ヤニグロ、背筋の伸びた楷書のチェロ

アントニオ・ヤニグロ チェロ愛奏曲集




アントニオ・ヤニグロ(Vc
アントニオ・ベルトラミ(P
1961年録音
日コロムビア2005年発売 米ヴァンガード原盤



1.
「ゴイェスカス」~間奏曲(グラナドス) 
2.
シシリエンヌ(パラディス)
3.
無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2BWV1003~アンダンテ(バッハ) 
4.
ソナタ ニ短調第2巻の5~アレグロ・スピリトーソ(スナイエ)
5.
夢のあとにop.7-1(フォーレ)
6.
村の歌(ポッパー)
7.
わが母の教え給いし歌op.55-4(ドヴォルザーク) 
8.
「恋は魔術師」~火祭りの踊り(ファリャ) 
9.
白鳥(サン=サーンス) 
10.
蝶々(ポッパー)
11.
メロディ ヘ長調op.3-1(ルビンシテイン)
12.
夜想曲 嬰ハ短調 遺作(ショパン)
13.
グラナディーナ(ニン)
14.
エレジー ハ短調op.24(フォーレ)
15.
ハバネラ形式の小品(ラヴェル)
16.
熊蜂の飛行(リムスキー=コルサコフ)



背筋をぴんと伸ばし、一点一画おざなりにしないで書き上げられた、「楷書」のチェロ。

アルバムは、情熱的な曲想の「ゴイェスカス間奏曲」で始まる。
落ち着いたテンポを維持し、情熱に流されるところは一切無く、一音一音、ぴしりと弓を返して弾き進めていく様子が目に浮かぶようだ。その音には隅から隅まで血が通い、深い息遣いが伝わってくる。
生真面目なのに、新鮮。

「夢のあとで」「白鳥」などの遅い曲では、情に流されないよう、テンポを引き締め襟を正す。
その一方、ルビンシテインの「へ長のメロディ」のような、普段はさらっと速く流す洒脱な音楽でも、落ち着いてじっくり歌い込み、「なめたらあかんぞ」と、曲の真価を改めて見直させたりする。

ショパン「夜想曲 嬰ハ短調」が入っているのが、嬉しい。
ネコパパの大好きな曲である。

このピアノ曲がチェロで弾かれるのは、珍しいのでは。
ヴァイオリンによる演奏では、有名なジネット・ヌヴーの逸品があったけれども。
感傷的なテーマのあとに、昔を懐かしむような中間部があらわれる。ここでヤニグロ、薄墨色に陰りを帯びた、絶妙の音色を引き出している。
息を呑むような瞬間。
ウィーンのパウムガルテン・パレスでの録音も良好。60年代によくある、直接音中心の録り方で、、楽音にぴたりとピントが合っている。

 
アントニオ・ヤニグロ19181989)はイタリア生まれのチェリスト、指揮者。
ミラノとパリで学び、ソリスト、室内楽で活躍。戦後はユーゴスラヴィア、ザグレブに定住し、第2の故郷とした。音楽院の教授、ザグレブ室内管弦楽団の主宰など多方面で活躍した。
しかし70年以降、神経症でチェロ演奏が次第に困難となり、プレッシャーからアルコール依存を深めたという。
ネコパパが彼の名を知ったのも、指揮者としてだった。当盤はソリストとしての彼の盛期を記録した貴重な一枚。
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yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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