学会報告③<頂戴のポーズ>に読み取るもの

 10月28日の発表から。
 
<欲望する主体>の構築『お伽絵解 こども』 6 号(1906)に見る<頂戴のポーズ>の幼女像
大橋眞由美(大阪府立大学 客員研究員)

 
<発表要旨より>
太平洋戦争時には、「欲しがりません勝つまでは」の標語が掲げられた。このような標語が成立する背景として、それまでに<欲望する主体>が構築されていた、と考えられる。
メディアは、国民国家の形成に関与した。記憶や心のプロセスは個人的なものではなく、様々なメディアに配分されて社会を構成し、歴史を再構築する。近代日本の幼年用メディアにも、<欲望する主体>を構築させるような表象が配分されていたのではないだろうか。
本発表では、絵雑誌の嚆矢『お伽絵解 こども』を事例として、3巻6号に見る<頂戴のポーズ>をとる幼女像「貞ちゃん」のイメージに見る関係性を読むことを通して<欲望する主体>の構築にかかわる意義を検討する。
 



表象(エクリチュール)」などのポストモダン学術用語が、不勉強なネコパパには手ごわいが、
イラストという素材から「侵略を欲する主体」の育成がじわじわと進行していく時代の空気が感じられて、迫力のある発表だった。
「物を欲しがる幼女」という一つのパターン化された画像が、時代が進むにつれて「侵略を欲する姿」「侵略を行動として推進する男性への大義名分を助長」するものになっていく過程を年代順に示していく。





左側の図でをとっているのが貞ちゃん。
軍服風のセーラー服を着た少年が、日章旗と兵士人形を差し出している図である。
書かれている言葉は「貞ちゃんはほしいか旅順

しかし幼女が同様な「頂戴のポーズ」をとっている絵はこれ以前にもあり、
最初は少年・少女から幼女へ、次には母親から男児に、少年から幼女へ、と対照人物が変わり、与える人物も坐像から立像に代わり、与えるものも花束、豆三人形、ウサギの餅つき人形、兵士人形と日章旗…と変化していく。

そこに時代の影を読み取ることができるのは確かだし、「ジェンダーやナショナリズムの形成に関与した可能性」を読み取ることもできるはずだ。

続いて大橋さんは
この雑誌から30年後に刊行された 『一目でわかる最近五十年間 日本躍進絵本』(わかもと本舗・栄養と育児の会)を提示する。





富士山を背にした女性が同じような「頂戴のポーズ」をとっている。
海を隔てた向かい側には、中国に軍服姿の日本人男性が立ち、女性に向かって大金の入った巨大ながまぐち風の財布を投げている…という絵である。



大橋さんは、『お伽絵解』から『躍進絵本』に至る30年の期間の「表象の変遷」を裏付けるべく、同時代の膨大な資料文献について調査をすすめているという。
子ども向きの雑誌類の大半が散逸している現状で、人々の目に触れた膨大な印刷物を一つ一つ検討していくとは、砂漠の砂粒をひとつひとつ解析するような作業だろう。
気が遠くなりそうだ。
そのモチベーションを維持していこうとする大橋さんの学問への姿勢が、熱い。
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Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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