『大地の歌』をライヴで体験

聴いてきました。交響曲『大地の歌』
20代の方が多い、若々しいアマチュア・オーケストラ。
しっかりとしたアンサンブルで、この難曲にまっすぐに立ち向かう姿は清々しいものでした。


マーラーの音楽は、ライヴ演奏がとりわけ「利き」ます。
それは、この作曲家が楽器の一つ一つに徹底して神経を通わせた曲作りをしていて、
音が鮮明になればなるほど、それがはっきりと明確になってくるためでしょう。
生演奏の良さを味わうには、絶好の音楽です。
『大地の歌』はそんなマーラーの曲の中でも、とびきりの名曲だとおもっています。
大いに期待して、席につきました。

指揮者井崎正浩の棒は明瞭で
曲の隅々まで目が行き届いたものでした。
その特徴は「溜め」と、鋭いリズム感。ここぞという箇所になると、煽るような棒さばきで、鋭いリズムが屹立します。「歌」が中心のワルターやバーンスタインの音源からは聴けない、新鮮な発想の音楽づくりなのです。

それが特に生きたのは、第4楽章『美について』と第6楽章『告別』。
前者では思い切った早いテンポで若々しい躍動感を生み出し
後者では長大で深刻な音楽というイメージを裏切るように
ハープ、オーボエ、フルート、ホルンを中心とするソロ楽器に煌めくような彩りを表出させる。

第6楽章の後半には長大なオーケストラだけの間奏部がありますが
そこは、まさに当夜の最大の聴きものでしたね。そこまで抑え気味だった音量を一気に上げて、手に汗握るような緊迫感を生み出していました。


この『大地の歌』、はたして「交響曲」なのか、という議論があるようですが、
こうして生演奏に接してみると、オーケストラ部分は決して伴奏の域にとどまるものではなく、まさしく交響曲そのものと感じられます。

そして、本来最大の喝采を浴びるべき二人の独唱者は、といえば、
さすがにプロ、晴朗な歌唱で無理に声を張り上げることもなく、きっちりと「語る」スタイルを貫きました。
しかし、オーケストラの生み出す、鋭く躍動するリズムには、ちょっと呼吸が合っていなかった…という観はぬぐえません。
特にメゾ・ソプラノ。終始楽譜にかぶりつきなのはともかく、第4楽章の「しゃべり」では、早いテンポについていけず、声が出なくなる箇所もあり、ちょっとドキドキしてしまいました。さすがに第6楽章は熱唱でしたが…


しかし全体としては、聴きごたえ十分の演奏会でした。
『大地の歌』はとてつもない難曲。しかし、類のない傑作だと改めて思いました。パンフレットに書かれているような「死の諧調」では決してない、生きとし生けるものの命の鼓動が伝わってくる名曲ではないでしょうか。
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コメント

コメント(4)
No title
こんにちは。このオーケストラのことは初めて知りましたが、結構重量級のプログラムです。前プロからして、凄いです。マーラーの方は室内楽的な繊細さが必要ですね。最後の「Ewig」と繰り返すところのオケは難しいと思います。

SL-Mania

2011/10/11 URL 編集返信

No title
前半のヒンデミットもめったなことでは生演奏に出会うことがない曲ですね。
おどろおどろしいタイトルとは裏腹に、新古典主義の作風できっちりまとめた「小交響曲」というべき曲。
今回の演奏は、前半あまり音が出ていなくて、ちょっとはらはらさせられました。でも、後半は調子が出て、気持ちの良いクライマックスを生み出していました。

『大地の歌』の最後、マンドリン、ハープ、チェレスタの織り成す音彩はこの曲の聴き所のひとつ。音のからみが手に取るようで、ライヴならではの美しさでした。
チェレスタの人は、休憩時間中ここの部分を必死でさらっていましたよ。

yositaka

2011/10/11 URL 編集返信

No title
アマチュアのオケのようですので、仕方がないですが、本番でさらっていると不安なのだな客にわかってしまってあまり感心しませんね。プロでもそんな光景みたことがあり、こうなると腹立たしくなります。マンドリン、ハープ、チェレスタの織り成す音彩にトロンボーン3本が東洋風の和音を乗せますが、これも難しいと思います。

スコアを見ると、結構音量の指示が細かいです。また楽器によっては極めて低い音を要求されていて、これもしんどいです。その一方、テューバは第4楽章に4小節しか音がないと思いました。

SL-Mania

2011/10/11 URL 編集返信

No title
SL-Mania さんは譜面にもお詳しいようで、うらやましい限りです。
『大地の歌』では、お腹にこたえる様なドスッという低音の打ち込みが随所に聞かれました。こういう音も、オーディオでの再現はなかなか困難なところです。
出番の少ない楽器も、待ちの緊張感は大きいでしょうね。

ステージでの練習の件。やはり観客としては「ネタバレ」をされているようで、あまりいい心地ではありませんでした。

yositaka

2011/10/12 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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