ブラームスの1番、二題

先日EMO君からすごい音源が送られてきた。
 
オットー・クレンペラー指揮ケルン放送交響楽団
1955年10月に演奏されたライヴ録音である。
曲は、ブラームス 交響曲第1番。
レーベルはメディチ・マスターズ。
 

 
緊張感の高い熱演で、 すっかりひきこまれてしまった。

テンポは同じころに録音されたフィルハーモニアとのセッション録音より速め。
音楽は、独特のクレンペラーサウンドに隅々まで満たされ、
まったく新しい曲を聴くような感覚に襲われる。
 
でもこれは、いつもと少し感触が違う。
その理由は、指揮者がしばしば見せる、木管を浮き立たせるために他の声部を抑える、といった操作が当盤では目立たず
全体が木管の響きを中心に彩られた、ひとつの音色となってくっきりと響き渡っていること。
単に音の分離がよいとか、逆に溶け合っていないとか、そういうことではなく
明瞭なままに調和して、あたかも年季の入った木製の調度品を見るような音を生みだす、といった風情。
随所に、クレンペラー自身の発するうなり声が聞こえるのも異例だ。
オーケストラの反応のよさ、一期一会の音に、指揮者本人も高揚し、酔いしれているかのようである。
 
なんというすばらしい曲だろう!
正直、(この曲では)めったに味わえない感動だった。
 
雑談をひとつ。
これは昔、キングレコードがクナッパーツブッシュ指揮ドレスデン・シュターツカペレと銘打って、LP発売 したものと同じ音源といわれている。
新発見盤として店頭に並べられていたのは、いつのことだったか。
これがじつはクレンペラーの演奏(つまり当盤)だったことはいつ知ったのか、記憶にない。
日本ではいつの間にか店頭から消えていたが
じつは、今でもいくつかのマイナーレーベルから、堂々とクナッパーツブッシュの指揮として販売されている。
HMVのスタッフが問い合わせたところ、「間違いない」と頑固な返事が返ってきた、などというコメントも見たことがある。しかし放送局を明示した当盤のような「正規盤」があるのに、売り続けていいのだろうか。
ちなみに、クナッパーツブッシュが指揮したブラームスの1番は、存在が確認されていないそうだ。
クナさん、嫌いな曲だったのかな?
 
 
ブラームスの1番といえば、グラモフォンのカール・ベーム指揮ベルリン・フィルの有名な盤があるが
近くSACDで出るという。
しかも二社から、まったく異なったマスタリングで出るというのだ。
 
まずは7月5日発売のユニヴァーサル盤。音匠仕様SHM、通常のCDプレーヤーでは再生不可のシングルレイヤー盤。
価格は4500円。このジャケット、ファンが喜ぶ「赤ステ」ってやつだ。
 

 
つぎは7月10日発売のエソテリック盤。JVCマスタリングセンターで日本人の復刻名人たちが仕上げたシリーズの一枚。これは通常のCDプレーヤーで再生可能なハイブリッド盤。
価格は3300円。
 
 

 
両者とももちろん正規盤。これまでこのような「競合」は慎重に避けられていると思っていたのだが、これはどうしたことだろう。
 
ネコパパはこれを従来ものCDと、昔懐かしい国内版のLPで架蔵している。
 
購入は迷うところだ。でも、誘惑に負けてしまうかもしれない…
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コメント

コメント(2)
No title
ベームのブラームスの一件、補足します。
ネコパパは、誘惑に負けてエソテリックを購入。

そして両盤発売後、各サイトや雑誌『レコード芸術』では、比較試聴の結果が多くレビューされました。
結果は、エソテリック盤圧勝、ユニバーサル盤完敗、と判断していいでしょう。
この結果は重要です。なぜなら、ユニバーサル自慢の

シングルレイヤー
SHM素材

という二つの特徴は、ハイブリット普通素材に比べて優位であるということを意味しない事実があきらかになってしまったからです。
やっぱり、音質は素材や方式ではなく、マスタリング技術者の音感と技量で決まるもののようです。
購入に当たっては、そのことを意識しなければ、と改めて思います。

yositaka

2011/08/22 URL 編集返信

No title
(続き)
ユニバーサルのすべきことは、そのマスタリング担当者の氏名を製品に明記することです。どうやらこのシリーズ、「エミール・ベルリナー・スタジオ」によるリマスターが唄ってあるだけらしい。同スタジオはかつてはグラモフォンの一部門でしたが、いまは別会社のようです。
つまり、ユニバーサルとしてはこれは「外注仕事」。それがそのまま製品のできに関係するとは思いませんが、気になるところではあります。

yositaka

2011/08/22 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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