まさに「センシティヴ」な音楽

New Year's Concert 2013



Franz Welser-Most
Vienna Philharmonic Orchestra
201311日、ウィーン、ムジークフェラインザールでのライヴ・レコーディング
2013/01/15 Sony Classical


1
1.ヨーゼフ・シュトラウス:スーブレット・ポルカ 作品109
2.ヨハン・シュトラウス2世:キス・ワルツ作品400
3.ヨーゼフ・シュトラウス:劇場カドリーユ 作品213
4.ヨハン・シュトラウス2世:ワルツ『山の上から』作品292
5.フランツ・フォン・スッペ:喜歌劇『軽騎兵』 序曲
 
2
6.ヨーゼフ・シュトラウス:ワルツ『天体の音楽』 作品235
7.ヨーゼフ・シュトラウス:ポルカ『糸を紡ぐ女』 作品192
8.リヒャルト・ワーグナー:歌劇『ローエングリン』 第3幕への前奏曲 ★
9.ヨーゼフ・ヘルメスベルガー2世:ポルカ『二人きりで』★
10.ヨーゼフ・シュトラウス:ワルツ『金星の軌道』 作品279
11.ヨーゼフ・シュトラウス:ポルカ『ガロパン(使い走り)』 作品237
12.ヨーゼフ・ランナー:シュタイヤー風舞曲 作品165
13.ヨハン・シュトラウス2世:メロディ・カドリーユ作品112
14.ジュゼッペ・ヴェルディ:歌劇『ドン・カルロス』 第3幕のバレエ音楽より プレスティッシモ★
15.ヨハン・シュトラウス2世:ワルツ『レモンの花咲くところ』作品364
16.ヨハン・シュトラウス1世:幻想曲『エルンストの思い出 または ヴェネツィアの謝肉祭』作品126
 
アンコール
17.ヨーゼフ・シュトラウス:ポルカ『おしゃべりなかわいい口』 作品245
18.新年の挨拶
19.ヨハン・シュトラウス2世:ワルツ『美しく青きドナウ』作品314 
20.ヨハン・シュトラウス1世:ラデツキー行進曲作品228
★ニューイヤー・コンサート初登場作品


今回の指揮者フランツ・ウェルザー=メストへのインタビュー記事が『レコード芸術』2月号に掲載された。
今年はヨハン・シュトラウス2世の弟、ヨゼフ・シュトラウスの曲を6曲も取り上げている。
そのヨゼフについてコメントを求められ、メストは次のように答えている。
 
「ヨハン・シュトラウス2世よりも、さらにセンシティヴな作曲家だと思います。ワルツ王は輝かしい作曲家でしたが、ヨゼフはもっと内面的なものを備え、繊細な作品を残しています。それは例えば『天体の音楽』や『金星の軌道』の導入部分を聴いていただければ、お分かりいただけると思います。とても繊細でメランコリックで、ほとんどシューベルトのような感じがします」

センシティヴという言葉には、多情多感、鋭敏で傷つきやすい感性という意味がある。
 
今回のコンサートは…確かに「センシディヴ」という言葉がよく似合う。
ヨゼフ・シュトラウスに対する指揮者の共感が、他の作曲家の曲にも及び、全体を一つの色に染めていた。
それは、山間の湖の、わずかにさざ波立つひんやりとした水面を、そっと撫でるような音の感触
…とでも表現すればいいだろうか。



 
ランナーの『シュタイアー風舞曲』について、メストはこうコメントしている。

「表面的にはとても軽い音楽です。けれども、その下にあるものはとても憂鬱な感情です。…シュタイアー州の風景をご存知の方にはわかると思います」

短いものだけれど、これは当夜の白眉の一曲だった。
遅いテンポと弱音で一貫された、繊細そのものの音楽。
確かに、舞曲ではあるけれど、曇り空の田園風景に、踊り手はだんだんと輪郭を失い、ひっそりと溶け込んでしまうようだ。
 
ヨゼフ・シュトラウスの曲では『金星の軌道』に最も感銘を受けた。
息の長い、どこまでも高く伸びていくような主題に始まる音楽は、リズムの躍動よりも、ため息と、内向と、憧れの情感が交じり合った「ヨゼフ節」で進んでいく。
兄ヨハンに比べて病弱だったヨゼフ。
旅から旅の激務に耐えられず、若くして亡くなった彼の、これは最後の曲である。
生命の躍動よりも抒情性に重きを置く、ウェルザ=メストの表現に見事に一致して、ヨゼフの思いが直に伝わってくるような美しさだった。
 
当夜のクライマックスは、ヨハン・シュトラウスの『レモンの花咲くところ』。
ワルツ王の曲としては『南国のばら』に近い、のびのびとした歌に満ち溢れた名作だ。
思い入れがあふれるような弦の歌に、木管群がイタリアの陽光の彩を加えていく。
フルート、クラリネット、オーボエなどが次々に音を繋ぐ流れの滑らかさには、息を飲む。
 
その一方、『天体の音楽』『山の上で』『美しく青きドナウ』では、リズムの「踏み込み」や「しなり」がもっと欲しいと感じられた。舞踏感覚の沸き上がり、うきうきするような気分の表出が、今一つなのだ。
センシティヴな指揮ぶりと躍動感を両立させるのは、なかなか難しい。
 
『軽騎兵』序曲や『ローエングリン』前奏曲は、オペラ指揮者としての経験が生かされたか、打楽器を強調し、テンポも速めにとった、活気あふれる音楽を展開。
ポピュラーな曲が少ないプログラムのなかで、聴衆の気分を盛り上げる場を生み出していた。


今回の演奏の良さを十分に味わうには、テレビ中継の音声は、情報不足だったように思う。
全体の音は捉えられているものの、弦の厚みが感じ取りにくく、どの曲も平板に聞こえてしまった。どれも同じような、フラットな音に塗りつぶされたような…ずっと集中しして聴き続けるのが、難しい。
予想通り、テレビ視聴による各サイトでの評価は、あまり良くなかった。
仕方がない気もする。

本番からわずか10日後に送られてきた輸入盤CDを耳にして、ネコパパはやっとのことで、それなりの感想を持つことができた。
こちらはLP発売を意識して収録に気合が入ったのか、例年になく音が上質だ。
指揮者の言いたいことが伝わってくる。
もう少し直接音と残響のバランスを工夫すれば、さらによかったが。

テレビ中継に納得がいかなかった人は、一度ディスクでお聞きになってみてはいかがだろうか。
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yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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