イゴール・ストラヴィンスキーという作曲家をネコパパが知ったのは中学生のころ。
名指揮者エルネスト・アンセルメが1969年2月に亡くなり、
「最後の録音」としてリハーサル風景のボーナス盤つきで発売されたのが
ストラヴィンスキーのバレエ音楽
『火の鳥』全曲だった。
しかし当時は未知未聴の現代曲を大金はたいて買う財力は無論なく、
ひたすらレコード店で眺めるのみだった。
これを買った友人もいたけれど、
「聴かせてほしい」と言った記憶はない。
やがて高校生となり、亡き友と出会い、彼の自宅で『春の祭典』を耳にして衝撃をうけたことは、以前も書いた。
そのとき、同じブーレーズの指揮、ニューヨーク・フィルの盤で『火の鳥』全曲も聴いたはずだが
これは、あまり印象がない。
ただ一曲終わり近くに登場する
『魔王カスチェイの凶悪な踊り』が、
『春の祭典』を先取りする野性味あふれたリズムの乱舞にみちた音楽だったことを覚えている。
その後、75年のカール・ベーム指揮ウィーン・フィル来日公演でも
短縮版25分の「組曲」が取り上げられ
世の評価は芳しくなかったが、私は、初めてこの曲に大きく惹き付けられた。
のちには
マリス・ヤンソンス指揮するサンクトペテルブルク・フィルのコンサートでも(組曲)聴き
昔あこがれたアンセルメ盤もいつのまにか手元に。
しかしこれは…
数多いこの指揮者の代表盤に入れていいものだろうか。
老指揮者の愛する曲としての思い入れは伝わるものの、やはりこの50分間は長い。
映画を見ているときは素晴らしいと感じても、曲だけ聴くとと物足りない、映画音楽のサントラ盤みたいなのだ。
もちろん、個々の音は瑞々しく、後半になるにつれて密度を増していく愉しさがあるのも確か。
アンセルメ「最後の録音」という歴史的価値はゆるがない。
今後繰り返し聞くうちに、真の魅力を発見できるかもしれないが…
ところで、手塚治虫の未完の大作『火の鳥』は
彼がこの曲の舞台上演を見たときに想を得たと言われている。
富田勲のシンセサイザー盤の『火の鳥』のジャケットイラストには手塚の作品が使われている。
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コメント
SL-Mania
2011/06/17 URL 編集返信デッカは、『火の鳥』以降、アンセルメにスイス・ロマンド以外のオーケストラとの録音を企画し、
次にはウィーン・フィルと録音する予定だったそうです。
デッカへの長年の貢献に対する返礼の意味もあったのでしょう。
でも、
惜しくも彼の死によってその企画はこの1枚で終わってしまいました。
ウィーン・フィルとの演奏、ぜひ聴きたかったと思います。
yositaka
2011/06/17 URL 編集返信SL-Mania
2011/06/17 URL 編集返信