クリュイタンスのフォーレ、レクイエムSACD

エソテリック名盤復刻シリーズの最新作。
購入は、迷った。
以前入手して「これは自分には合わないなあ」と感じて手放した記憶があるからだ。
だいぶ以前のことである。
 
曲の美しさはたとえようもなく、またその名曲のもっとも有名な盤のひとつなのは知っていた。
しかし、以前にも記しているように、私はクリュイタンスなら1950年録音の旧録音、音は古いにしても、その清楚純朴な響きが好きで
どうして新録音はこんなに厚ぼったく、ゴージャスなんだろう、と感じていたのだ。
 
でも、ある予感がした。もしや、と感じさせる何かの…。
 

 
 
 
印象は、ずいぶん違った。
 
その大きな原因は、オーケストラの音だ。
合唱にうずもれてやや聞こえにくくなっていた各楽器の音が、このSACDではリアルな遠近感を持って再現される。
 
それは…クリュイタンスのラヴェルやベルリオーズのオーケストラ曲のディスクに見事に刻まれている、あのエレガントで、少しつや消しの、フランスの楽人たちが奏でる色彩感である。
音楽の鍵を握るオルガンも、個々の音が、手に取るように鮮明になった。
ピュイグ・ロジェ教授、畢生の名演だ。
 
以前の盤では、少し前に出すぎて派手めに聞こえていた、ロス・アンヘレスやフィッシャー=ディースカウの独唱も、十分な距離感を持って再現される。
 
「声」がでしゃばらない。
 
清澄さの不足を指摘されることが多いブラッスール合唱団の歌声もそうだ。
厚ぼったくて、フォーレの音楽を損なっているという批判もよく眼にする。とくに合唱関係者の人には評判が良くない。
確かに、ワーグナーのような、後期ロマン派的な歌唱といえばそうかもしれない。
でも、今回の盤では、歌唱がオーケストラとほぼ対等の音響バランスになったために、懐の大きな教会の残響と程よくブレンドされ、聴き心地の良いものになっている。
 
特に後半、ロス・アンヘレスの『ピエ・イエズ』が終わってから『イン・パラディスム』までは、遅い、一音もゆるがせにしない「心にじかに語りかけてくる」音楽が続いていく。
 
この演奏では「天上の音楽」が「地上の音楽」になってしまっている、だろうか。
でも、それは「地上すらも天上に変えてしまおう」とする、クリュイタンスの無謀な挑戦と読みかえてもいいのでは。
 
録音後、すでに半世紀が経過し、譜面の研究も進み、
原譜に多く他人の手が入ったとされる、この「第3稿」による演奏は、既に時代遅れなのかも。
それでも、ここにはもはや「取り返しのつかぬ」楽の音がとらえられていると思う。
 
JVCの音の名職人の仕事に、今回もやられた。
 
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コメント

コメント(2)
No title
結局、購入されたのですね。私も発売当日に買いましたが、まだ聴いておりません。既存盤と聴き比べてみるつもりでしたが、国内盤(HS-2088)を聴いてそれでストップしています。クリュイタンスの旧盤を聴いたことはないのですが、この演奏で十分満足しておりまして、特に2人の独唱者の素晴らしさに今回も聴き入ってしまった次第です。御記事を拝読し、ESOTERICさんのSACDを聴く楽しみが倍加しました。

なお、今回のリマスタリングは「テープヒスはあえて除いておりません」というところがポイントだと勝手に思っています。むしろ、これまでもテープヒス・ノイズはそのままにしておいていただければよかったかも……。もっともJVCの職人さん達の音づくりは、ノイズの有無にかかわらず素晴らしい仕事だと思っておりますが。

ハルコウ

2011/09/29 URL 編集返信

No title
ハルコウさん、そのテープヒスの件なのですが、「かなりのレベル」と明記されているにもかかわらず、聴感上、少なくとも私には気になりませんでした。
実際、テープヒスの大きさが気になるものはあります。例えばオーパス蔵のワルターVPOのマーラー、9番など。
でもこれは60年代ですし、年代相応の性能で録音されています。これを気にするのはちょっと神経質かな。ヨーロッパではノイズは不良品とみなされるそうですが…

yositaka

2011/09/30 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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