シンポジウム「子どもの物語・大人の物語」報告①

報告が遅くなりました。
作家たちの貴重なディスカッションの様子を、ネコパパの走り書きでご紹介します。
言葉通りではありません。不明な点がありましたら、お知らせください。




これは日本ペンクラブの、関西での初めての催しで、
世界に先駆けて発足した「子どもの本委員会」の最初の会合となりました。
日本ペンクラブ前会長は「子どもの本こそが壁を乗り越えるツール」という意見を持っていたそうです。
ディスカッションは作家であり児童文学評論の活動にも精力的な
お引っ越し』『カレンダー』『ごめん』の作者、ひこ田中さんが進行役となって進められました。




ひこ
「子どもの本の作家が大人の本へ進出している。両者に境界線はあるのか。それでもいま、子どもの本を書くということは?
今江祥智さん、里中満智子さんには古い話、そして「真面目な話」をお願いしました。
予定されていたひこ田中の基調講演はなしで、いきなりひとりひとりにお聞きします。
里中満智子さんの『アリエスの乙女たち』『季節風』は、今もすばらしい作品。内容はこてこてのYA文学だと思います。


これらの作品、読者にどんな思いを持って書かれていたのか、その当たりからお伺いしたいと思います。」
 
里中
「ずっと大阪育ちです。
子ども、大人というわけかたを、私は当時していたかな。
子どものころから本は好きで、本を読んでいるとほめられた。でもマンガは、くだらないと決め付けられました。
手塚治虫に憧れ『鉄腕アトム』は大好きな作品でした。差別されたロボットたちの悲しい姿に泣きました。
ところが男子は、みんな「アトムは鬱陶しいから嫌い」という。彼らは『鉄人28』『矢車剣之助』『ストップ!にいちゃん』のファンだったのです。
-わかったぞ。君らは鉄人のリモコンがほしいのだろう。男の考えだ。自分の思い通りに動くロボットを操り世界制覇!
そこで私は男と女の考え方の違いが少しわかった気がしたのです。そして男女は決して同等でない、と。
大阪は、マンガにはことに厳しかったところで、たとえ手塚作品でも、見つかったら燃やされました。ロボットがしゃべるとは非科学的、脳が悪くなるというのです。
実際は、想像力がないと人は発展しない。しゃべるロボットを信じられない大人は成長しないと思いました。そこで、言われれば言われるほど、ますますマンガにのめりこむ。大人への不信感は増して「早く大人になって対等になりたい」と、そればかり思いました。
理不尽が通る世の中が悔しかったのです。
図書館の本も次々読みました。芥川龍之介『蜘蛛の糸』や太宰治『走れメロス』は子どもの本だと思った。蜘蛛の糸が切れないなんて嘘だ。一人でもだめじゃ。
ところが、そんな嘘がイメージの中では美しい。蜘蛛の糸のキラキラに触れたい、描きたい…
漫画家になれたときはほっとしました。デビューしてしまえばこっちのもの、あれほど文句を言った大人たちが「天才高校生漫画家」を、手のひらを返したように応援してくれる。
私が書きたかったのは主人公が、彼ら彼女らにとって「真剣な事態」にどう立ち向かうか、ということでした。登場人物は読み手よりも2~3才年上。女の子だから、という言い訳をしない物語をめざし「状況に泣く」少女は描きたくない。
努力なんかしなくても美しければよしとするのが当時の価値観でした。でも私は、自分で考える少女が描きたかった。編集者からはクレームの連続でした。
アリエスの乙女たち』『季節風』などでは性の題材を扱っています。でもすべて意味のあることとして描きました。遊びじゃなくて、責任を伴うものとして。結果、私の作品では受胎率が高いのです。
大人になることにわくわくさせたい、という思いで描いてきました。

ひこ
「次に今江祥智さんにお聞きします。70年代に児童文学に興味を持ったのは、今江さんがきっかけです。
とくに『ぼんぼん』には、びっくり。子どもの本でこれだけ戦争が描けるのか。



エッセイ集『子どもの国からの挨拶』に掲載されたブックリストの本を片っ端から読みました。
すごく幸せだった。
そして、今江さんの盟友で作家・評論家の上野瞭さんの勤める大学にも会いに行き、ここでもたくさんの本をお借りして読みました。
今江さんはいろいろな「シカケ」をしてこられたと思います。『ぼんぼん』という作品も、児童文学といっても、単に主人公が戦時下で子どもであった、というだけで、文学として一切の手加減はない。
児童文学の枠も大きく広げられた。「これも子どもの本です」といって、今でいうYA小説も(私たちを騙して)講演会や評論を通じて、次々に紹介された。
概念崩し」など、キャッチコピーも上手でした。
新しい作家たちを児童文学の中に生み出そうとする試みだったと思います。今江さんの手で岩瀬成子、長谷川集平、川島誠…多くの作家たちが世に出ました。
でも、そのあとを継ぐ作家が、なかなか…
雑誌『飛ぶ教室』の創刊も画期的でした。連載の場を作ることで、長編作品の創作を可能にしたのです。
また、『優しさごっこ』は、離婚を正面から取り上げた、日本の児童文学では最初の作品でした。」
 
今江
「そやなあ。僕はええ時代に生まれたと思う。いい編集(松井直)にも恵まれたし。ここにいる川島誠さんも、奥様の二宮由紀子さんも『飛ぶ教室』の時代に世に出た人やね。川島さんは性をしゃあしゃあと描くし、二宮さんは斬新なナンセンス。
児童文学といういい方は嫌い。漫画も含めてみんな「文学」でいいじゃないか。僕も子どものころから漫画は大好きだったしね。
自分も書き、自分の書けないものは人に書かせ、今までやってきた。
でも、まだまだ。あと十年くらいは長いものを書きたいね。それからあとは、短いものを…
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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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