『至高の新世界』

大府市楽友協会管弦楽団第34回定期演奏会
指揮 中村 暢宏

 
プログラム

ドヴォルザーク スラヴ舞曲 第1番
ドヴォルザーク 交響詩「水の精」
ドヴォルザーク 交響曲第9番「新世界より」
 
2012年5月13日(日)午後1時30分開演 大府勤労文化会館
 
 
 
小柄で機敏な動きの指揮者、中村暢宏が、袖から駆け込むように入場。「ヤッ」とばかりに掛け声を掛けて、オーケストラを起立させる。
指揮台にダン、と音を立てて飛び乗り、一礼。すばやくタクトを構える。
音楽を全身にまとったような、こんな中村氏の姿を見るだけで、「楽しい音楽の時間」の始まりの予感が会場を満たしていく。
 
終演後、アンコール曲の前に語った、指揮者のスピーチ。
 
「このオーケストラが『新世界より』を演奏するのは、今回が3回目になるそうです。ならば、と至高の『新世界』になることを目指しました。楽しんでいただけましたよね?」
 
至高とは…よくぞ、言ったもの。
でも、それは決して嘘じゃなかった。
細部まで凝りに凝った、夢中になって聞きほれるような、新世界交響曲』だったのだ。
 
第1楽章の序奏から、主旋律と伴奏のリズムが微妙に変わる。主部に入ると、短めに切った弦のフレーズが生き生きとしゃべり、トランペットは大きなクレシェンドをつけて高らかに歌う。
2楽章。コールアングレが見事な音色で『家路』のテーマを歌う。テンポは普通なのに、コールアングレのソロは速めに聴こえる。そうかとおもえば、テーマの再現では思い切り「タメ」をつくってゆっくりと歌いだす。
3楽章、ティンパニの思い切った強打が全楽器のエネルギーを全開に。
そして、フィナーレ。音の一つ一つが明瞭だ。ひとつも聞き逃さずにはいられない、と思わせるくらいに、個々の音が大切にされている。この曲唯一の弱点である、間延びしがちな中間部分も、コントラバスやファゴットの低音部に多彩な動きを与えることで音楽を「踊らせ」一気にコーダに持っていく。
 
交響詩『水の精』もよかった。
アメリカから帰国したドヴォルザークが晩年に作曲した、一連の交響詩のひとつ。ライヴではめったに聞けない。
「水の精」をあらわす主要テーマが、執拗に繰り返される。これが魅力的なメロディーではなく、リズミカルな「動機」なので、全体の曲調が地味に感じられる。あまり人気が無いのは、そのためかも。
しかし、中村氏のタクトは切れ味とドライヴ感があって、隠された魅力を引き出していた。「聴くべき音楽」であることを教えてくれる演奏。
 
プログラム冒頭と、アンコール曲は『スラヴ舞曲』。
最初と最後ではオーケストラの音の出方が違った。
活気みなぎるアンコールでの第8番に比べて、最初の第1番は、やはり「あったまって」いなかったことが如実。舞曲とはいえ、これらは交響曲のような構えの大きさを持った音楽。演奏者にも、緊張を強いるのか。
 
同行したsige君も、この日の演奏に大いに満足の様子だった。
団員であるKさんが、彼の旧友であることから、ネコパパも招待に預かっている。
そんなわけで、このオーケストラを聞くのも3回目だ。楽器のわからぬネコパパが言うのもおこがましいが、技量の向上は目覚しい。
楽員のみなさんの意欲と熱意には、感服の至り。大府楽友協会オーケストラの今後の活躍を、ますます期待し、応援したい。
 
もちろん、中村暢宏氏の個性的な音楽作りと「お調子者」ぶりにも。
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コメント

コメント(1)
No title
団員の方からメールをいただきましたので紹介します。

>自分自身も演奏しておりましたので、先日の緊張や高揚をあらためて思い出しました。
素敵な記事をありがとうございます。

音楽の言葉での再現は困難ですが、こんなお言葉をいただくと、また挑戦したくなります。これからも素敵な音楽を聞かせてくださいね。

yositaka

2012/05/17 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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