サヴァリッシュ氏死去

中学生時代、白黒テレビで目にした、オーケストラの演奏場面。
ネコパパがベートーヴェンの交響曲を「全曲」はじめて耳にした得難い体験だった。
演奏はNHK交響楽団。
指揮はウォルフガング・サヴァリッシュ。
そのサヴァリッシュ氏が亡くなった。

お悔やみを申し上げます。
 
ドイツの指揮者サヴァリッシュ氏死去
NHKニュースウェブ 2013年(平成25年)225日[月曜日]



 
ドイツを代表する指揮者の一人で、NHK交響楽団の名誉指揮者を務めるなど、日本ともゆかりの深い、ウォルフガング・サヴァリッシュ氏が亡くなりました。
89歳でした。
 
ウォルフガング・サヴァリッシュ氏は、ドイツ南部ミュンヘンの出身で、ウィーン交響楽団の首席指揮者を務めるなどドイツを代表する指揮者の一人で、ピアニストとしても知られています。
ドイツのバイエルン国立歌劇場やアメリカのフィラデルフィア管弦楽団の音楽監督を歴任するなど、欧米の主要なオーケストラやオペラの公演を手がけてきました。
また、NHK交響楽団で、1964年に初めて客演で指揮をして以来、ほぼ毎年タクトを振るなど日本とのゆかりが深く、NHK交響楽団では、名誉指揮者を経て1994年から「桂冠名誉指揮者」を務めてきました。
1999年には、国際交流基金が日本と海外との国際交流に顕著な貢献をした人に贈る、「国際交流基金賞」を受賞しました。
サヴァリッシュ氏が設立した基金などによりますと、サヴァリッシュ氏は22日、ドイツ南部のグラッサウにある自宅で亡くなりました。
89歳でした。
 
育ての親のような存在

亡くなったウォルフガング・サヴァリッシュさんは、1964年に初めてNHK交響楽団と共演して以来、楽員の育成にも力を注ぎ、1967年に名誉指揮者、1994年からは桂冠名誉指揮者となるなど、40年にわたってN響との交流を続けました。
サヴァリッシュさんが亡くなったことについて、NHK交響楽団の杉浦晃常務理事は、「N響を一流のオーケストラに導いてくれた育ての親のような存在でした。特に、彼が得意とするリヒャルト・シュトラウスをはじめ、ベートーベンやブラームスなどドイツの作曲家の曲を、共に作り上げ、重厚なドイツ音楽の核心をN響にたたき込んでくれました。彼がいなければ、今のN響はなかったと思います」と話しています。
そのうえで、「サヴァリッシュさんは楽員からも慕われ、2004年の共演のあと、サヴァリッシュさん側からも再び指揮をしたいという希望がありましたが、体調が回復せず、ご一緒できなかったのが残念です」と話していました。

 
ライヴに一度も接することはなかったけれど
長年にわたるNHK交響楽団との演奏は、放送を通じて何度も耳にしてきた。
団員ら関係者の回想によると、天才的に耳がよく、譜読みは細かく、細部まで徹底的に音楽を自分のものにしていて、演奏中のいかなるトラブルにも即応できたという。
一方、ドイツ正統派の指揮者として信頼を受けながらも
「安全運転で面白みのない、校長先生のような指揮者」
といった評価を受けることも少なくなかった。
 
バイロイト音楽祭、バイエルン国立歌劇場を初め、欧米では専らオペラの分野が活動の中心。
それもあって、日本のレコード界で大きな話題になったことも、実はあまりなかったのでは。
でも、ネコパパは、ふと耳にする、N響とのベートーヴェンやブラームスの交響曲の演奏に、どきりとするような奥深い、鋭い表現を感じることがしばしばあった。
日本では「馴染みの人」になりすぎて、却って評価を遅らせた、
隠れた巨匠だったのかもしれない。
 
ネコパパの音盤棚から、印象に残っているものを紹介。

 
ワーグナー 歌劇『さまよえるオランダ人』『タンホイザー』『ローエングリン』
バイロイト祝祭管弦楽団 PHILIPS



いずれも1960年代初頭のライヴ。会場雑音など生々しい雰囲気が伝わる、一発ライヴ収録。
速いテンポで俊敏に駆け抜ける演奏スタイルは、穏健指揮者の印象を大きく変える。
部分的に聴くとちょっと荒っぽい印象もあったが、全曲を耳にしてはじめて、その見事な構築美に気づくことができた。とりわけいいのは…曲もそうだが『タンホイザー』だ。
歌手たちの全力の歌いぶりもすばらしい。


バッハ ブランデンブルク協奏曲第5番
シューベルト 交響曲第3番
ベートーヴェン 交響曲第4番
スイス・イタリア語放送管弦楽団 AURA(ERMITAGE)





1964年6月4日のライヴ録音。
後に行くほど迫力を増していく、実演ならではの感興が伝わる記録。最初のバッハはまったく「普通」だが、シューベルトでは奏者たちが楽しげに演奏している様が目に浮かぶ。
最後のベートーヴェン交響曲第4番では一つ一つの音に込められた熱気が只事じゃない。きっとこの日のお客さんたちは「来てよかった」と思ったはずだ。


ベートーヴェン 交響曲全集
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 EMI



1991年3月~1993年12月録音。
第3、第4、第5がとりわけ見事。ざっと聴きき流してしまうと、特徴をつかみづらいが、細部に耳を凝らすと、同じ音型の繰り返しの部分でも、音が吟味され、ひとつひとつ微妙にニュアンスを変化させていく様を、至るところで聞き取ることができるはずだ。
たとえば「第5」のフィナーレで、短い和音が追い上げるように積み重なっていくところ。聴き手は指揮者と呼吸を合わせて、ひとつひとつの音に気持ちを吹き込んでいくような気持ちになる。

「あるがままに美しく」曲を響かせようとするために、隅々まで目を光らせる…そんな演奏だ。
「田園」については、いずれじっくり聴きなおして記事にできたらと思う。

 
モーツァルト ピアノ協奏曲第21K467 第22K482
アニー・フィッシャー(p)フィルハーモニア管弦楽団 EMI




1958年録音。硬質で底光りするような個性的なピアノを、厚みのある音とゆとりを持ったテンポで支えるオーケストラ。特にシンフォニックなK482はスケールの大きな演奏で、聴きごたえがある。
アニー・フィッシャーのピアノ協奏曲シリーズでは、同じオケを三人の指揮者が振り分けている。
サヴァリッシュの指揮は最も魅力的で、他の二人が素っ気なく感じられる。
これぞ、名伴奏。


ヨハン・シュトラウス・コンサート
ウィーン交響楽団 ORFEO



1967年のライヴ録音。
一曲目の「こうもり」序曲から、はじけるような気迫と愉悦感にあふれた演奏が聴ける。
ワルツやポルカもちょっと生真面目で、舞踏感よりも厚みと構成感で聴かせるのが特徴だ。交響曲の一楽章のような『ウイーンの森の物語』。フィリップスへの正規録音も隠れた名盤だった。
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コメント

コメント(12)
No title
寂しい限りです。

SL-Mania

2013/02/25 URL 編集返信

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2004年のN響公演が最後の舞台になったのでは。追悼番組で再放送されるといいですね。おなじみでありながら、聞けていないところが多いことに悔いが残ります。これから再評価されるのかもしれません。

yositaka

2013/02/25 URL 編集返信

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ドレスデンのシューマンも大変良かったです。

quontz

2013/02/25 URL 編集返信

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Quontzさん、やはりシューマンの交響曲全集を聴かずして、サヴァリッシュは語れないのですね。
ところが私は他盤を優先させていずれと思っている間に、聞きそびれているのです。つい後回しにしてきた。悔いが残るというのはそこなんです。

yositaka

2013/02/25 URL 編集返信

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10年くらい前に放送していたご本人出演のドキュメンタリー番組の中で、自宅で静かに弾いていたシューベルトの即興曲の深い響きに打たれました。人柄がにじみ出ているかのようでした。

Loree

2013/02/25 URL 編集返信

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ロレーさん、あのドキュメンタリーはいい内容でした。ご自宅の様子もよくわかりました。
サヴァリッシュはピアノの名手でもありましたね。フィッシャー=ディースカウの伴奏をした歌曲もかなりありました。聴きなおしたいと思います。以前ベートーヴェンの合唱幻想曲を弾き振りした映像も放送されたことがありました。

yositaka

2013/02/25 URL 編集返信

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みっちがワグナーに、はまりかけていた頃、サヴァリッシュがバイエルン国立歌劇場を率いて来日しました。1988年です。ルネ・コロがワルターを歌ったマイスタージンガー、未だに記憶しています。ああっ、あれから随分経ったんだなという感慨を持ちました。

みっち

2013/02/25 URL 編集返信

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みっちさん、その80年代から90年代はじめにかけてが彼の絶頂期だったかもしれません。バブル期でもあり、クラシック業界の絶頂期でもあったのでしょう。
あれから20年以上経ったのに、確かに最近のことのようにも思えます。この感覚、どういう事なんでしょうね…

yositaka

2013/02/25 URL 編集返信

No title
始めまして。私の音楽時代はブラウン管に映るサヴァリッシュに始まりました。バイエルンとのアラベラ、さまよえるオランダ人、そして2004年のN響のベートーヴェン。賛辞の如く、細部まで眼光鋭いながらも、見事な統一感。響きは極めてエレガント。クラシック界の最後の柱を失ったような気がします。ありがとうございました、と言葉を贈りたいです。

ヒロシ

2013/02/26 URL 編集返信

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ようこそヒロシさん。
「NHKコンサートホール」という番組を毎回愉しみに見ていました。
N響だけでなく、パリ管やフィルハーモニア、モントリオール響など来日オーケストラの録画もありそんな会はわくわくしたものです。サヴァリッシュさんは常連でしたね。別枠でリハーサルやトーク番組もありました。大木正興さんの丁寧な解説も懐かしい。

yositaka

2013/02/26 URL 編集返信

No title
NHKテレビで追悼番組が企画されたそうです。とくに10日は最後の来日公演が放送されるとのこと。じっくりと耳を傾けたいですね。
BSプレミアム 2013年3月5日(火) 午前0:45~午前1:48(63分)
マエストロの肖像「ウォルフガング・サヴァリッシュ~音楽に愛された男~」2003年1月28日に放送されたドキュメンタリーの再放送
BSブレミアム 2013年3月8日(金) 午前0:00~午前3:50(230分)
ワーグナー 楽劇「ワルキューレ」全3幕
バイエルン国立歌劇場で収録1989年11月~12月にかけて収録
Eテレ 3月10日(日)後3:00~4:30 サヴァリッシュをしのんで」最後のN響公演2004年11月13日NHKホール
交響曲第7番イ長調作品92(ベートーベン)

yositaka

2013/03/04 URL 編集返信

No title
マエストロの肖像「ウォルフガング・サヴァリッシュ~音楽に愛された男~」視聴しました。彼は日本での活動以外、ほとんどバイエルン国立歌劇場の音楽監督として過ごし、半生を地道なカペルマイスターとして生きたのでした。スター指揮者を呼んで劇場をメジャー化しようとした総監督のエファーディンクと対立し、劇場と決別したというのは「音楽家は職人でいい」という彼の矜持をよく示すもの。N響を愛したのも真面目さ、丁寧さが彼の気質と共鳴したからだったのでしょう。

yositaka

2013/03/09 URL 編集返信

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yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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