ハンガリーからの煌めき

先日の「Palm Leaf」の演奏会でお誘いを受けた室内楽のコンサートに出かけた。
暑さを忘れるような、一夜になった。



 
一曲目は、大震災追悼の曲。
シューベルトの『アヴェ・マリア』。
 

ヴァイオリンの松本さんは厚みと余裕のある音色で旋律線を決め、
チェロの新井さんは、がっしりとした直線的な響きでアンサンブルを引き締める。
そして近江さんのピアノは、麿実のある純白と言ったらいいのだろうか、細部まで神経が通った温かさを持ちながら、前のめりに走り込むような俊敏さも併せ持った音色を響かせる。

 
「気心の知れた、いいアンサンブル」と感じた。

プログラム一曲目は予定が変更され、バッハの『パルティータ第2番』から、終楽章『シャコンヌ』のみの演奏となる。
この大作を全曲聴けるというのを楽しみにしていたネコパパ、ちょっとがっかりしたのだが、
結果的には、成功と思った。
冒頭は少し速すぎる気がしたが、すぐに耳は、バッハの音楽だけに満たされた。
長大な楽章だが、松本さんの緊張感にみちた音楽は最後までゆるぎなく、実に聴きごたえのある15分に。

これは、本当にすごい音楽。聞くたびに、音楽の力、音楽の存在価値を思い知らされる。
たったひとつの楽器によって奏でられていることが信じられない、「時を超えた音楽」。
松本さんの奏法は、やや速めのテンポを除いては、ストレートな演奏スタイルを貫いたもの。流行りのピリオド奏法などは全く感じさせない。それがいい!
 
つづいてチェロとピアノのデュオで、ミクロス・ローザの『チェロとピアノによる二重奏曲』
はっし、とチェロの弦に弓をたたきつけ、その勢いで高原を疾駆するような、野性味のある楽想が魅力。
名古屋フィルの次席奏者を務める新井さんのチェロは、率直で俊敏。すべての音に自信が満ち、音楽が手ごたえをもって聴く者につたわってくる。
 
後半は、まず近江さんのソロでリスト3曲。
ネコパパはリストが苦手だ。聞いていて、音楽が今どこをどう進んでいるのか、すぐにわからなくなる。
でも、今夜はそうじゃなかった。
近江さんの底光りするようなタッチのせいか、すんなりと聴きこめた。
とくに三曲目の『ハンガリアン・ラプソディ第2番』。
近江さんの演奏は、予想に反して軽く、あっさりとはじめられた。
これは豪快なショーピースというよりは、バロック時代の緩・急・緩の「フランス風組曲」のような、小ぶりなスケールの中で、即興的な音の戯れがきらめく。まるで音の宝石箱のような音楽。
 
そしてメインは、再び三人での演奏。
メンデルスゾーンの『ピアノ三重奏曲第2番ハ短調。4楽章という大規模な曲で、有名な「第1番ニ短調」にくらべて、演奏の機会は少ないという。

メンデルスゾーンというと、『真夏の夜の夢』『フィンガルの洞くつ』交響曲『イタリア』など、小ぶりなロマン派という印象。
いわゆる「大作」の作曲家ではないような印象だが、この『トリオ第2番』、暗い情熱があふれる大作である。第3楽章に、得意のスケルツォを入れているのも作曲者の野心と自信を感じさせる。
演奏は、そんな音楽ぴったりの、情熱にあふれるもの。
曲の鍵を握る近江さんのピアノは、音色もタッチも、リストよりもいっそうの適正が感じられる。
まさに、水を得た魚のように、他の二人を強くリードしていく。それに負けじと歌い交わし、ぶつかリあうヴァイオリンとチェロ。音楽は先に行くに従って響きは強く、厚みを増していく。
オーケストラのコンサートでもなかなか聴けない迫力。ライヴ感あふれる演奏となった。
 
続くアンコール曲がまた素敵だった。

初めにブラームスの『ハンガリー舞曲第5番』。
そしてレハールの『メリー・ウィドゥ・ワルツ』
大作を終えた後の音楽家の奏でる音楽は、ほんとうに最高の、ジャム・セッション。
 
開演7時、終演9時20分と、長いコンサートだったが、中身の濃い、熱気あふれた演奏は時間を忘れさせた。若き3人の今後の演奏活動に心から、期待したい。
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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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