児童書を作る 別府章子さんの話①


8月2日
名古屋の読書運動推進の団体「名古屋図書館の学校」が企画した第一回のフォーラムに参加。

場所は、名古屋女性会館視聴覚室。参加者は50人ほどであった。

メインは偕成社編集部長 別府章子さんの講演である。

以下、講演メモ。


★編集者として

編集者の仕事について30年になる。早稲田仏文卒。「にんじん」「まむしを手に」に触発され子どもと本の領域に踏み込む。
両作品は「子どもと親の戦い」を描いたもの。これをテーマに卒業論文に取り組んだ。
そのころは仏文学部だけで150人の同期生がいた。今はすっかり規模縮小してしまった。

出版も変わった。活版からオフセットに変わる時期に入社したが、今はDTP(Desktop publishing、デスクトップパブリッシング 日本語で卓上出版を意味し、書籍、新聞などの編集に際して行う割り付けなどの作業をコンピュータ上で行い、プリンターで出力を行うこと)が普及。

作家との連絡もメールや電話が普通となり、直接会うことは少なくなった。以前は作家の住所を突き止めることも難しかったが、現在はホームページなどの連絡手段を持っている作家が多く、便利になった。
しかし問題もある。

★作家との出会い

作家との出会いは依然は雑誌、書店。基地の札かとの情報交換が主だったが、今ではそれに加えてネット、ブログ検索が増加。作家と直接の情報交換は減り、雑誌も衰退している現状。

ただし、編集部への投稿は膨大である。年間500作品の投稿がある。担当ごとに分けすべてに目を通しているが、返事・返却はなしです。ご承知を。

30年前、岡田淳さんの登場は、神戸のひつじ書房という書店を通じて。そこで偕成社の販売担当者とコンタクトし、世に出ることに。

上橋菜穂子さん。自力で書いた500枚を出してくれそうな出版社を探して本社へ。浜たかやの作品を出版しているのを見てここならと思われたという。その作品は手を入れ350枚にして出版の運びに。
デビュー作『精霊の王』である。

近年では『封神演義』『西遊記』の渡辺仙州さん。初めてワープロ原稿で投稿してきた人で、見事な筆致に早速出版へ。ところが会ってみるとなんと高校生だった。
今もまだ25.6歳。京都大学を出て、ライトのベルで活躍中である。

最近はホームページを通しての投稿も多く、海外在住の日本人から優れた海外作品を紹介されることも多くなった。

★出版までの道のり

出版が決まり、執筆の運びになると、打ち合わせ。ここで直接お会いしての打ち合わせが始まることになる。
保父さん経験を生かし、おもちゃ作家もしながら『もしかしたら名探偵』シリーズを書き次ぐ杉山亮さん。
話し合いを進めるうちに、エラリー・クイーンのような「事件編」「解決編」に分けたコンセプトでシリーズ化。

ちなみに杉山さんは絵心もあり、挿絵もぜひご自分で、との希望だった。実はこれは大変。岡田淳さんもそうだが、文章が完成してから絵に入るため、出版までに二倍の時間がかかることになる。
話し合いの末に中川大輔さんに依頼することに。この人は絵が専門ではなく、会社員をしながらの画業。児童書の仕事は本当に大変なのだ。

昔は編集者が写植と絵を貼ってページをつくっていった。しかし今はDTPスキャンを行い、Adobe InDesignというソフトでほぼ完成形態まで持っていく。

杉山さんはずいぶん手直しする。手直しも昔に比べ簡単だが、文字と絵を一緒に入れる場合は「出来上がりイメージ」が強く印象付けられてしまうため、直しにくくなることも。
プリントアウトはすべて作家自身にやってもらい、チェックを入れる。データ間違いも起こりやすいので、どれが間違いなく最終なのかを確実に押さえなければならない。

DTPは読みやすい。以前はゲラにメモ書きや赤や青の修正を手書きで入れていたが、いまはコメント箇所がどこだったか、確実に修正されたのかも残りにくく、なかなか混乱する。

浜たかやさんはそれを心配して、修正箇所を色分けして出向されるなど、気を遣っていただけているのだが。
プリントアウトを作家自身にやってもらうというのも大変である。
長編ならプリントだけで一日かかることも。しかも完成までには最低三回は出さなくてはいけないのだ。

そのプリントアウト原稿にさらに朱を入れる。
訂正しやすく誤植も減少したのは大きな進歩だが。

さて本が完成する。
10月発売の本は8月に刷り上り。事前に100冊を新聞雑誌、関係者にまず送る。書店にも宣伝を回し、ホームページに上げる。月に二回は作家自身のコメントをアップしていく。

さあ、読者に情報が届き、本を手にしていただけるかどうか?


★めったに聞けない編集のお仕事。児童書の老舗 偕成社の編集メンバーは25人という。「当てる」ことを負わず息の長い本作りを続けている姿勢には頭が下がるが、取締役編集部長、別府さんの見識の高さがものをいっているのだろう。
後半は上橋菜穂子さんと「守り人シリーズ」をめぐるお話しが語られる。ファンは必読!!

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yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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