パーカーの壮絶

えっ、これが一枚999円?
名古屋駅前の塔音盤店で目にして、衝動買いしてしまった。
 
 
もう何十年前になるのか…
これは、大学時代、sige君の下宿でソニーのオープンデッキTC263Dで初めて聴かせてもらった、懐かしい音源のひとつ。
名盤として名高い録音、ということはジャズに疎い私でも知っていた。
別テイクも含め、一曲残らず収録した高価なLPボックスセットが発売されていて、それが良く売れているということも。
 
しかし、テープが回り始め
スクラッチノイズのなかから音が聞こえてくると、それは、鬼気迫る異様なものだった。
ガチャガチャしてメロディーもつかみにくく、メンバーは皆慌てて演奏しているようで
あっという間に一曲終わってしまう。
「壮絶」な音楽なのだという。
 
 
チャーリー・パーカー・ストーリー・オン・ダイアル Vol.1
(as)チャーリー・パーカー、(tp)ディジー・ガレスピー、マイルス・デイヴィス (ts)ワーデル・グレイ 他
 

1. ディギン・ディズ
2. ムース・ザ・ムーチェ
3. ヤードバード組曲
4. オーニソロジー
5. ザ・フェイマス・アルト・ブレイク
6. チュニジアの夜
7. マックス・メイキング・ワックス
8. ラヴァー・マン
9. ザ・ジプシー
10. ビバップ
11. ジス・イズ・オールウェイズ
12. ダーク・シャドウズ
13. バーズ・ネスト
14. ホット・ブルース(クール・ブルース)
15. クール・ブルース(ホット・ブルース)
16. リラクシン・アット・カマリロ
17. チアーズ
18. カーヴィン・ザ・バード
19. ステューペンダス
 
若きマイルス・デイヴィスを従えた1946年の吹き込みから、朦朧とした意識のなかでプレイされた、有名な“ラヴァー・マン”セッション。半年の入院をはさんで、見事なカムバックをとげた47年2月の録音まで、この時代のパーカーの西海岸での足跡を忠実にたどる。(録音:1946~1947)
 
 
 
チャーリー・パーカー・ストーリー・オン・ダイアル Vol.2
(as)チャーリー・パーカー (tp)マイルス・デイヴィス (tb)J.J.ジョンソン (p)デューク・ジョーダン
 

1. デクスタリティ
2. ボンゴ・バップ
3. プレゾロジー(デューイ・スクエア)
4. スーパーマン(ザ・ヒム)
5. バード・オブ・パラダイス
6. エンブレイサブル・ユー
7. バード・フェザーズ
8. クラクト・オヴィーセッズ・テーン
9. スクラップル・フロム・ジ・アップル
10. マイ・オールド・フレーム
11. アウト・オブ・ノーホエア
12. ドント・ブレイム・ミー
13. ドリフティング・オン・ア・リード
14. カジマド
15. チャーリーズ・ウィグ
16. ボンゴ・ビープ
17. クレイジオロジー
18. ハウ・ディープ・イズ・ジ・オーシャン

 
1947年4月、西海岸からニューヨークへもどっておこなわれたセッションの数々。パーカーのサックスはもとより、バンドとしてのまとまりも感じさせる。「エンブレイサブル・ユー」「マイ・オールド・フレーム」をはじめとするバラード・ナンバーも名演。(録音:1947)
 
■EMI  CD
■TOCJ50015~6
■2010年9月発売
 
 
 
「これがジャズの歴史的名演というものなのか。やってられないな。」
黙ってそれを聴きながら
内心、思ったものだ。
 
sige君は、ジャズマンのエピソードや録音事情にも博識だった。
クラシックファンの私に、興味深いジャズの話を教えてくれたのだ。
この中の一曲
1946年録音の「ラヴァー・マン」についても。
彼は言った。
 
―これは、パーカーが心身ともによれよれの酩酊状態になっている中で録音されたものだ。
レコード会社は金儲けのために、無理やりのように彼をスタジオに押し込んで収録した。
 
必死で演奏したものの、録音後まもなく半ば廃人同様で病院に収容されたのだ…
 
この演奏では、魅惑の名曲が、旋律を分断させた、異様な姿に変容して迫ってくる。
死の香りのする音楽。
ますます「やってられないな」と思う、若きネコパパなのだった。
 
 
今、あらためて聴き直してみる。
すると、そんな昔の印象が、すっかり変わってしまっていることに気づく。
チャーリー・パーカーの音楽は
なんと伸びやかで、自由な音楽なんだろう、と思うばかりなのだ。
生命の躍動
せつなさ
痛み
憧れ
なにもかもが、一本のサックスから、鳥のように自在に、多彩な音色であふれ出す。
あっという間に2枚を聴き終えてしまった。
すごいことが当たり前のようにさりげなく(聞き手に感じられるように)出来てしまう。
「壮絶」とはそのことを指す言葉だったのだ…
 
何度も繰り返し聞いてみたい。
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コメント

コメント(4)
No title
今日は、sigeです。あのオープンテープの音(「ラヴァーマン」)は、たしか東京FM、「アスペクトインジャズ」のブロードキャスティングチェック音でしたね。切れ切れのテーマの中から、振り絞るようにパーカーがアドリブをする。最初聞いたときは「痛々しさ」に耳を覆いたくなるようでした。何年もたって聞き直すと、その音の中から「祈りというかあこがれというか」そんな直截な思いが伝わってきて、絶好調の1947年録音ものとはまた違った趣を伝えてくれます。

toy**ero

2010/12/23 URL 編集返信

No title
(つづき)高1の時、友人からテイチク盤『バードシンボル』という、擬似ステ、エコーたっぷりの音で処理された、この「ダイヤル盤」の幾つかの音源を聞き、ぶっとびました。上手な演奏とか超絶技巧とか関係なく、訴えたい心と、それを最大限に実現化する語法。そりゃ時代的に「スィングジャズ」から大きく逸脱した「バップジャズ」の語法の完成と言えばそうなんですが、君の言う「のびやか、生命の躍動、あこがれ、せつなさ」が、ないまぜとなって超高速で語られるんです。そのスピードにも驚かされます。(「チュニジアの夜」のブリッジ演奏だけを残した「ザ・フェイマス・アルト・ブレイク」)。

toy**ero

2010/12/23 URL 編集返信

No title
(つづき)しかし、「エンブレイサブル・ユー」のバラード演奏を聞くと、君の言う「なんと伸びやかで、自由な音楽なんだろう、と思うばかりなのだ。生命の躍動、せつなさ、痛み、憧れ、なにもかもが、一本のサックスから、鳥のように自在に、多彩な音色であふれ出」し、しかも、心いっぱい満足できるバラードに仕上がっている。二度と誰もなしえない音楽が、心をつかんで離さない。のち、ヴァーヴその他のレコード会社に落ち着いた完成品を残しているけれど、「個人の心の跳躍」をこれほど見事に捉えた「ダイヤル音源」はない。一人のパーカー好きの男、ロス・ラッセルによって、ある時代のある小さな出来事を、全世界の人々を永遠に掴んでやまない音源として残したことは、甚大なことといえましょう。

toy**ero

2010/12/23 URL 編集返信

No title
そう、ロス・ラッセル。酩酊状態のパーカーに無理やり録音させた悪徳音盤屋と思いきや、実はパーカーに心酔、彼がニューヨークに戻ると、会社ごとニューヨークに移ってきて録音を継続したのですね。

二枚目のニューヨーク編は、録音も一段と良くなっていますね。
演奏はさらに自信にあふれていて、みずみずしい。若きマイルスが、すでに「夕暮れのトランペット」を鳴らし始めている!…という具合で、パーカー食わず嫌いの人は、まず二枚目を聞いてみるというのもいいのでは。

それにしてもsige君、「あのころ」の記憶が近頃、妙に鮮明によみがえるのは…なぜでしょうねえ。

yositaka

2010/12/24 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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