ランパル、ラスキーヌの名盤

モーツァルトの『フルートとハープのための協奏曲ハ長調K299』といえば
典雅にして流麗、
そして、そこはかとない寂しさを漂わせた、これらの楽器のための唯一、といってもいい名曲。

この曲に、長い間「定評の名盤」と呼ばれるものがあった。
ジャン・ピエール・ランパル フルート
リリー・ラスキーヌ ハープ
ジャン・フランソワ・パイヤール指揮パイヤール室内管弦楽団
1963年6月の録音。

同じ顔合わせの旧盤(1958年録音)もあって、こちらは早くから廉価LPとなって、ともに広く聴かれていた。
(オーケストラは「マリー・ルクレール合奏団」だが、実は同一団体である)
中学生の時分、ネコパパが初めて購入したのは旧盤のほうで、今も大切にしているLPだ。

演奏スタイルは、華麗そのもの。
ランパルの明るい音色のフルートもそうだが、
ラスキーヌは一層きらきらとした音色をあふれさせ、
音楽全体が、薔薇色に光り輝くよう。

一番の聴きどころは、三楽章すべてに位置づけられているカデンツァ。
ライネッケ作の絢爛豪華なもので、全体に抑え気味に書かれているハープが、ここでは存分にアルベッジョを聴かせる。

演奏の特色も、カデンツァも、新盤旧盤ともに、ほとんど変わらないのは不思議なことだ。

しかし、やがて
より渋く、内面の踏み込みが深い
トリップ、イエリネック、ミュンヒンガー/ウィーン・フィル盤(デッカ)
飾り気なく芯の強い
シュルツ、サバレタ、ベーム/ウィーン・フィル盤(グラモフォン)などに親しむようになると、
どうもこの「天下の名盤」、装飾的すぎて奥ゆかしさに欠けるような気がしてくるのだった。

それが、先日エソテリックのSACDシリーズの一枚として発売されたので、早速購入。



一聴してみると、非常に落ち着いた音質になっている。
一番の期待は
LPでは「飽和状態」で鮮明さに不足するラスキーヌのハープの音の粒立ちのよさだったが、
それは、思ったほど改善されていない。
ランパルのフルートは「火照り」が抑えられ、音の芯が明確になった。

一方、大きく印象が変わったのは、オーケストラの方。
音に鮮度が増し、立体感が加わったことで、
弦が随所でさざめくような強弱をつけて、
躍動感あふれる伴奏を行っているのが、はじめてわかる。

ライナーノーツには指揮者パイヤールが当時の様子を語っていて、
「はやくしたいランパル」「遅くしたいラスキーヌ」の板挟みになって苦労した裏話を知ることができる。
以心伝心のアンサンブルと思っていたが、
火花を散らせての部分もあったのだな。
この名盤の立役者は、二人のソリストの技量を引き出したパイヤールだったのかもしれない。

「定評の名盤」も、録音後50年近く経てば「歴史的名盤」「ドキュメント」の域になってしまうのかもしれないが、エンジニアの手は、それを再び現役盤に引き戻す。たいしたものだ。

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yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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