陣の気合が感じられる素晴らしい1枚ですね。

bassclef

2013/05/06 URL 編集返信

No title
sige君、昨日はお疲れ様でした。

>格別においしいものを食すと、それ以上食したくない気持ち

確かにその時はそういう気持ちです。
昨日なんて、息つくまもなく次々に好いものが出てくるので、どうなることかと思いましたが、お二人の音盤記録のおかげもあって、だんだんと受け止めたものを整理できました。
聞くこともさることながら「談義」することもまた、大切なことと改めて感じた一日でしたね。
クリフォード・ブラウンの音を聞いてbassclef君の言った一言は、まさに名言でした。
「彼の音には、マイルスやチェット・ベイカーのような<裏>がない。彼そのものの真っ正直な音。いい人だ!」

yositaka

2013/05/06 URL 編集返信

No title
bassclef君、貴重な盤をよくぞ、あれだけ持ってきてくれました!!
原盤SPからの起こしLP盤…あれが商品企画として成立したこと自体が、まあとんでもなく奇跡的なことかもしれません。それだけに、スタッフも頑張ったのでしょうね。溢れ出る音の向こうから、「仕事」とはこうするものだ、と胸を張るスタッフが見えるようです。
BOZEの機器、一般家庭向けの「家電」に類する製品ですが、昨日聞けた音は音楽を聞き取ることにまず支障ないものと感じました。
あの音量での作動は、初めてでしたが…がんばっていましたね。

yositaka

2013/05/06 URL 編集返信

No title
≪マイルスやチェット・ベイカーのような<裏>がない≫
~いやあ、たしかにそんなこと言いましたね(笑)まあ・・・裏というより陰というか、あまりにもクリフォード・ブラウンのトランペットが、翳りなく鳴るものだから(しかし、その音色そのものには理屈ぬきの快感がある)そう思うと、マイルスって人は、翳りそのもの、屈折そのもの・・・そしてそういう「裏」にも、もちろん凄い魅力を感じるのですが。要は・・・ジャズ(音楽家)の個性とはそうしたものなのかな・・・と。理屈ぬきに現われてくるその人でしか生み出せない何か・・・音楽はいいですね(笑)
音の方~ペッパー、クリフォードの辺りで、僕が、勝手に少しづつ音量ツマミを上げてしまったようです(笑)でも機器のほう、いい感じで応えてくれてましたね。

bassclef

2013/05/07 URL 編集返信

No title
>そういう「裏」にも、もちろん凄い魅力を感じるのです

全くその通りです。「隠し味」のようなものかな。
一方、クリフォードの音色には逆に翳りを感じさせない分だけの切なさ、哀感をも感じますね。
「ホワッツ・ニュー」「ブルームーン」「Can't Help Lovin' Dat Man」…どれもそうでした。

yositaka

2013/05/07 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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