木の香りに響く歌

6月某日
音楽愛好家仲間のつながりで、今日は岡崎のkonken君のお宅を訪問。
konken君は建具職人で、自宅を兼ねた仕事場でもある工房の二階に、広い居間を持っておられる。
木の香りのするリスニング空間である。部屋を彩る作りつけのレコードやオーディオの棚、机など、多くが主人の手になる手作りの品々。
 

 
この日は、気の置けない仲間の集まりで、ネコパパは、わが友、豊橋のbassclef君からお誘いを受けたのだ。
 
参加メンバーは総勢6人。
岡崎のTさん、Sさん
春日井のG川さん
豊橋のMさんの4人は、ネコパパにとって初対面の皆様だが、音楽好き同士、簡単な挨拶でたちまち意気投合。
 
部屋には長年使い込まれたJBLのメインスピーカーのほかに、
konkenさん手づくりの「ランドセル」型のスピーカーが、これも手製のスピーカースタンドに乗せられて鎮座している。
 

 
昔のアメリカのスピーカーを、某オーディオ店に唯一つ残されていた古い現物を参考にして、復元したとのこと。
格子状に穿ち抜かれたフルレンジスピーカーの開口部分や、底光りする濃いブラウンの色合い、それに、さぞかし職人技が発揮されたと思われる、上面部分の二重の曲線が美しい。
これを岡崎のTさん手製の真空管アンプで稼動させると、高域の延びた、近代的なJBLとはずいぶん違う、本体の曲線と同じように、ゆるやかなニュアンスの乗った再生音が導き出される。
 
この日はお酒も入り、カートリッジ、アンプ、スピーカーの切り替えも楽しみながら
贅沢な音楽のひとときを楽しむことになった。
 
さて…盤による「音の違いの大きさ」については、bassclef君も自身のブログでしばしば(,熱烈に)言及しているところだが、今回も…
 
konken君愛聴の、ペギー・リー『Songs in an Intimate Style
録音は米デッカで、高名な『ブラック・コーヒー』に続く2作目のアルバムである。
タイトルどおり、普段の「おきゃんな姉さん」の軽やかなイメージとは一味違う、しみじみとしたバラードを集めている。
 
CDで聴いたときは何とも思わなかったのに…」
アナログレコードではまったく違って聴こえ、夢中になってしまった、とkonken君。
 
そんな思い入れもあって、彼は3種類の盤を所蔵。
そうなると、音盤好きの「聞き比べ虫」が、たちまち騒ぎ出す。
最初は米デッカ、7インチEP2枚組。これが多分オリジナルだ。
 

 
厚手の見開きジャケットを手にするだけで、もういい歌が聞こえてきてしまう。
続いて、愛好家の一番評価を得ているという、英ブランズウィク10インチLP盤。
 

 
そして最後は、EPと同じ内容の米デッカの10インチ。
 

 
デッカ盤の2枚は大きくは違わない。歌手を直近に、吐息が聞こえるような音。
でもEPは盤の回転が速い(45rpm)ためか、リアル感が一層強い気が。
一方の英盤、オーケストラの前奏から、広い空間が広がるようで、同じ録音と思えない。ペギー・リーの歌も、つやが乗るような豊かさが感じられる。わずかに聴き手と歌い手の間の距離が開いた、という感じだろうか。
Intimateな雰囲気があるという意味で、英盤の評価が高いというのも、納得できる。
けれども、ここに集まった人たちは、米盤好みという人が多いようだ。
ネコパパは…ちょっと決められないと思った。もしかすると、聴く日によって違うのでは…そんな気がしたのだ。
どちらが本当の音なんだろう。
 
盤の違いと同じくらいに、装置の違いにも、音は敏感だ。
真空管アンプ駆動のせいもあるのか。ランドセル・スピーカーで聴く音は、いっそう親密感に満ちていた。
 
もうひとつ、印象に残ったのはbassclef君の持参したマイルス・デイヴィスの名盤『リラクシン』
 

 
これと、G川さん持参の、同じく高名なレッド・ガーランドのアルバム『オール・カインズ・オブ・ウェザー』の違いだ。
 

 
どちらも、オリジナルか、それに近い初期盤。
「そういう音」が聴こえてくる。
JBLの引き出す活力あるサウンドに、この音のつくりは、良く似合う。いつも思うことだが、これで60年近く前の録音とは…
 
でも、同じ時期、同じ場所で、同じ録音技師、ルディ・ヴァン・ゲルダーの手によって収録されたものなのに、同じベーシスト、ポール・チェンバースの音が違う。
固く引き締まった、でもちょっと窮屈な感じに聴こえるマイルス盤に対して、骨太で厚みのあるピッチカートが迫るガーランド盤。
ベースに関しては、後者の方が断然いいと思うのだが、ゲルダーの考えは、きっと違ったのだろう。
ガーランドの音楽とマイルスの音楽、あるいはクインテットとトリオの音楽は、求めるものが違う…
そう考えたのかもしれない。
 
制作に関わった人々の気持ちが伝わってくるようなリアルさも、50年代の録音のいいところだ。
 
ネコパパが持参した盤では…これが最高だったかな。
 

 
北村英冶の盤はこれと、テディ・ウィルソン(P)と共演したトリオ盤を持っている。どちらもお得意の『サニーサイド・オブ・ザ・ストリート』が入っているが、音楽はずいぶん違って面白い。よりスケールが大きく、自由な飛翔感が感じられるのが当盤だ。
 
この明るいスイング感は、この仲間と、konken君のリスニングルームの空気にぴったり合っていたような…。
 
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コメント

コメント(2)
No title
やあ、yositaka君。岡崎の集まり~お疲れさまでした。記事のとおり、マイルスの「リラクシング」とガーランドの「オールカインズ~」この2枚での、ポール・チェンバースのベース音の聞こえ方・・・ほんとに違いましたね。
1956年(リラクシン)と1958年(オールカインズ~)の録音年に2年ほどの隔たりはあるけど、それにしても極端に「大きめ」に聞こえたのがガーランド盤、ちょいと控えめでよりソリッド(音色が膨らまない感じ)だったのがリラクシン。この違いについてにyositaka君の考察~RVG氏のバンド形態への音楽観~面白いです。ベース好きの私としては、1958年前後のガーランド(ピアノトリオという形態)でのチェンバースのベース音色・・・いろいろ聴いてみようと思います。

bassclef

2012/06/28 URL 編集返信

No title
bassclef君、楽しい会へのお誘いに多謝です。
『リラクシン』と『オール・カインズ・オブ・ウェザー』の組み合わせというのが、偶然ながらとてもいい。どちらも、ジャズ最盛期にありながら、ゆとりとセンスのある室内楽の味わいをもった作品です。当時のレッド・ガーランドのピアノ、躍動感を保ちつつ、心の琴線にふれるような粒立ちの心地よさがあって、見事。ちなみに1年前に録音された名盤『グル―ヴィ』でのチェンバースは、『オールカインズ』よりもいくぶんタイトな音に聞こえますね。

yositaka

2012/06/28 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

ご訪問ありがとうございます

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