月と星の夜のジャズ


夏の夜…
といっても明るいうちから始まったジャズライヴでしたが、
会場のココニコ広場は次第に夜の色につつまれていき、「ジャズの夜」の空気が濃くなっていく。
第2ステージ、3曲目。
それまでの軽やかな空気を一変させるような、尺八のソロが、ゆっくりと奏ではじめたのは…
月の砂漠』の旋律です。

フライデー・ナイツ・オールスターズに、ひときわの個性を加えている尺八奏者、MTさんの、渾身のソロ。
ヴィヴラートのかかった、長く伸ばされた音にこめられた、漆黒。ジャズのジャンルを飛び越えた、強靭な音の流れ。
そっと入ってくるリズムセクション…やがてリーダーのOさんのトランペットと、sige君のテナーサックスが、速いテンポを導入しつつ、掛け合いを始めます。
ストレートに歌うOさんに対して、早口で、つっ込みを入れるように応じるsige君。
音楽は熱を帯び、すっかり軽やかなジャズに変貌しています。



続く4曲目。
豊橋のライヴハウス「チェロキー」のマスター、STさんのアルトサックスをフューチャーした『私の彼氏』
STさんのサックスは、60年代のフリースタイルを思わせる「尖り」のある切れのよさが魅力です。
でも今夜は…
MOさんのピアノのアルペッジョに乗せてはじまったソロは、情感に満ちたものでした。
テーマのメロディを短い音に切り崩し、こまっしゃくれた感じにするところはSTさんらしいけれども、アドリブでは一転して潤いのある歌に。途中そっと音を緩めるなど、繊細な抒情が心をくすぐりました。
いやあ年輪、ですねえ…
その情感を引き継ぐようにメロディアスな、MOさんのピアノ。
そしてbassclef君のベース・ソロ。
STさんとは対照的に、原曲のリズム、メロディーを生かした、骨太の゛熱血゛ソロを刻み込んでいきます。
締めくくりはSTさんの無伴奏カデンツァ…
 

When the mellow moon begins to beam,
Ev'ry night I dream a little dream,
And of course Prince Charming is the theme,
The he for me.

 
このガーシュインの名曲『私の彼氏』も「月の光」で始まる歌詞を持っているんですね。

メロウな月が光を落とすころ、私はいつも小さな夢をみる…

そうです。
今夜の「ココニコ・ジャズ」は、月と星にちなんでの曲を中心としたプログラム。
リーダーのOさんのセンスは、星だけに光っていました。
 

モーニン
愛だけがすべて
月影で逢いましょう
星影のステラ
枯葉
サム・アザー・ブルース
スクラップル・フロム・ジ・アップル
フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン
月の砂漠
私の彼氏
ファイブ・スポット・アフター・ダーク
ウォーター・メロン・マン
 

さあ…どの曲が月と星に関わっているのかな?

『私の彼氏』みたいに歌詞を見ないとわからないのもあるし、『枯葉』のアドリブにそっと『フライミー・トゥー・ザ・ムーン』を紛れ込ませたりする…という芸もあり(MTさんは「そうじゃなくて、あれはコードが…」と言っていましたが、ネコパパの耳はごまかせません。コードって何?)凝りに凝っていました。
 
全員のアンサンブルによる『モーニン



トランペット、尺八、アルトサックス2名、テナーサックスにバスクラリネット。6管編成のパワーが炸裂。

ボサノバのリズムに乗って『愛だけがすべて』。
尺八によるボサノバも粋ですね。
月影で逢いましょう』…NさんのアルトサックスにOさんのトランペットがからんで、ミディアムテンポで軽やかな対話が繰り広げられました。

星影のステラ』。MAさんのバスクラリネットが低音を聞かせたスローテンポでソロを奏で、続くsige君のテナーからミディアム・テンポに移行。
空気の色がさっと変わる、これこそジャズならではの心地よさ。



枯葉』は、 (アーマッド・ジャマルをパクって) マイルス・デイヴィスがアレンジした、おなじみのリズムにのって、心持早めのテンポで演奏。
ギターのYMさんがソロで聴かせた、鋭くつっつくピチカートがひときわ印象的でした。

Sige君フィーチャーの『サム・アザー・ブルース
年季を重ねた余裕が音に。リズムの合間を縫って、鋭く短くしゃべり、間合いを入れる。凝縮感のあるテナー。
でも、おい、そのやたらに上がる左足、なんとかならんか。
MOさんのピアノソロ、ここでは後半の高まりのアドリブが冴えていました。

チャーリー・パーカーの名曲『スクラップル
トランペット、アルト、テナーの管だけによるテーマ提示が、バップ時代の熱い空気感を再現。ソロでは、Oさんのトランペットが、伸びのびと晴れやかに鳴り響き、最高のききものに。
フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン』はYMさんのギターをフューチャー。
曲想にあったリラックスしたアドリブが、聴き手を月の世界に誘います。

そしてステージは大詰め。
全員のメンバーにエレキベースも参加して、『アフターダーク』そしてNさんの豪快なドラムソロから突入する『ウォーターメロン・マン』。いつの間にか時間は大幅延長、月の星のジャズの夜は、いつ終わるとも知れず続いていくのでした…


 
そして、忘れちゃいけない。
当夜のもう一つのハイライトは、おなじみ、Yさんのヴォーカル。

ライク・サムワン・イン・ラブ
この素晴らしき世界
ラブ・ミー・テンダー

3つの曲に通底するのは「かけがえのないもの」でしょうか。
なかでも『この素晴らしき世界』は胸にこみ上げるものがありました。
 
月と星に照らされたこの世界…
でも、今や人の心も自然も、なんだかすっかり疲れきり、乾ききっているかに感じられる。

 

I seetrees of green, red roses too
I see them bloom for me and you
And I think to myself, what a wonderful world
I see skies of blue and clouds of white
The bright blessed day, the dark sacred night
And I think to myself, what a wonderful world

 
木々とバラ
空と雲、そして虹
祝福の昼と神聖な夜
この素晴らしき世界を作り出すのは…歌を愛するもの、歌に愛されるもの



 
Yさんの歌をききながら、ネコパパはそんな言葉を思い浮かべていたのです。

月と星の夜のジャズ。
すてきな一夜でした。
フライデーナイツオールスターズのみなさんに、乾杯!
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コメント

コメント(8)
No title
今晩はネコパパさん。いつも遠いところをありがとう。「月の砂漠」、「ザ・マン・アイ・ラブ」、「ホワッタ・ワンダフル・ワールド」…詩の趣とそこに込められた思いに触れながら、当日の白眉であった演奏を浮き彫りにして記されている文章を読み、またまた感激いたしました。当日は暑かった。でもメンバーの熱気と情熱も熱かったです。聞いていただき、本当にありがとうございました!

sige

2012/07/25 URL 編集返信

No title
つきあっていただいて本当にthanksです!
ライブの模様をこんな風に素敵なブログ話題にしてくれてとても嬉しいです。
毎回、見に・聴きにきてもらって、ライブの印象的な場面にスポットを当てつつ、全体の記録ドキュメントとしてもうまくまとめられていて感謝です。
前回から音響PAを担当してくれているT田さんの「上げすぎず、下げすぎない」PA具合も、聴いている方に好評のようです。ライブの方は、個人フューチャー曲と全員参加曲を混ぜて、飽きないようにしたつもりですが、90分にちょっと詰めすぎた感もあり、聴いてる方には、ちょっと疲れたかもしれませんね(笑)次回以降、中身の演奏の方も音響に負けないようにがんばります(笑)
bassclef君より yositaka訂正

yositaka

2012/07/27 URL 編集返信

No title
sige君
熱い演奏、楽しませてもらいました。打ち上げ会の「グリーンドルフィン」がまた素晴らしかった。次も期待してます。

yositaka

2012/07/27 URL 編集返信

No title
bassclef君
全曲演奏しっぱなしのbassの大変さもいつも感じています。打ち上げではエレキbassも弾いたり大活躍でしたね。手に無理がかからないよう、気をつけてね。

yositaka

2012/07/27 URL 編集返信

No title
ネコパパ様
いつもありがとうございます。
いつもながら、すべての音楽ジャンルに対する深い造詣と文学者の眼、そして長年にわたるSigeさん、bassclefさんとの親交のなせる業(なのか?)
構成意図やアドリブフレーズのアイデアに至るまで「仕掛けは先刻お見通し・・・」で、ネコパパさんが聴衆だと緊張感一杯です。
でも、ネコパパさんの愛情あふれる温かいコメントは、われわれ全員が勇気づけられ、自分でも気づいてない部分を呼び覚まされ、またやる気になってしまいます。「誉めて伸ばす」・・まさにネコパパマジックですな。
今回(前回から)PAも盟友「変ちゃん」から、「豊田さん」に替わったこともサウンドの変化の一因でしょうか・・・・
ところで、わがバンド名は「フラーデー・ナイツ・オールスターズ」です。これからもよろしくお願いします。

ミーシャ

2012/07/27 URL 編集返信

No title
遅くなってすみません。
いつもいつも遠いところからお越しいただき、ありがとうございます。
そして本当に本当に、毎回素敵にご感想を頂戴し、感激でいっぱいです。ありがとうございます。
今後とも、まだまだ至りませんが、何卒見守ってくださいませ。
ありがとうございます。
感謝。
yanagi

yanagi

2012/07/27 URL 編集返信

No title
ミーシャ様
グループ名大ミス、失礼しました。それにしても今回のコンサートは格別に良かったですね。ミーシャさんのトランペットはもちろんのこと、全体の構成やグループを素早く的確にまとめていく手腕はさすがと思います。今後もますます充実しながらのグループ継続を期待していますよ。

yositaka

2012/07/28 URL 編集返信

No title
yanagi様
今回もイマジネーションに満ちた歌声に聴きほれ、刺激されました。音楽と言葉、この絶妙なコラボレーションには、いつも心を揺さぶられます。ジャズの歌には、通常の旋律重視の歌にない、何か特別なものがあるんですね。sige君とは長い付き合いですが、yanagiさんと演奏するようになって、確実に何かが変わったと感じています。彼を変貌させたものこそ、あの「歌の力」だったのでは、と思うこのごろです。これからも素敵な歌を!

yositaka

2012/07/28 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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