生きる知恵はどこに

東日本大震災、地震津波で被災された方々への支援は、遅々たる歩みながら進んでいるが、福島第一原発事故による被害拡大は収束の見通しもない。
 
地震後間もない3月15日付朝日新聞に、二つの記事が並んで掲載されていた。
 
ひとつは『通園バス 重なる遺体』
宮城県石巻市の被害状況を報じた記事である。
抜粋して引用する。人名は伏せて。
 
 
 変わり果てた小さな姿を瓦礫の間で見つけ、母親たちが悲痛な声を上げた。地震と津波、火災に見舞われた宮城県石巻市中心部。ようやく近づけるようになった14日、避難していた住民の多くが安否のわからない家族を探すために街へ入った。
 Sさんは、長女Aちゃん(6)の着ていた服を、黒焦げの幼稚園バスの中で見つけ、泣き叫んだ。Aちゃんは、11日の地震直後、園バスで帰宅途中に行方がわからなくなっていた。Sさんは、14日午前、家族と共に捜しに向かった。同じ園バスに乗っていたはずのKちゃんの一家も一緒になった。
 余震の中でも、2人の家族は捜索をやめなかった。2時間後、バスを捜し出した。押しつぶされ、黄色かった車体は焼け焦げていた。園児4人と、付き添いの職員一人の遺体が車内にあった。
 子供たちは抱き合っているように見えた。「みんなで一緒にいたんだね。怖かったね。熱かったね。」Sさんは遺体を何度もさすって語りかけた。
 二人の通っていた幼稚園は丘の中腹にあり、地震や津波の大きな被害を免れた。
 だが、園バスは地震のあと、丘を下りた。園長は家族らに「母親の元へ戻すことを優先した」と話したという。運転手は助けを求めて園に戻った後、行方がわからなくなっているという。
 AちゃんとKちゃんは15日が卒園式だった。教室には絵が得意だったAちゃんの描いた似顔絵が飾られている。父親のFさんはAちゃんの赤白帽子を持ち帰ったが、似顔絵は教室に残した。「みんなでいっしょに卒業するんだもんな」(西尾邦明)
 
 
園長の指示は適切だったか。
また、周囲の大人、付き添いの職員や運転手は、園児たちを乗せたバスを海岸に向かって走らせることに疑念を抱くことはなかったのか。
まず家に戻す、は暴風雨警報の際の対応。
地震の場合は明らかに間違いだろう。
その点に言及少なく、事態の「悲痛さ」のみ強調する記者の論調にも違和感を感じる。
瞬間、瞬間に迫られる判断に、行動に、人の「生きる知恵」が問われている。
 
 
その右隣に、もうひとつの記事があった。これは全文を引用しよう。
 
石原知事「日本人への天罰」
 石原慎太郎・東京都知事は14日、東日本大震災に関して「日本人のアイデンティティーは我欲。この津波をうまく利用して我欲を一回洗い落とす必要がある。やっぱり天罰だと思う」と述べた。都内で報道陣に、大震災への国民の対応について感想を問われて答えた。
 発言の中で石原知事は「アメリカのアイデンティティーは自由。フランスは自由と博愛と平等。日本はそんなものはない。我欲だよ。物欲。金銭欲」と指摘した上で、「我欲に縛られて維持もポピュリズムでやっている。それを(津波で)一気に押し流す必要がある。積年たまった日本人の心のあかを」と話した。一方で「被災者の方々はかわいそうですよ」とも述べた。
 知事は同日夜の記者会見で「天罰との発言を撤回するか」と問われ「そうじゃない」と否定。「日本人の我欲が政治を左右している。こういうものを打破しないと日本は立ち上がって来ない、ということで申し上げた」と説明した。知事は最近、日本人の「我欲」が横行しているとの批判を繰り返している。
 
 
惨事以来、すでに一月。被災者たちは黙々と耐え、一方で可能な限りの支援を差し伸べようとする多くの人々の存在がある。
原発事故の収束に向けて毎日身を危険にさらしながら働く人々がいる。
 
ところがその一方で
震災三日後にこのようなコメントを出す人物をを知事の座に押し上げ続け、またもの立候補を応援する一群がある。
「我欲」はどちらか。
 
 
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yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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