アバドのブルックナー

ブルックナー
交響曲第4番『ロマンティック』(録音:1990年)
交響曲第5番(録音:1993年)

 
クラウディオ・アバド指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ウィーン・フィル・シンフォニー・エディションより(画像は通常盤CDのもの)
 
 
このセットに含まれているブルックナーでは、第1、第4、第5がアバド指揮のもの。
「第1」は、キャリアのかなり初期に、同じウィーン・フィルとレコーディングしていたと思う。得意曲なのかも。なら、後でじっくり聴くことにしよう。



 
4
いちばん美しく感じるのは第楽章。
すっきりとした透明感で、各楽器の音色がやさしく耳元を過ぎていく。
他の楽章も、同じようにすっきりとして、薄い響きが一貫する。第1楽章の弦の刻みも、ホルンのテーマも、音が小さく細くて「デリケートな音楽だなあ」という気分が漂う。
フォルテの部分を、抑制しているわけではなく、金管も十分に力強く響かせているのだが、なぜか手ごたえがあまりなく、瞬間が過ぎればたちまち記憶から消えてしまう。
ネコパパの好きな曲とあって、なんとか良さを見つけようと3回挑戦したが、
どうしても最後まで(寝ないで)聞きとおすことができない…



 
1楽章。冒頭のリズムが強めの音で入ってくる。弦も厚みのある音でじっくり歌い、伽藍を思わせる曲の構えの大きさがよく伝わってくる。
テンポは動きが目立たないように微妙に伸縮する。フレーズとフレーズのつながりがすらりと滑らかなのは、指揮者の巧みな曲捌き。ブルックナーの音楽の、とりわけこの曲には顕著な、ごつごつとした触感を和らげようとしているようだ。
2楽章も遅いテンポ。山麓から空に向かって湧き上がるような、あの第2テーマは、呼吸が浅く、なだらかにすぎるけれども、曲の魂は十分に伝わってくる。
このペースで最後までいってほしいものだ…
しかし後半は様相が変わってくる。
3楽章になると、リズムの刻みが強くなる。意思のこもった音の鳴らせ方が目立ってくる。
フィナーレでは、ますます感情移入が激しくなり、あちこちで突っかかるような響きが、熱気を伴って立ち現れる。テンポも速めだ。
終盤にあらわれる、ブルックナーとしても唯一の、巨魁のクライマックスに向けて、演奏者たちは前半で溜めに溜めたエネルギーを、一気に解放しようとするかのようだ。
まさに怒涛のフィナーレ。
快感だ。
これなら寝ないで、最後までしっかりと聴ける。
でも…この興奮、曲の素晴らしさを実感するのとは、ちょっと違う。力みや煽りによって生み出された迫力かもしれない。
音が荒々しく、混濁した響きになってくるのも、もったいない。ウィーン・フィルの音色の魅力をもっと生かしてもいいんじゃないか。

それにしても。
 
同じ指揮者とオーケストラ、録音時期も近いというのに、二つの曲の2曲の印象がここまで違うのは驚きだ。
まるで正反対である。
別の曲だし、綿密な譜読みの結果、アプローチがちがってくるは当然、と言われるかもしれない。
でも、そうかな。
本当は、指揮者に確固たる「ブルックナー観」がなくて、曲ごとに右に左に揺らいでいる…
どの交響曲にも共通するブルックナーの息吹を受け止めたいと思うネコパパのような聴き手には、そんな意地悪な感想も浮かんできてしまうのだ。
 
アバドは近年、ルツェルン音楽祭など、メンバー選びから自分の意思を通した演奏活動を行っている。
NHKでもライヴ録画がかなりの頻度で放送され、耳にする機会は多い。押しも押されもせぬヨーロッパの「巨匠」…そんな立ち位置を確保しているのだ。
正直、そのすべてを真剣に聴いているわけじゃない。けれど、聴くたびに随分違うな、という感じはしていた。
マーラーの「第6」が素晴らしかったので「第9」なら、さぞかし…と期待していたら、意外に薄味で印象に残らなかったり…
今回のブルックナーでも、謎は深まるばかりだ。
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コメント

コメント(4)
No title
アバドのブルックナーは未聴です。しかし何故か触手が伸びません。ブルックナー云々以前にベルリン・フィルのシェフになって以降のこの人に面白味を感じなくなっていることもあります。

記事を拝読して、なんとなくあり得るなと思いました。ブルックナーはモーツァルト同様に天衣無縫でないとなかなか難しいとは某評論家の言ですが、小細工は全く効かない作曲家ではないかと思っています。地に足がついた姿勢が必要なのかもしれません。

第4番は学生時代に演奏したことがありますが、理解に及ばず不本意な演奏だったと思っています。

SL-Mania

2013/02/23 URL 編集返信

No title
SL-Mania さん、4番を演奏されたとは素晴らしいですね。この曲はライヴで聞くとほとんど満足できるのです。
アバドは考え抜いて指揮していると思います。でも解釈でなく研究過程が演奏に出てしまっているような気がするのです。偉そうな言い方ですが…

yositaka

2013/02/24 URL 編集返信

No title
アバドもウィーンフィルもロマンティックも好きなのに,まだこの演奏を聴いていません。ぼくも,学生の時にこの曲をやりました。音の洪水の中での陶酔感は忘れがたいです。その体験のせいか,どんな演奏もけっこう入り込めます。

_リ_キ_

2013/02/28 URL 編集返信

No title
リキさん、ブルックナーは曲が長いせいもあって、レコーディングに拍車がかかったのはCD時代でした。この2枚もアナログ盤は出たのでしょうか。記憶にありません。
ブルックナーが好きになりだした頃、ベームVPOの第4が2枚組で発売されました。小細工なしで楽々と鳴らす様はアバドとは対照的です。これは今聴いても違和感なく曲に入り込める演奏です。

yositaka

2013/03/02 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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