まさに熱情そのもの

ネコパパは、ピアノ・ソロの曲はちょっと苦手。
聴くものといったら、ベートーヴェンのピアノソナタとドビュッシー、この二人のものだけ…そんな時期がずいぶんと長く続いた。
そこから、モーツァルト、ラヴェル、バッハ…と少しずつ広がってはきたが、
リスト、ショパン、シューマン、ブラームスあたりは、いまでもやっぱり難しい。進んで聴くのは、かなりしんどい。
ショパンの舟歌など、特別に好きな曲はあるのだが。
 
ならむしろ、セロニアス・モンク、ビル・エヴァンス、ハンク・ジョーンズなど、ジャズのピアノ・ソロのほうが馴染みやすい。
協奏曲はいいのに…
 
そんなネコパパだから、ピアニストの個性の違いを聞き取るのも、かなり頑張らないといけない。
でも
先日マントさんに教えてもらったアリーヌ・イザベル・ヴァン・ヴァレンツェン。
このひとのピアノは、凄いな。
 

 
ディスクユニオン製作の復刻CD。
曲は『月光』『悲愴』『熱情
いわゆる三大ソナタと呼ばれるもの。1948年録音のSPで、個人所有の仏コロムビア盤からの復刻。なので、針音は盛大。
それでも、切れ味のあるテクニック、鋭い打鍵は、とても良く伝わってくる。
マントさん持参のの10インチ盤に含まれていた『悲愴』
とくに第3楽章は緩急自在の即興性に満ちた演奏で、圧倒されたのだが、
当CDに含まれている、ソナタ第23番『熱情』の凄まじさには、もうすっかり、参った。
 
第3楽章。これは速いとか、切れ味がいいとか、そんなレベルじゃない。
 
「音楽は、遅くしたら、その分は速くして取り返さなくちゃいけない」
ピアニストで文筆家の青柳いずみこさんが、どこかでそう書いていた。
では、速くしたら、その分は、やっぱり遅くして取り戻す、というのが演奏の鉄則なのだろうか。でもバレンツェンは、そんなルールに従っているんじゃなく、湧きあがる思いに任せて弾いているように聴こえる。
 
多くのピアニストが一気に速くして「熱情」のほとばしりを表現しようとするコーダでも、
二つの和音をむしろ遅く打ち鳴らし、次の瞬間、音の連なるパッセージを俊足で、一層の加速を加えて駆け抜け、間を取り、遅くなる。そして再び駆け上がる。
それはもう、やりすぎなくらい。
でも、これこそはベートーヴェンらしい過剰さ、というものじゃないか…
 
バレンツェンは、50年代、ベートーヴェンのソナタ全集をレコーディングしたという。
全32曲を『熱情』のような表現意欲で弾きとおしているとしたら、すごいことになっているはずである。そ
してこんな個性派の彼女が後期のソナタを弾くときは、どうするのだろう。
聴いてみたい気がする。
 
それにしてもなぜ、この人の名を聞くことが、これまでなかったのか。
音楽の世界には、まだ不思議なことがたくさんある。
 
 
 
 
 
 
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yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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