すごいおまけ

産経新聞が出している情報誌MOSTLYCLASSIC77(2月号)が、ヨハン・シュトラウスの特集を行っている。



 
この情報誌、バブルの時代にレコード店店頭に置かれた新聞形式のフリーペーパーから始まり、やがて冊子形式になって継続。内容は演奏会情報が中心だった。クラシック音楽の情報でこれだけのものを無料で作れるとは、日本の広告業界も凄い…と感じたりしていたが、やがてDVDつきの有料雑誌となり、そのDVDも付かなくなり…力尽きてきた。それでもまだ続いているのは、産経新聞とクラシック業界には謎の繋がりがあるようだ。
 
記事の内容は変化している。さすがに東京中心の演奏会情報では持たないとみてか、一般読者も楽しめるよう多様なライターを起用している。
冒頭にはドナルド・キーンがメトロポリタン歌劇場の近況について辛口の一文を書いているし、宇野功芳、山崎浩太郎、青島広志らが連載を持っている。「レコード芸術」の常連執筆者たちの起用も多いが、こちらのほうが本音を漏らしている気味があるのも興味深い。
 
さて「シュトラウス特集」の内容は、ウィーン・フィルのニューイヤーコンサートを楽しむための気楽な入門編。ウィーン・フィルの団員の日常とか、ワルツ全盛時代の歴史的背景など、周辺事情についての「読み物」が中心。しかし、肝心の音楽そのものについては、通り一遍の紹介があるくらいで個々の音楽の特徴や、作曲家ごとの作風の違いに迫る記事はあまりない。
演奏論にしても「ニューイヤー」を一度しか指揮せず、ワルツ演奏としてはやや特殊な個性と思えるカラヤンを持ち上げる論調が目立つことも抵抗があった。
 
まあ、ネコパパが購入した理由は、付録のウィーン・ヴィルトゥオーゼンの演奏する『ウィンナ・ワルツ名演集』のCDだから、それでもべつにいいけれど。

これが絶品。

ウィーン・ヴィルトゥオーゼンは1990年にウィーン・フィルの中堅団員によって結成されたアンサンブル。メンバーを見ればわかるように、いまではVPOの屋台骨といえるベテラン達の集まりである。
 
ヴァイオリン:ライナー・ホーネック,エーリッヒ・シャゲール
ヴィオラ:ハンス・ペーター・オクセンホーファー
チェロ:フランツ・バルトロメイ
コントラバス:ヨーゼフ・ニーダーハマー
フルート:ディーター・フルーリー
オーボエ:マルティン・ガブリエル
クラリネット:エルンスト・オッテンザマー
ファゴット:シュテファン・トゥルノフスキー
ホルン:フォルカー・アルトマン
 
ネコパパは1993年にこの団体のライヴに接することができた。
ロッシーニ、ヴィヴァルディ、ベートーヴェンの室内楽を中心としたプログラムで、とりわけクラリネットを演奏するエルンスト・オッテンザマーが陶然とするようなウィーンの響きを聞かせていたことを思い出す。
アンコール曲は『美しく青きドナウ』。
数人のアンサンブルから、あの間違えようがないウィーン・フィルの音そのものが浮かび上がるのには、本当に驚かされた。
 
このCD1992年と93年に録音。たぶん、ネコパパ所有のアルバム『ウィーン紀行』と同じ時期のものだろう。



曲目は
ヨハン・シュトラウス2世
美しく青きドナウ
『こうもり』序曲
チック・タック・ポルカ
ウィーンの森の物語
アンネン・ポルカ
ヨハン・シュトラウス1世
ラデツキー行進曲
 
制作はキャニオンクラシックスで、明記されていないが、録音は江崎友淑。彼らしい、個々の音色が克明にとらえられたデッカ調の優秀録音だ。
指揮者なしの小アンサンブルだから、演奏もリラックスした気楽なものと予想されがちだが、それは大違い。どの曲も真剣勝負の、攻めの演奏である。細部までしっかりと解釈され、気楽に流すような気配は微塵もない。同じフレーズが繰り返される場合でも、積極的な音色や強弱の描き分けがなされている。
もちろん舞曲としてのドライブ感も豊か。テンポが速いところで前のめりのリズムを刻むところなど、最高の「舞踏感覚」だ。
とりわけ『ウィーンの森の物語』は曲の素晴らしさを改めて発見させてくれる演奏だった。聴き物のツィター・ソロが入らないのは残念だが…

こんな猛者たちをリードしなければならないのだから、指揮者はさぞかし大変だろう。

「このCDをニューイヤーコンサートの予習にもお使いください」なんて気楽なことが編集後記に書いてあった。
この筆者、ほんとに聴いているのだろうか。これを予習に使ったりしたら、ひょっとすると本番が色あせて聞こえるかもしれない。
御用心の一枚である。
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コメント

コメント(8)
No title
こんばんは。新聞形式のフリーペーパー時代のモーストリー、今もうちにあります。
最初の頃は演奏会情報はほとんどなく、なかなか充実の内容だったと思いますが、有料化してからは一度も買っていません
ご紹介のオマケのCDが気になります。メンバーもすごいですね

Loree

2011/12/26 URL 編集返信

No title
レコ芸の付録のCDは聴こうとも思いませんが、これならちゃんと向き合って聴くことができますね。ようやく、BBCミュージックのような雑誌が現れたのでしょうか。本来ならこういう形の付録であってほしいものです。

geezenstac

2011/12/27 URL 編集返信

No title
『MOSTLYCLASSIC』。
地方に住んでいますが時々愛読したいます(笑)

昔は定期購読していました・・・

本当に豪華なおまけですね。
気になる内容です。
書店に行ってみますね。

情報有難う御座います。

2011/12/27 URL 編集返信

No title
ロレーさん
新聞形式は味がありました。かえって新鮮でしたね。あの形のままのほうが人気を保てたのでは…という気がしなくもありません。それにしても今も保存されているとは。そちらのほうに感動します。

geezenstacさん
BBCミュージックは以前から独自企画のディスクをつけていますが、それは自社音源をもっているからこそできることなのでしょうね。モストリーも毎月付けたいが、予算の関係で難しい、と編集後記に書かれていました。

流さん
流通方法の違いなのでしょうか。雑誌にCDをつけると、CD(DVDも)自体のみ販売するよりも安価にできるようです。『サライ』なども時々落語や昭和のラジオ放送を収録したディスクをつけるので、気をつけています。
最近では日経の出している雑誌『おとなのOFF』が、ティーレマンの第九フィナーレをDVDでつけているのを見て驚きました。これも購入しましたが、映像はまだ見ていません。

yositaka

2011/12/27 URL 編集返信

No title
こんにちは。

すごいおまけですね。

刺激されて、「美しく青きドナウ~シュトラウス 」という1000円盤を発注してしまいました。こちらには、チターの音色が入っていると聞きつけましたので。

今年は大変お世話になりました。児童文学について、また音源について…、新たな地平を提示していただいた用地感じています。ありがとうございました。

”音”故知新

2011/12/31 URL 編集返信

No title
音故さん
あけましておめでとうございます。
大晦日は、恒例のテレビ番組『ジルベスターコンサート』をちょっと見ましたが、カウントダウン曲の『ボレロ』は、番組始まって以来の5秒前終了になってしまいました。
指揮の金聖響氏は「興奮してしまって」とあせっていましたが、2011年の締めくくりとしてはある意味ふさわしかったかなとも思います。
こういうのを聴くと改めてこれまでの指揮者たちは離れ業を演じていたんだなと改めて思います。
元旦のウィーン・フィルも楽しみです。

yositaka

2012/01/01 URL 編集返信

No title
あけましておめでとうございます。
ばたばたと、日々を過ごしている身ですが、今年は竜のごとくに視線をまっすぐにして、視るべきものを視ようと考えています。いや、聴くべきものを聴くでした。
おまけの音源に関わるもので、チターの入った音源を拙ブログでご紹介しました。ご存じのものだとは思いますが、先日のおまけとどちらがよいのか、お訊きしてみたいものです。
ベームが活躍していた頃のウィーンフィルの音楽はとても好いようですね。ぼくは直接に聴いたことはないのですが、録音からそのような印象を受けています。

”音”故知新

2012/01/03 URL 編集返信

No title
音故さん
視るべきもの、聴くべきもの、読むべきもの、どれも大切ですね。心してアンテナを張り巡らせたいと思います。
貴ブログの記事、拝読しました。
おまけCDのほうは少人数編成なので、簡単な比較はしにくいのですが、指揮者なしでメンバーの自発性が生き生きと発揮されているよさがあります。
一方ボスコフスキー盤はVPOの音色が絶頂を極めていたころのもので、一種絢爛たる響きが楽しめますが、彼らとしては、やや気楽に流している風もあり、拙ブログで取り上げたヨゼフ・シュトラウスの曲のような前のめりの「乗り」とか細部の追及という点になると、個人的には物足りなさもあると思っています。
あくまでクラウス、クナッパーツブッシュ、バウアー=トイスルのような極められた演奏と比較してのことですが…

yositaka

2012/01/05 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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