リステンパルトの室内楽的な『プラハ』

カール・リステンパルトのモーツァルト



モーツァルト
交響曲第38番ニ長調K504『プラハ』
交響曲第39番変ホ長調K513

カール・リステンパルト指揮
ザール室内管弦楽団

1950年代初頭の録音
日ディスクユニオン(仏ディスコフィルフランセ)20012/8
DCL-1013



リキさん宅で、あの素敵な『ディヴェルティメントK136』を耳にして以来、この指揮者への関心が高まってきた。


そこに、こんな音盤が発売された。
ネコパパお気に入りの交響曲『プラハ』が含まれている。
これは聴かなきゃ。 
 
序奏は、一歩一歩、踏みしめて歩むようにはじまる。
やがてため息のように音を伸ばし、憧れと哀愁の入り混じった息の長い旋律があらわれる。
ヴァイオリンによって奏でられるその旋律は、まるでソロのような感触で耳を撫でる。陶然としているうちに、主部に入る。
弦の刻みがはじまり、明滅する管楽器。生き生きとした第1主題が跳ね上がる。
テンポは、遅めだ。
躍動感をせき止めるように、悲しみを秘めて下降する第2主題が登場。さらに加わるいくつもの動機が対比され、入り混じり…やがて音の伽藍を築き上げていく。
演奏を特徴付けている第1ヴァイオリンの、ソリストのような感触を伴う音色は、展開部に入っても揺るがない。
これは、当団体のコンサートマスターであったゲオルク・フリードリヒ・ヘンデルの音色だろうか。繊細で変化に富み、儚いような寂しさを帯びた音色である。
他の楽器群は後方で、遠慮がちにヴァイオリンを支える。
古いタイプの弦楽四重奏のような、ヴァイオリン主導の室内楽といった風情。

管楽器の比重が高まる第2楽章の後半はさすがにフルート、オーボエなどの管楽器の華のある響きが楽しめるが、音と音とがせめぎ合う緊張関係を高めたり、対位法的な立体感を強調したりすることは、ほとんどない。
これは昔の思い出のように、ゆったりと温かい、そして寂しさの漂う『プラハ』なのである。

 
しかし、第39番になると、音楽は厚みと活気をぐっと増してくる。
アプローチを変えているのか、リステンパルトの共感度が高いのか…第1ヴァイオリン主導の音のバランスは変わらないが、第1楽章は幾分速めのテンポで、『プラハ』との曲想の違いを描き分ける。
冗長になりがちな第2楽章を、管楽器が煌きの音色で彩っていくところは美しい。初めて耳にするような響き。
フィナーレは決して急がないが、生き生きと血が通っている。
演奏としては、こちらのほうが快調かも。

 
交響曲2曲を収録したこのCD音盤は、仏ディスコフィル・フランセのLPを復刻したもの。アナログの雰囲気をよく伝える、優れた復刻になっていると思う。
50年代初頭の録音で、リステンパルトとしては初期のものらしい。
クラブ・フランセ等に残された、ステレオ録音時代の、締まったスタイルとは別の味わいを聴くことができる。
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コメント

コメント(9)
No title
リステンパルトは、戴冠ミサやベグネールとのKV595も見事な演奏ですね。
真に巧まずして偉大さを表現する趣です。

Kapell

2012/11/19 URL 編集返信

No title
この演奏,レコードがあるのですが,なかなかいい音で再生できず苦労しています。どうも安定しない音の向こうから,聞こえてくる音楽をまだ味わえずにいるぼくです。あらためて,今度また聞きなおしてみようと思います。ちなみにこの復刻の音はどうですか?

_リ_キ_

2012/11/19 URL 編集返信

No title
カペレさん、その2枚も最近やっと入手しました。私は安い国内盤や米盤ねらいなんですが、それだって見つけるのは大変でした。この「なかなか見つからない」こと自体リステンパルトの魅力の一つとなっていると感じています。
ミサは苦手曲で、聴き込みが足りませんが、ペグネールとのピアノ協奏曲は紛れもなく、良い演奏。K595以上にK503が良いと感じています。

yositaka

2012/11/19 URL 編集返信

No title
さすがリキさん、アナログ盤をお持ちですか。
CDもモノラルの盤起こしですので、広がりや奥行きはあまり感じません。が、近接マイクによって捕えられた生々しい感じは伝わってくる気がします。ディスクユニオンの復刻は、先に紹介したバレンツェンでもそうでしたが、エンジニアの気迫を感じますね。

yositaka

2012/11/19 URL 編集返信

No title
こんにちは。この復刻CDはディスクユニオンの店頭で見かけて気になっていました。
レコ芸の最新号の新譜月評で宇野さんと金子さんがまったく異なることを書いていますね(^^;
ぼくはリステンパルトの協奏交響曲(管楽器)が大好きで、この曲を聴くときはこの盤ばかりです。

Loree

2012/11/23 URL 編集返信

No title
K503は、クリップス&E・フィッシャーの演奏も素晴らしいですね。

Kapell

2012/11/23 URL 編集返信

No title
ロレーさん、そもそも、このディスクがレコード芸術月評に取り上げられるとは…ちょっと意外でした。宇野さん、金子さん、二人の評は正反対ですが、よく読むと、なるほど、両者の評価基準からすればそう聴けるんだな、と納得もしました。とくに宇野さんは、交響曲は指揮者の主張と解釈が演奏の価値を決めるという信念を持っていることがよくわかりました。そこを「音楽性に著しく欠ける」とまで書くから、敵を増やすんで「交響曲的でない」くらいにしておけばいいのに…

yositaka

2012/11/24 URL 編集返信

No title
カペレさん、また凄いものを…エドウィン・フィッシャーのその盤は1947年録音のSP音源でしたね。たぶんどこかにあった筈ですので、探し出してみましょう。彼のピアノは一音一音に血が通い、息遣いがつたわってくるような独特の音楽が聴けます。弾き振りもやっていました。

yositaka

2012/11/24 URL 編集返信

No title
先日リキさん宅で、同盤ディスコフィル・フランセのオリジナルLPを聴かせてもらいました。
音質不安定とのことだったのですが、聴いた印象は復刻CDとほとんど変わりませんでした。音の出方やノイズ感もそのままで、ディスクユニオンがもとの音質をほとんどそのまま維持して復刻していることがわかりました。

yositaka

2012/12/04 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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