カルロス・クライバーの特集番組

先日NHKが指揮者カルロス・クライバーの特集番組を放送。
4時間ずつ二回。華麗な指揮ぶりをたっぷりと楽しむことができた。
コンサート録画はすでに放送されたものばかりだが、ユニテル製作のフィルム収録の二本はデジタル・リマスターが施されていて鮮明な画像に。




 
注目は、最新のドキュメンタリー番組二本。
 

★カルロス・クライバー ~ロスト・トゥー・ワールド~(2011年・ドイツ)
監督:ゲオルク・ヴューボルト
出演:リッカルド・ムーティ、ワルフガング・サバリッシュ、ペーター・ヨナス、オットー・シェンク
★目的地なきシュプール~指揮者カルロス・クライバー~』(2010年・オーストリア)
監督:エリック・シュルツ
出演:プラシド・ドミンゴ、ブリギッテ・ファスベンダー、ヴェロニカ・クライバー、オットー・シェンク

 
出演している面々が、クライバーのエピソードや思い出、演奏の特徴について多様な観点でコメントしている。


演奏場面の映像が注目されるところだが、
使われている映像はどちらの番組もほぼ同じ。
メインは1970年にシュトゥットガルトで収録された『魔弾の射手』序曲と『こうもり』序曲のリハーサル映像。
これは既に発売・放送されているもので、ファンにはおなじみだろう。
しかし
オペラ練習時に収録されたと思われる『トリスタンとイゾルデ』の「愛の死」や
『ばらの騎士』ワルツの、おそらく舞台用モニターの画面は、初めて見るものだ。
画質はよくないが、音声とは良くシンクロしていて、とても貴重だ。(音声が同時録音のものとは限らないが)
オペラでは、コンサート以上に張りきって、いっそう大きな身振りで指揮している様子がわかる。

また、オーストリア版では、スロヴェニアでの晩年のコンサートで「コリオラン序曲」を振っている映像を、背後からのアングルのみだが、見ることができた。

これは客席からの録画だと思う。


二本は類似した内容で、インタビューと映像を通じてカルロス・クライバーの生涯と人となりをたどるというもの。

生前の演奏、解釈、リハーサルなどでの卓越した才能を称賛する一方で、気まぐれな行動ぶりやキャンセル、レパートリーのせまさを批判したり惜しんだりするコメントにも多くの時間が費やされている。

 
印象に残った内容を列挙。

 
生前もよく言われていた父エーリッヒへのコンプレックスはかなり大きかったようだ。
演奏したレパートリーは父の譜面か録音が残されているものに限定されていたという。知人に送った『ばらの騎士』の録音は自分のではなく父のもので「これこそ最高の演奏です」との一筆が書かれていたという。
 
「真の名曲は演奏などすべきではない」
と人に話し、譜面を徹底的に読みこんでいたらしい「ブルックナーの8番」も演奏することはなかった。
父エーリッヒはモーツァルトの「第25番」「プラハ」「フィガロの結婚」、ベートーヴェンの「エロイカ」「第9」も録音を残している。息子が取り上げた曲目は無論名曲ぞろいだが、「より抜きの高峰」には手をつけることがなかった。
 
不鮮明で幽霊のような画像ではあるが、『トリスタンとイゾルデ』が最も印象的な映像だった。演奏箇所は幕切れの「愛の死」。
例の華麗なモーションで盛り上げていくカルロス。
悲劇的な曲想に反して、満面の笑みをたたえての指揮である。
「音楽はあくまで美しく。泣くのは聴衆だけでいい」というリハーサルでの言葉が画面に重なる。
 
彼自身の死は、孤独なものだった。
愛する妻に先立たれ、ひとりスロヴェニアの別荘に車を走らせた。
一人自室に閉じこもり、椅子に座ったまま最後の時を迎えたのである。
2004年7月13日。
もう、そんなに時が経ってしまったのか。
 
 
4本放送されたコンサート録画では、一番古い記録である1986年の来日公演に心ひかれた。
この指揮者の存在感が一気に高まったのは、この時の番組を見てから。
踊るような優雅な指揮法が見事に決まる。

張りのみなぎった、活力と勢いのあるベートーヴェンの第4と第7、そしてヨハン・シュトラウス『こうもり』序曲と『雷鳴と電光』。


昭和女子大学人見記念講堂での録画で、当時から画質・音質ともNHKとしては冴えないと思っていたが、ひさびさに見直してやはり心が躍った。
これこそクライバー全盛期の記録である。
他では、1992年ウィーン・フィルとのブラームスの交響曲第2番が、細部まで新しい意味を感じさせる演奏。
そして、何度聞いてもため息が出るような、1991年のニューイヤー・コンサートでのヨゼフ・シュトラウスのワルツ『天体の音楽』の浮遊感。


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yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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