学会報告①伝記の定番キュリー夫人

本児童文学学会第51回定期大会報告①
日時 2012  10  27 日(土)~10  28 日(日)
会場 千葉大学(西千葉キャンパス) 2 号館 2 
 
10  27 日(土) 
<研究発表A> 12  50 分~13  50 
 
第一会場  2 号館 2   2203 教室    司会=宮川健郎(武蔵野大学)
 1250 

教科書の伝記考戦後国語教科書における「キュリー伝」を中心に
奥山 恵(白百合女子大学 非常勤)

<発表要旨より>
1947年~1998年に戦後国語教科書に取り上げられた被伝者を整理する。
主要教科書に取り上げられた被伝者だけを整理しても300人以上に及び、大半はほんの一時期、一、二種類の教科書に採録されたのみ。比較的長い時期、複数の教科書に取り上げられた被伝者としては、杉田玄白、マリー・キュリー、福沢諭吉、野口英世、ファーブル、松尾芭蕉、宮沢賢治などが見られるが、これらは児童書として多く出版された伝記のラインアップとはずれが見られる。また、教科書に取り上げられたさまざまなマリー・キュリー伝を読み直したところ、児童書との連動性は低く、問題点が多い。教科書の伝記は、伝記というジャンルの問題点が浮き彫りになりやすい面もあったのではないか。



 
キュリー夫人の採用率は、杉田玄白に継ぎ2位だそうだ。


戦後の教科書からは戦前までに取り上げられていた武人、軍人、政治家はすべて排除。
1970年代までは人気のあった野口英世アルベルト・シュヴァイツァーはその後は激減。
この二人は、70年代に業績、人格面で批判が起こったためと思われる。


一貫して人気を保つのは宮沢賢治


そして、教科書という媒体は、児童文学界よりも伝記を重視する傾向があったこと。


問題点として挙げられたのは
・     女性の被伝者が少ない…マリー・キュリーが重用される背景
・     ページ制限のため抜粋されると、放射能被害についての記述が真っ先に削られていく。
・     学年が下がるほど政治性が強くなる(研究と家族愛の両立)
・     50,年代には原爆とのつながりで平和利用を強調
・     ジェンターバイアス
・     99パーセント「夫人」の呼称が使われていること など
 
「資料」として掲載分の抜粋が配布された。年代、出版社ごとに出展も明らかにしている。
読んで面白い内容だ。
一読して、原子力発見を賛美する記述や、美談の多い物語的演出が目立つ。


客観性に乏しい「作り話を」子どもたちは実話と信じて受け止めて(受け止めさせられて)きたようだ。
この事実は重い。

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コメント

コメント(6)
No title
自分が子供の頃、教科書にも伝記がありましたし、学校の図書館に偉人の伝記が並んでいました。今考えると全てきれいごとに終始していたような印象です。偉人といえども生身の人間です。そういうところは全く感じ取れなかった記憶があります。70年代に入るとその偉人の「否定」するような動きがありました。野口英世なんかは実はとんでもない人物として描いたドラマまで出てくる始末でこの揺れは何だろうと思いました。

SL-Mania

2012/11/17 URL 編集返信

No title
SL-Maniaさん、伝記は昭和30年代から40年代にかけては人気がありました。高度成長の機運にもか無関係ではないでしょう。私自身の記憶では貧乏くささや苦労が強調された前半生を読むのはまっぴらで、「要は何をした人なの」と、終わりの方を読んでよしとしていたような。野口英世やシュヴァイツァーは、むしろ人間臭さが明らかになった後のほうが、ずっと親近感が持てるようになりました。教育的意図や政治的意図のフィルター抜きの、ありのままの人間の姿こそが読むに、知るに値する…そんな気がしています。

yositaka

2012/11/18 URL 編集返信

No title
私の勤務先の図書室では、
男子が伝記をよく読みます。
サッカー選手のと、イチローの^^;)
遠い昔の偉い人ではなく、
テレビで活躍中のカッコイイ男が、
支持されるようです。

ユキ

2012/11/18 URL 編集返信

No title
ユキさん
確かに近年では、スポーツ選手や芸能人、実業人の伝記がシリーズに入るようになっていますね。
ただ、国語教科書や副読本、道徳資料では、いつ評価が変わるかわからない現存の人物は取り上げにくい現状があります。掲載の了解も得られにくいし、何かスキャンダルがあっても即時に対応できないのが原因です。
そういうわけで、今回の発表でも、現役の人物は教科書に登場しない、という結果が出ていたようです。

yositaka

2012/11/18 URL 編集返信

No title
分かっています。分かっているつもりです。
でも、それって、つまり、オトナの事情ですよね。
…って、そんなふうに思ってしまう私って、
まだまだダメダメなのかなぁ><;)

でも、勉強不足の私は、たまに覗くココで、
学ばせていただいております。

ユキ

2012/11/19 URL 編集返信

No title
まったく、オトナの事情ですよ。ユキさん。子どもも大人も、こういう世の中ではしたたかに切り抜けなくちゃいけません。教科書や副読本で避けられているなら、それがわかっている大人が上手く「通路」を作っちゃえばいいのです。
ココで学ぶなんて。私こそ学ぶためにココを使っているつもりなんです。学び合いで行きましょう。

yositaka

2012/11/19 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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