マイルス・デイヴィスの交響曲

ライヴ・アット・モンタレー・ジャズ・フェスティヴァル1963/マイルス・デイヴィス
Miles Davis(Tp)
George Coleman(Ts)
Herbie Hancock(P)
Ron Carter(B)
Tony Williams(Ds)
Recorded September 20, 1963.
 

 
 
1 ウェイティング・フォー・マイルス
2
枯葉
3
ソー・ホワット
4
星影のステラ
5
ウォーキン
6
ザ・テーマ
 
■ユニバーサル・ミュージック
UCCO 1008
■発売年2007
 
トラック1は、開演前のチューニング、6はエンディング・テーマ。なので、演奏の「本編」はトラック2から5ということになる。
選曲と配列が抜群だ。
基本テンポは速めだが、堂々とした風格と深遠が感じられる『枯葉』
疾風のテンポで白熱の演奏を聴かせる『ソー・ホワット』
一転して張りつめた静寂が支配する長大な『ステラ・バイ・スターライト』
そして、抑えたエネルギーが一気に解放され、圧倒的な盛り上がりがやってくる『ウォーキン』
まさに四楽章の交響曲を思わせる五十数分間。この完成度の高い音楽が、アドリブ主体に作り上げられているとは、なんとすごいことだろう。
 
トニー・ウィリアムズの鮮烈なリズムに乗って、自らのファンタジーの赴くままに、長い長いソロを繰り広げるマイルスが、本アルバムの最大の聴きものだ。
冒頭の『枯葉』、出だしからひねりが加わっていて、原曲の跡もとどめない。『サムシン・エルス』に含まれた有名な演奏とは大違いだ。でも、これもまた、マイルスだけにしか演奏できない、哀感の『枯葉』であることに変わりはない。演奏されるたびにますます加速する『ソー・ホワット』とともに、トニーのドラムスがマイルスにすごいドライブ感を供給している。
ベースのロン・カーターも、冷静にリズムをキープするようでいて、ときに斬新な、激しいソロを展開する。彼の活躍する『ステラ』はこのアルバムの最高の一曲。
テナーのジョージ・コールマンも、地味ではあるが、全体を通して落ち着き払った音楽の骨格をますます強いものにする存在感を示す。このネクラで生真面目なテナー、決して悪くない。
 
会場の響きを適度に取り入れた、雰囲気のある録音もいい。
まるでクラシックを聴くような自然な音づくり。モンタレーの放送録音スタッフは優秀だ。
このコンサートの直後、マイルスのグループは同じメンバーで『フォア・アンド・モア』『マイ・ファニー・ヴァレンタイン』という名アルバム2枚を、ニューヨークのリンカーン・センターで、ライヴ録音する。
速い曲ばかりの前者、遅い曲ばかりの後者という構成は、プロデューサーのテオ・マセロの発案だろう。
確かにこれも面白いし、演奏の方向性もほぼ同じで、充実の極み。けれども、マイルスが本当に望んでいたのは、本アルバムのような「交響曲形式」の配列ではなかっただろうか。
 
これは夏の聴き会で、bassclef君に教えていただいた音源。入手困難の予感がしたが、なんとか手に入って、大喜びである。
未聴の方は、在庫がなくならないうちに、ぜひ。
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コメント

コメント(2)
No title
やあ、yositaka君。このマイルスのCD入手、よかったですね。
>四楽章の交響曲を思わせる五十数分間~
なるほど・・・そんな風にも受け取れますね。実際、マイルスは曲の並びに緩急・強弱を付けて聴き手を飽きさせないように工夫したんでしょう。マイルスという人・・・そういう構成力はすごいですね。そうした観点から見ると、たしかに『フォア・アンド・モア』『マイ・ファニー・ヴァレンタイン』は、あの2枚揃えての緩急ということだったのかもしれません。
録音は本当に優秀で、この「モンタレー」シリーズは全て、Wally Heider氏(西海岸の名エンジニア)ということで、その辺りも含めてのアルバム1枚の魅力としては、このCD、本当に抜群だと思います。この頃のロン・カーターの凄さが改めて「判る」ベース音です。

bassclef

2010/09/27 URL 編集返信

No title
傑作です。なぜ今まで世に出なかったのか、不思議なくらい。
1960年代初頭、ライヴ録音を出し続けた時期のマイルスは、ソロが凄い。先日もsige君と『イン・トーキョー』を聴いたのですが、濃密そのものの演奏でした。
まだ見えぬ未来を模索するメンバーと、閃光のような演奏で突き進むマイルスが、緊張を孕んで対比されている感触がありますよね。
でもbassclef君、このジャケットってイマイチじゃない?他にも似たのがあるから、もしかしてマイルスお得意ポーズだったのかもしれませんが…

yositaka

2010/09/28 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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