暴風下のオーディオフェアで

暴風警報にもかかわらず…
名古屋・吹上で開催の「オーディオフェア」に出かける。

 
時間の関係でお目当ての講演会は聞けず、レコードを漁ったり、出品ブースを冷やかしたりして時間をすごした。
この日の収穫は、高級オーディオメーカー、エソテリックの担当の方にお話が聞けたこと。
恰幅の良い、いかにも技術畑という風貌の人である。
この社が販売しているSACDのシリーズについてお尋ねしたのをきっかけに、貴重なお話をたくさんお聞きすることができた。
 
「エソテリックのSACDはとても音質がよくて、毎回楽しみにしているんです」
そうでしたか。ありがとうございます
「ところで前回発売されたベーム指揮ベルリン・フィルのブラームスの第1交響曲、ユニバーサルのSHM-SACDのシリースと重なってしまいましたね」
 

 
実は、あれは、うちの企画が先行していまして、ユニバーサルさんから是非にと頼まれ、了承する形で発売になったんです。マスタリングの方法もまったく違うし、聞き比べていただければ、と
「私はエソテリック盤しか買わなかったんですが、すばらしい音質だと思います。ジャケットの内容もいいですし、手間をかけていますね」
マスタリングを担当しているJVCカッティングセンターの杉本さんたちは、本当に趣味でやってるような人たちで、細部まで手間を惜しまず、機材も吟味してやっています
「マスターテープは、本社から取り寄せているのですか」
そうです。当社は昔からヨーロッパの各社と関係が深いですし、社長も懇意なので、無理を聞いてもらえるのです
「でも費用はかかりますよね」
1000枚限定で、これまで発売したものはすべて完売です。今後も継続していきますが、正直、盤の製作からジャケットまでこだわっているために、完売しても赤字なんです
「それでも続けるのですか」
宣伝の意味でもね。ジャケットに当社のブランド名が入っているだけで、効果は大きいんです。SACDが市場で息を吹き返してきましたが、これこそ狙っていたことなんです。当社はSACDブレーヤーに特に力を入れていますからね」
今度のフェアの各メーカーの出品を見ても、PCオーディオへの流れが強まっていますよね。パッケージソフトは限界という話も聞きますが
「いや、ソフトはなくなりません。人は形があるものを求めるんです。品質さえ良ければ、必ず売れ、採算は取れます。CD、SACDはもちろん、LPだって現在も作られているんですから
「ところで今後の発売ですが、ソニーなど、SACDを開発したところなのに、まったく出してきませんね。グレン・グールドやブルーノ・ワルターなどの音源を出せば必ず売れると思うのですが」
メジャーレーベルは全体の売り上げのことがありますからね。売り上げの少ないもので冒険はできない、ということなのでしょう。でも、実はソニーと交渉はしていて
「え?」
ワルターの音源は、すでにマスタリングを完了しています。あとは発売するだけという状態になっているのです。もう少しすると、いいニュースが出せるかもしれません
「それは本当に嬉しい。これからも応援してますよ」
 
そのあと、エソテリックのブースで音を聞かせてもらった。
スピーカーは先日発売されたばかりの英国タンノイ、キングダム・ロイヤルという最高級機だ。一台で300万円くらい。
 

 
ワーグナーの『ニュルンベルクのマイスタージンガー』前奏曲が流れる。
壮大なフォルティシモが何の無理もなく、当たり前にそこにある音という感じで響く。高品位の音というのは、空気のように自然で、耳に優しい音なのだ。
システムの横に、単品の「ルビジウム・マスタークロックジェネレーター」が置いてある。オーディオに関心がなければ、一体何の役に立つのかわからない装置だろう。
使っていても、とくに変わったところはない。当たり前に聴いてしまいますね。でも、これは外してみるとわかるのです。外して聴くと、あるべきものがそこにない、と誰もが感じるはずなんです。そのあるべきものを生み出す箱なんです
なんだか、哲学のような話になった。
 
 
今回の買い物。LPレコードばかりを7枚。
 
まずはジャズ・ピアニスト、セロニアス・モンクの米コロムビア移籍第1作。
 

 
私が聴いているモンクのレコードは、ブルーノート、プレスティッジ、リヴァーサイド時代のものが多く、コロムビア時代のものはあまり聴いていない。それでは、と購入。
このアルバムは、ピアノの響きにとがったところが抜けて、とてもリラックスした演奏になっている。ソロ演奏も聴き応えあり。スタンダード曲も含めた選曲も良く、楽しめるアルバムだ。ただし、モンク以外の3人の演奏はちょっと特徴に乏しい感じもする。
 
 
次はマイルス・デイヴィスの『クールの誕生』以前に存在した、真のクール・サウンドをはじめて記録しことで、発売当時話題になったらしいクロード・ソーンヒル楽団の一枚。
 

 
録音は1941年から47年と、とても古いのだが、録音も意外に良好で、洗練されたおしゃれなアンサンブルと、抜けきったリズムが小気味よい。でもムソルグスキーの『展覧会の絵』が出てきたり、ジャズらしくない音楽でもある。SP音源を多数集めたもので、アルバムとして通して聴くにははまとまりに欠ける印象も。
 
 

そして大物。
旧ソ連の名指揮者エフゲニ・ムラヴィンスキーがレニングラード・フィルを率いて行った、1978年ウィーン芸術週間での2回の演奏会の模様を収めた『ウィーンのムラヴィンスキー』

 
この4枚組は、1965年のモスクワ・ライヴ以来13年ぶりの新録音ということで、発売当時話題になったもの。
当時セットで1万円、さすがに私は手が出なかった。
ショスタコーヴィチとチャイコフスキーの「5番」、ブラームスの「2番」シューベルトの「未完成」にウェーバー「オペロン序曲」と、選り抜きの曲目だ。
ところが音質があまり良くない。音象は遠くてこもっており、当時のカセットレコーダーの自動録音のようにレベルが不安定。これで演奏のよさを聞き取るのは一苦労だ。
現在の拙宅の再生装置なら少しはましに聞こえるのでは、と思ったが、やはり駄目なものは駄目だ。まあ、持っていて記念にするくらいかな。
後の情報で、これはビデオ収録の音を取り出したものという説がある。では肝心の映像はどうしたのだろうか。
 
 
 
 
 


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コメント

コメント(2)
No title
9月20日発売は、クリュイタンス指揮のフォーレ:レクイエムとブリュッヘンのヘンデル:フルート・ソナタ集だそうですが、ワルターの音源というのが非常に気になります。ESOTERICさんのサイトでは時間が経つと「生産終了」の表示が出るので、いったいどのくらいプレスされているのだろうと思っていたのですが、1,000枚なのですか。この数字は多いのか少ないのかわかりませんが、ESOTERICのSACDに希少価値を見出しました(笑)

ベームのブラームス第1番のSACDについては、ユニバーサル盤はエミール・ベルリナースタジオの最新リマスタリングを用いたとのことですが、どれを読んでもESOTERIC盤の評価が高いようですね。ESOTERICはDG音源をSACD化する際には同スタジオのマスターを使用しているはずなのですが、今回はESOTERICの音づくり職人さんに軍配が上がったようで若干複雑な気持ちがします(笑)

いろいろ参考になりました。

ハルコウ

2011/09/08 URL 編集返信

No title
ハルコウさん、
こんなときに限って、思わぬ出会いがあるなあと思いました。
あのシリーズは限定という条件があって可能な企画で、貴重品には違いないですね。赤字でも続けるという気迫がすごい。
次回発売のフォーレ、実はどうしようか迷っています。クリュイタンスなら、私はモノラル旧盤のほうがずっと好きなので…
ヘンデルも既出盤を持っています。でも、私にとってヘンデルは関心はしても感動しないタイプの作曲家なので、結局死蔵になってしまいます。パスかなあ。
ベームのような例があると、ますますユニバーサル盤から遠ざかってしまいますね。ユニバーサルさんも、国内でやるとか、エミール・ベルリナースタジオに足を運んで監修するなどの努力が必要かも…社内事情も知らないで決め付けるのも良くないですが。

yositaka

2011/09/09 URL 編集返信

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yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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